第五十三話 F‐フリューゲル‐・ブラッドライン
今回は生産回になります。遂に可変型のブラッドラインが……!?
それでは本作品をお楽しみください。
スキルを取得したことで謎の声を聞いた私は、黄昏の戦乙女の格納庫へと戻っていた。
しかし、なんだったんだろうねあの声は。会話のログを確認すると、ご丁寧にノイズの部分がカットされたログが残されていた。
スキルを取った私とダリベさんが聞こえたってことは、もしかしたら他のみんなにも聞こえてるかも?
そう思った私は同じく《黄昏の戦乙女》のスキルを取ったプレイヤーに聞いてみたけど、聞こえた人と聞こえなかった人がいるみたいだね。
『私は聞こえましたね』
「俺は取ったが、そんな声は聞こえなかったなぁ」
『わたしもきこえた』
『おう。私も聞こえたぜ?』
「私は聞こえなかったが……ふむ。つまり、これはスキル取得者が魔機人かそうでないかの違いということになるのかな?」
『なるほど。そういう事か』
魔機人だけに聞こえた謎の声。そしてその声が言うには、私たちがなにかを取り戻せばなにかの可能性を手に入れると。
うーん、全然分からん。とりあえず今は放置でもよさそうだね。
『ひとまずこの話は置いとこうか。と言うわけで、これにて暁闇の戦乙女復活ミッション、終了です!』
格納庫に集まったみんなにそのことを告げると、全員から歓声が上がる。新しい戦艦も見れたし、戦乙女が並んでる姿もスクショに収められたし、予想外のスキルも手に入れられた。【黒の機士団】の人たちとも仲良くなれたし、万々歳の結果だね。
その後はダリベさんとフレンド通信で話し合い、そのまま解散ということになった。暁闇の戦乙女をどこに停めておくのか聞いたところ、第二の浮遊大陸の港町に停めておくという。暫くはそこで新人たちを鍛えながら素材を集めていくみたいだ。
さて、私はどうしようか。素材も補充できたから色々と作りたいものはあるんだけど、ゴールデンマウンテンで属性鉱石素材を集めるのも悪くない。今回主に集めたのは魔鉄鉱石で、属性鉱石は二の次だったからね。
色々と悩んでいると、マノンタクトの姉弟が首を傾げる。
『どうしたんですか、ギルマス?』
『ん、ちょっとね。やりたいことはいっぱいあるけど、どれから手をつけようかなって』
『これからの予定は決まってないんスか?』
『まあね。みんなはみんなでやりたいことがあるだろうし、私は私でやりたいことがあるからね』
『私は黄昏の戦乙女で色々とパーツを考えようかなって思ってます。それなら、黄昏の戦乙女がどっちにいても関係ないかなって』
『そこなんだよねー』
私が悩んでるのは、始まりの浮遊大陸と第二の浮遊大陸に別々に行きたい人がいる時に、黄昏の戦乙女をどうすればいいのかっていうことなんだよね。
一々行ったり来たりするのは面倒だし時間もかかるから、できれば転移門や転移ポータル的なものがあれば便利なんだけど。
『大将、そういう事なら第二の浮遊大陸に新しくギルドホームを持てばいいんじゃねぇか?』
『ああなるほど。その手があったね……って、レンってそんなキャラだったっけ?』
『いいじゃねえか大将。お、やっぱ大将呼びはしっくりくるな。ま、ギルドホームを買う金があるのかは知らねぇけど』
『基本的にこのギルドのみんなは自給自足してるからなぁ……共有財産がどれくらいあったかな』
ギルドメニューで確認してみると、中規模のギルドホームなら買えるくらいの金額が貯まっていた。どうやらヴィーンや親方、あとは商人ロールプレイをしている何人かがお金を貯めてくれていたようだ。お金に疎いギルドマスターでごめんよ……。
中規模のギルドホームなら五百人くらい入れたはずだから、拠点にするにも問題はなさそうだね。使っても大丈夫かヴィーンたちに聞いてからだけど。
『あ、でも確かホーム用の転移ポータルもそこそこの値段がした気がするんだよな』
『えっと、ハウジングメニューハウジングメニュー……あった。うわっ、結構するね……』
『一方通行じゃないだけマシだと考えるしかねぇな。でもこの金額だとギルドの共有財産だとちょっと足りねぇか?』
『うーん、私が暇つぶしで作った武装たちでも売りに出してみようか?』
なんの気兼ねなしに言ったその一言に、レンが食いついた。
『大将、あれだけのものを作ってるのに暇つぶしでもなにか作ってたのか?』
『あ、うん。いくつかね。暇つぶしで作ったやつの大半は、作ったはいいけど別に使うまでもないなぁっていう武装ばっかりだから』
『ちなみにどんなの?』
『えっと、例に挙げるなら、トリガーを引くと炎を纏う鉄剣だったり、トリガーを引くと数十秒飛行できるジェットだったり……』
『あー、確かに使うまでもねぇな……炎鉄剣は使い道がまだあるけど、ジェットはなぁ……』
『ただその代わり耐久がちょっと低いんだけどね。これらのいいところは、魔機人以外でも使えるようになってるところかな。だから、売りに出すにはもってこいなんじゃないかと』
『そうだなぁ。あ、大将。さっき言ってた商人ロールプレイしてるやつのところで売ってもらえばいいんじゃね?』
『名案! それでいこうか』
というわけで言い出しっぺのレンを連れてそのプレイヤーの元へ。どうやら親方と話し合いの最中のようだ。
彼に話があることを告げて、近くで話が終わるのを待つ。
しばらくして話の終わった親方と商人ロールプレイヤー……ヤスウリさんがやって来た。
「どしたんギルマス。僕に用があるんだって?」
『そうそう。ヤスウリさんに今から渡すアイテムを露店で売ってほしいんだよね』
「そりゃまた急にどうしたんだ?」
親方が聞いてきたので、ことのあらましを二人に話す。私の話を聞いた二人はなるほどと頷いていた。
『と言うわけで、この試作品たちをいい金額で売ってほしいんだ』
「んじゃ、まずはどんなものがあるか確認させて貰いますよっと……ふむふむ」
そのまま商品になる予定のアイテムの品定めをするヤスウリさん。商人ロールプレイヤーは伊達ではなく、すぐに品定めは終わった。
「うん、これなら売っても問題ないだろうし、結構な金額になると思うよ」
『ホント? よかったー』
「あ、でも売る時に、ギルド【自由の機翼】のギルドマスターであるミオンのお手製だってことを大々的に喧伝してもいいかな?」
『私は構わないけど、どうして?』
「ギルマスはそういうのに疎いかもしれないけど、フリファン内じゃギルマスは結構な有名人だからね。そんな有名人が自ら作り上げたアイテム、しかも試作品となれば、買わない人の方が少ないと思うけど」
『そんなもんかな?』
「そんなもんだよ」
まぁ、私の名前を出すことでよりアイテムが売れるってことなら、いいんじゃないかな?
でも私って他の有名ギルドの人たちより目立って……目立って、るね。うん。結構やらかしてる自信はある。
よし、これで転移ポータルを買うお金は大丈夫だとして。
あとはヴィーンに説明するだけかな。ギルドマスターとはいえ勝手に使っちゃうのはちょっとね。話は通しておかないと。
『そんなわけで、このアイテムたちの売却は任せたよ!』
「任されました! 僕の商人としての腕にかけて、より多くのお金を稼いでみせましょう!」
おお、なんか気合入ってるね。
「こいつはミオンに頼られたことが嬉しいんだよ。このギルドにいる連中はお前さんのことが好きなやつばっかだからな」
『それは……ありがたいような、恥ずかしいような』
『なに言ってんだ大将! あたしたちがこうやって楽しくゲームを遊べてるのは大将のおかげなんだから、もっと胸を張れよ』
『えへへ……』
真正面から言われると照れるなぁ……私としては、色んなロボットが見れてるからそれだけでお釣りがきてるんだけど。でもそれを言うと、そんなん釣りにもならねぇよとか言われそうだから黙ってよう。
こほん、と咳払いをした私は改めてヴィーンとフレンド通信を繋げる。
共有財産をギルドホームのために使いたいという話をしたら二つ返事でOKされた。むしろドンドン使って欲しいとの事。
というわけでギルドホーム購入に関する障害は全てなくなったので、私は一緒に第二の浮遊大陸に行きたいというプレイヤーをまとめて暁闇の戦乙女にお邪魔することになった。
まぁ、これから第二の浮遊大陸に行くんだったらちょうどいいよねってことで。
第二の浮遊大陸まで運んでもらった私たちは【黒の機士団】のみんなと別れ、西の港町ホワイトハーバーの物件購入メニューを開いていた。家を買うのもメニューからできるのって便利だよね。
港にほど近い場所の中規模ギルドホームを購入し、第二の浮遊大陸で活動するギルドメンバーの拠点とした。転移ポータルの購入までは時間がかかるだろうから、暫くはここで生産活動をしようかな。
中規模以上のギルドホームは購入時に内装の仕様を変更できるらしく、私はガレージを複数展開できる広間のようなものを中に作った。その分部屋数とかは減っちゃってるけど、元々が五百人くらいを想定してるギルドホームだからそんなに関係ないね。
確保した広いスペースに各々が自分のガレージを展開していく。もちろん私もギルドホームの一角に自分のガレージをセット。ガレージ自体が簡易ホーム扱いだから、アイテム倉庫の役割も果たすのが大きいね。一々町にあるアイテム倉庫に行かなくていいって言うのは、かかる時間的にもありがたい。
さて、可変機構ブラッドラインを作ろうと思うけど、新しく全部のパーツを作るとして、武装はどうしようかな。今のを使い回すこともできなくはないけど、変形するって考えるとディ・アムダトリアは動きの邪魔になりそうだね。今のブラッドライン用の武装になるかな。
ま、武装よりもまずは本体の作製に入りますか。新しく可変機構を搭載したフレームパーツを作っていこう。
ダリベさんのダークリベリオンを参考にしつつ、自分なりの機体を作っていかないとね。
問題はどういうギミックにするかだけど、機動力を確保しつつ攻撃の手段を残しておきたいかな。
そうなると、ライフルを手に持ったまま変形するか、手に持たなくてもライフルを撃てるように工夫する必要があるかな。前者なら専用のライフルを作らないとだし、後者なら新しくシールドも作らないといけないね。
どっちのスタイルにするか……よし、前者のスタイルでいこう。どうせならライフルは両手持ちで連射と単発を撃ち分けられる感じで。
っと、まずはフレームからだよね。ライフルはあとあと!
胴体フレームは、変形時に頭部パーツがハマるくらいにしておこうかな。あとは魔力結晶炉の場所も作っておかないとね。
頭部パーツは今のをそのまま流用するとして、次は腰部フレームかな。フロントアーマーの部分が変形時の機首になる予定だから、フレームで弄るとしたら股関節の部分だね。可動域を最大まで増やしておこう。
次は腕部フレームの作製だ。変形時にはライフルを持つ腕を固定するために、肘から手前を肘から先に格納できるようにしようか。肘から先を空洞にしておけばそのまま格納できるね。
その分耐久値は減っちゃうけど……そもそも可変機は攻撃を避けるのが前提みたいなところはあるし、問題はないか。あ、あとはサーベルの収納も作っておこう。
次は脚部フレームかな。さて、変形する際にどんな感じで変形させよう?
んー、変形時は腰部フロントを機首にして、腕部が少し短くなるから……両足でWの字を描くようにすればいいかな。肉付けをする時に脚部にスラスターを多めに付ければ大丈夫でしょう。
まずはフレーム作製が完了。素材は魔鉄インゴットとAインゴットの合金で、強度をより高めた比率のものを使用した。
装甲に関しては今までの作り方で問題ないかな。魔力を素材に何度も馴染ませてからのミルフィーユ式魔力装甲だ。
変形する都合上現在のブラッドラインと若干デザインが違っちゃうけど、そこは仕方ないね。大した時間もかからずに胴体、腰部、腕部のパーツを組み立て終わった。サーベルは予備をそのまま腕部の収納へ格納済みだ。
さて、最後に脚部と背部パーツかな。とりあえず脚部から作っていこう。
スラスターを取り付けるためのジョイントを多めに作って、装甲を組み上げていく。スラスターには豪華に八九式魔導石を使っちゃおう。これで出力も魔力量もかなりのものになるはず。
あと腰部と胴部パーツは変形時に回転するギミックを入れた。180°回転して背中側が上になる形だね。
背部パーツは、魔鉄インゴットとAインゴット、さらに重力鉱石をインゴットにして合金化させようかな。こうすればわざわざ重力鉱石を入れて浮かせる必要もないしね。
あとは翼の付け根を可動可能にして、変形時に動かせるようにした。
翼の部分はどうしようかな……メインの翼に可動させられるサブの翼をくっ付けた形で行こうかな。そこに砲塔でも積んで攻撃可能にもしてみようか。
というわけで早速、上記の合金で作製。もちろん魔力結晶炉を積める空間を残している。
取り付ける砲塔はマギユナイト・ライフルを参考に、チャージせずに一撃の威力を高める方向で作った。この砲塔は変形時だけでなく、通常時も撃てるように可動域を工夫している。
あとは両手に一丁ずつ持てる連射と単発を撃ち分けられるライフルを作っていこう。切り替えはいつものENを流しての切り替え式で。
仕様上、マガジンによる補充ができないのがネックかな。ま、《魔力自動吸収》はついてるし、いざとなったら新しく習得した【即時換装】で今のブラッドラインシリーズと換装するだけだね。
と言うわけで、完成したF・ブラッドラインシリーズを装備する。んー、動かしてる感じ、違和感はないね。
これで私のブラッドラインは、ブラッドライン、ブラッドライン・X、ブラッドライン・Cに続いて四つ目だね。アニメで言えばそろそろ後継機乗り換えイベントが起きてもおかしくない。
この場で【即時換装】を試して見たけどやっぱりCウィングの出力が落ちていたので、魔力結晶炉がセット毎に移動してくれるとかそういう都合のいいことは起きないようだ。
Cウィングには八九式魔導石を使って、少しでも出力が上がるようにしておこう。これでC形態はそんなに長くは使えなくなったね。
装備をFブラッドラインに戻して、早速試験飛行といきますかね! どれだけの速度が出るのか、どれだけ飛んでいられるのか楽しみだ。
スキップしながらガレージを出た私は、そのままギルドホームの外へと向かった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




