第五十一話 第二陣 5
まだまだ続く第二陣編。第二陣の要素が薄いのはご愛嬌。
それでは本作品をお楽しみください。
暁闇の戦乙女の修復作業は順調に進んでいる。
艦体の洗浄作業が終わったら航行に問題のありそうな装甲を修理して、空っぽの魔力結晶炉に魔力を込めれば動く……と思う。
黄昏の戦乙女の姉妹艦って言うならそれで動くはずだ。自信はないけど。
そもそも艦の大きさが大きさだから、装甲の修理作業が大変っていうのはあるんだけどね。
泥の汚れを残さないように細部までピカピカになるくらいまで洗浄した私たちは、早速壊れている装甲の修復作業に入る。入ろうと、した。
私たちはすっかり忘れていたのだ。暁闇の戦乙女を引き上げるためにありったけの鉱石素材を使ったことを!
『あー! 魔鉄鉱石が足りないー!』
「ワイヤーとアンカーでほとんど使い切っちまったか……」
『ふむ。ならば、それらを溶かして作り直すか?』
「それでも足りねぇな。ワイヤーやアンカーを作る前ならいざ知らず、完成品を溶かして素材を取ろうとすると、作る前よりも少なくなっちまうんだ。だから、どっちにしても取りに行くしかねぇな」
『魔鉄鉱石なら、ゴールデンマウンテンかな』
「そこがいいだろうな。幸い黄昏の戦乙女は使えるし、暁闇の戦乙女を見ておくメンツを残して行くのが妥当か」
『ふむ。であるなら我らも共に行こう。それに、新人の《採掘》スキルを伸ばすにはいい機会だろう』
「それもそうか。じゃあ新人は強制参加だな。こっちで集めておく。ミオンはヴィーンに森の入口で待機するように言っておいてくれ」
『はいはーい。こうなったらしばらく採掘の必要がないくらいに掘るぞー! あ、でも第二陣の護衛はしっかりとね。私たちなら問題ないけど、一応あのダンジョンは最前線だから』
「分かってるって。じゃ、行動開始だ!」
親方はそう言うとダリベさんを連れてみんなが作業しているところへ戻っていった。さて、私も自分のやることをしますかね。
フレンドチャットでヴィーンに連絡して、ことのあらましを伝える。ま、素材が足りないから取りに行くよって話だね。
早速、最奥の上空から移動を始める黄昏の戦乙女。元々黄昏の戦乙女が着陸してた場所に暁闇の戦乙女を置いてるから、みんなを連れて行くとなると広い場所に降りてもらわないといけない。
その後準備を整えた親方たちと共に、ちょうどいいからと第二陣の戦闘スキル上げをしながら森を抜けていく。上層のモンスターは敵じゃないけど、下層と中層のモンスターは今の装備でも下手したら死に戻りになるからね。
ちょちょいと鍛えつつ、森の外へと出る。他のプレイヤーや現地人(NPC)の邪魔にならないように街道から逸れて着陸している黄昏の戦乙女に乗り込み、いざ行かん第二の浮遊大陸へ!
『おぉ……』
『何度見てもいい景色ですね……』
『本当ですわ……!』
黄昏の戦乙女から眺める景色は何度見ても絶景で、第二陣のみんなは様々な反応をしてくれる。私たちも魅入っちゃうくらいだもん。
やっぱり浮遊大陸っていうのが幻想的だよね。綺麗な景色すぎて、VRゲームだってことを忘れちゃいそう。
ま、景色を眺めるのもいいけど、スキル上げもしっかりとね。第二の浮遊大陸まではまだまだ時間がかかるし。
親方たちに第二陣の面倒を見てもらいつつ、私は新しく考えてるブラッドラインのパーツ製作の続きだ。
私の作り方だと可変機構を積むのが大変だけど、できないわけじゃない。フレームパームをいじれば、可変機構を組み込むことも可能なはず。それが難しいんだけどね。
今は素材が足りないから構想だけで済ませる。多分この通りに作ればいけると思うんだけど……こればっかりは実際に作ってみないとね。
その後は親方たちと一緒にスキルについて指導をしたり、私たちの武器をPvPを通して教えていったり。
マノンは私のディ・アムダトリアに興味を持ったみたいで、将来的には様々な機能を有した総合兵器を作ってみたいという。私自身楽しみなので、色々な装備の作り方を教えたりした。
タクトは、クラリスの強襲戦闘用左腕破撃爪を気に入ったみたいだ。ロマン溢れる兵器を作りたいらしい。目指すはスーパーロボットだと言う。うんうん、それもまたロマンだよね。
ミラさんは私のCウィングに興味があるみたいだ。機士たる者、優雅に地を駆けねばなりませんわ……とは彼女の談。Cウィングの変形と、ダリベさんの可変機構を合わせて空と地上を駆けたいようだ。難しいほど燃えるらしい。うんうん、分かるよ、その気持ち!
『しんじんたち、なかなか』
『こりゃ、うかうかしてるとすぐに追い抜かれちまうかもな、アイ?』
『だいじょうぶ。わたしよりもレンのほうがしんぱい』
『おいおい。あたしはアイに心配されるほど弱くはないよ。ないつもりだ。あれ、ないよな?』
『……こんど、ぴーぶいぴーでどっちがうえかわからせる』
『いいぜ、受けて立つよ。あたしの剣であんたの拳を打ち破ってやるからな』
『ん。でもとりあえずいまは、さぎょうにもどる』
『そうだな。あたしも相棒に色々と仕込むとしますかね』
アイとレンも頑張ってる第二陣を見て、触発されたみたいだ。それはそうとレンの大剣がどんな風になるのかは気になるね。少しでも私の武装の参考にしたい。
ふっふっふ。私だってまだまだ満足してないからね。今使ってるのよりも強力で、使いやすい武装を作っていかないと。ま、目下の目標は可変機構搭載型のブラッドラインなわけだけども。
ログアウト休憩を挟んで、私たちは第二の浮遊大陸の西の港町ホワイトハーバーに着艦する。リアルの用事でログアウトしなきゃいけないメンバーを除いた残りのメンバーで、ゴールデンマウンテンを目指す。
道中のモンスターは第二陣にとっては強力だけど、私たちからすれば素材の旨みが少ない雑魚モンスター。ちょちょいと除去って先を急ぐ。
いやね。この浮遊大陸のモンスターって基本が鳥系なんですよ。ゴールデンマウンテンや自由工場のダンジョンはゴーレムなんかの機械系モンスターなんだけどね。
私たちは食事もしなければ鳥の羽根も使わないから……うん、素材としての旨みが全然ないんだよね。鳥の羽根はヴィーンが使うけど、共有倉庫に腐るほどあるんだよねー。
ま、鶏肉なんかはプレイヤーには結構いい値段で売れるから、捨てはしないんだけども。なんというか、残念感は否めないよね。
そんなこんなで来ましたゴールデンマウンテン。兄さんの【極天】やカンナヅキさんの【モフモフ帝国】なんかがかなりダンジョンの攻略を進めてるらしく、鉱石が掘れるポイントもかなり増えたという。掘れる場所に関しては既に聞いてあるので、みんなでそのポイントを巡っていく形だ。
このルートだと、一周すれば最初に掘ったポイントが復活してるらしいから、無駄なく採掘ができるそうだ。出てくるモンスターは自己責任って言われたけどね。
このダンジョンを攻略できる第一陣のプレイヤーなら特に苦戦することもないモンスターしか出ないので、護衛も楽だ。
もちろん油断してるとグラビティゴーレムみたいな、レア素材持ちだけど強いモンスターにやられちゃうから注意は必要だけどね。
軽く戦闘をこなしつつ、みんなの《採掘》スキルのレベル上げを行う。私たち魔機人にとって鉱石は大事だからね。普段採掘をしない人も鍛えておいて損はない。偶然見つけたレア採掘ポイントがスキルレベルが足りなくて掘りきれない、とか目も当てられないし。
第二陣の《採掘》スキルは低いから、魔鉄鉱石を掘り出すだけでガンガンレベルが上がる。その分品質も低いけど、親方たち生産職には低い品質の素材を集めて品質を上げる事ができるアーツがある。
それを使えばいくら品質の低い鉱石でも使い道はあるので、レベル上げにも使えるって寸法よ。
MMOをプレイするには忍耐力がいるってどこかで聞いたことあるけど、ひたすら鉱石を掘り続けるって言うのもきついものがあるね。でも、この鉱石を掘り続けた先に新しい戦艦や、新しい武装やパーツが待っていると考えると、自然と採掘ペースは上がっていく。ロマンのためならえんやこらだ!
とりあえず今日はひたすら鉱石を掘り続けるだけなので、この後は自由解散にしている。
もし黄昏の戦乙女に戻りたいっていう第二陣のプレイヤーがいたらきちんと送るのも忘れない。
セーフティーポイントでログアウトはできるけど、もし次にログインした時に誰もいなかったら一人でこのダンジョンを抜けることになってしまう。さすがにステータス的にそれは厳しいので、ちゃんと送っていかないとね。
第二陣のプレイヤーの大半がいなくなっても、第一陣のみんなとマノンタクト姉弟、ミラさんなんかは残って採掘を続けている。少しでもスキルレベルを上げて自身を強化して、この第二の浮遊大陸を見て回りたいんだとか。
新人たちに負けてはいられない! さ、私たちもひたすら鉱石掘り掘りだぁーっ!
それぞれがギリギリまで採掘を続けた結果、かなりの量の鉱石素材の確保に成功した。最近自分のスキルを見てなかったけど、今日だけで《採掘》スキルが9も上がってるんだから、どれだけ掘っていたのかが分かるってもんだよね。
いくつかのスキルが結構上がってるし、《片手剣》にいたってはいつの間にかカンストしてた。派生先も選ばないとなー。
今日のゲームはここまでにして、続きは明日にするよ。明日は日曜日だし、朝から頑張るぞー! おー!
[所持スキル]
《魔機人》Lv.82(13up↑)《武装》Lv.78(13up↑)《パーツクリエイト》Lv.--《自動修復》Lv36(5up↑)《自動供給》Lv.65(15up↑)《片手剣》Lv.50(MAX)《盾》Lv.27(26up↑)《鑑定》Lv.-- 《感知》Lv.34(6up↑)《直感》Lv.42(6up↑)《遠視》Lv.35(4up↑)《敏捷強化》Lv.61(12up↑)《採掘》Lv.40(19up↑)《鍛冶》Lv.69(13up↑)《裁縫》Lv.46(5up↑)
残りSP202
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




