第四十八話 第二陣 2
第二陣のメンバーを加えた新生【自由の機翼】と【黒の機士団】のお話です。
それでは本作品をお楽しみください。
新人を加え所属人数の増えた【自由の機翼】。早速ギルドに加入してくれる魔機人プレイヤーたちにパーツを渡していく。
合わせて新規加入者五十二人。そのうち魔機人プレイヤーが三十五人だ。アーキタイプマギナシリーズは作りすぎちゃったからいくらでも在庫があるよ!
錆び朽ちたパーツからアーキタイプマギナシリーズに換装した新人プレイヤーたち。動きやすさなどが錆び朽ちたパーツとあまりにも違うので、みんなはしゃいでるようだ。
『確かにそのアーキタイプマギナシリーズは錆び朽ちたパーツよりは強い。でも、あくまでも錆び朽ちたパーツと比べての話だからね。それ以上に強いパーツが欲しいなら、自分で作るか、お得意様の整備班プレイヤーを見つけること! 共有倉庫にある素材はどれを使ってもいいから、自分たちなりにどんなパーツを作りたいか、どんな魔機人になりたいか、考えてみてね!』
『『はい!』』
『と言うわけで……えっと、マノンにタクトちょっとこっちに来て!』
私が呼んだのは姉弟の魔機人。姉がマノンで、弟がタクトだ。弟の方は銀河な美少年みたいな名前だね。
なんでその二人を呼んだかと言うと……私の勘にビビッと来たんだよ、ビビっと。この二人は他のプレイヤーとなにかが違う……みたいな? そんなふわっとした感覚。
『はい、ギルドマスター』
『俺たちに用っスか?』
『うん。君たちにはイベントなんかの際には私の第一部隊に入ってもらうつもりだから、色々とお話しておこうと思って』
『私たちがギルドマスターの部隊!?』
『まじっスか!?』
『マジマジ!』
『……でも、その部隊ってなんなんですか?』
『そうだよね。そこからだよね。えっと、このギルドは普段は別々のPTを組んでもらってるんだけど、イベントの際には主に五つの部隊で構成されてるの。私が隊長の汎用万能機で構成された第一部隊。カノンが隊長の遠距離武装機で構成された第二部隊。クラリスが隊長の近距離武装機で構成された第三部隊。ヴィーンが艦長の黄昏の戦乙女のブリッジクルーで構成された第四部隊。最後に、親方がトップの整備班で構成された第五部隊。主に戦うのは第一から第三までの部隊ね』
『第一部隊は汎用万能機……ですか』
『そそ。私のブラッドラインを見てもらえれば分かると思うけど、近距離戦も遠距離戦もそれなりにこなせる機体になってるの。で、君たちのパーツだけど……』
ごくり、と二人が唾を飲み込む。
私は勿体ぶらせるように間を置いて、(表情は変わらないけど)にっこりと笑いかけた。
『自由よ!』
『え、あの……』
『自由……なんスか?』
『当たり前じゃない。大体この部隊の編成だって正直いるかいって言われたらいらないと思うし……でもイベントの時はバラバラに動かれると困るから、仕方なく部隊を決めてるだけだもん。まぁ、第二と第三に関しては感性が似てる人が集まってるというか、たまについていけないことがあるのも確かなんだけど……』
第二部隊はともかく、第三部隊のあのはっちゃけっぷりは……いや私も結構はっちゃけてるな? 人のことはとやかく言えないや。
私は拳を振り上げ、胸の前で握りしめる。
『やっぱロボットは自分の好きなタイプのロボットじゃないとね! せっかく自由に作れる環境があるんだから、自分の好きなロボットを作らないと! ……まぁ、私は一点特化型よりも汎用万能機の方が好きだから色々作ってるんだけどね』
『お、おお! 俺、作ってみたいパーツがあるっス! 相談に乗ってくれないっスか!?』
『わ、私も!』
『おっけーおっけー。ま、とりあえずパーツの作り方なんかは親方たちのところに行って学んできてね。親方は魔機人じゃないけど、このギルドで一番生産職としてのスキルが高いから。それに整備班には魔機人もいるからね』
『『はい!』』
そう言うと二人は駆け足で親方のところに向かった。いやはや、あの姉弟がどんな機体を作るのか楽しみだね。
さて、とりあえず新規加入者は全員スキル上げから始めてもらうとして。
私はなにをするかな……と、ん?
〈ギルド【極天】が西の守護者を討伐しました。これにより、西の屋敷が開放されます〉
〈初回討伐報酬として、西の屋敷の所有権をギルド【極天】が獲得しました〉
〈西の守護者の全てが攻略されたことにより、北、南の守護者が弱体化しました〉
【極天】……ってことはユージン兄さんたちのギルドか。西っていうと私たちが拠点にしてたホワイトハーバーの辺りかな?
でもあの辺りに屋敷なんてあったかなぁ……見た覚えがないや。
それとも空……だとして、兄さんたちはどうやって行ったんだろう。なにかしらの飛行手段でもてにいれたのかな。
ま、あとで聞けばいいや。どうせ今頃開放された施設に関しての説明を聞いてるだろうし。
東が青龍なら西は白虎……さすがに西もロボットってことはないだろうし、普通に白い虎なのかな。喋る(と思われる)モフモフの白い虎とかなにそれ可愛い。モフりたい!
しかも全て攻略してるから、セイリュウオーさんみたいに真の四神も攻略できたんだ。私が言うのもなんだけど、やっぱり攻略組は違うなぁ。
確か、西が兄さんたちの担当で、北がカンナヅキさん、南がナインさんのところだっけ。次はどっちが開放されるのかな。
そんなことを思っていると、背後から声をかけられる。
『おお、ここにいたか友よ』
『ダリベさん!』
『君のおかげで我が【黒の機士団】にもプレイヤーが増えてくれた。感謝している』
『いえいえ。ダリベさんのギルドに魅力があったからですよ』
『そうか? そうならばいいのだが……』
『それでダリベさんは私になにか?』
『いけないいけない。礼を言って満足していたよ。聞きたいことがあったんだ。君たちのところのあれ……名前は確か、黄昏の戦乙女……だったか? あの、機動戦艦の名前は』
『ん、そうですね。それがどうかしました?』
『いやなに。似たようなものを我らも見つけていてな。少し人手が足りないから修理するのを手伝って欲しいと思って――』
『What?』
今、なんかとんでもないことサラッと言ってなかったかこの人。黄昏の戦乙女と似たようなもの見つけたとかなんとか。まさかね。そんなまさかね!
『えなんて?』
『いやー、今なんかおかしな言葉が聞こえちゃったかなって。もう一度言ってもらっていいです?』
『え、ああ。大丈夫だが。ならば、詳しく説明しようか。場所としては始まりの浮遊大陸の西の果て、湿地帯のさらに奥、沼地となっている中の一角にそれらしきものを発見したんだ』
『西の果て……』
そういえば、北には港、東には守護者、南には黄昏の戦乙女とあるのに、西は湿地や沼地が広がってるだけでなにもないって言われてたっけ……。
まさか西にも戦艦があるとは思ってなかったけど。いや、まだ戦艦らしきもの、か。
『新人が増えたが、我ら第一陣がいれば始まりの浮遊大陸なら特に問題もないし、スキル上げをしつつ合同で戦艦らしきものを修理してみないか、と提案したい』
『なるほど』
もう少し時間を貰えれば親方たちの講習は終わるだろうし、黄昏の戦乙女で西までひとっ飛びすればみんなで向かっても時間もかからないか。
【黒の機士団】の人たちを乗せていっても十分に空きはあるし、この提案は受けてもいいとは思う。
でも、一応みんなには聞いとかないとね。
『みんなに、確認するんで、少し待っていてもらっても大丈夫です?』
『もちろんだとも。いい返事を期待しているがな』
私はギルドチャットを繋いで全員に今の話を伝える。新人さんたちにはこれを機にギルドチャットについても説明しておこうかな。
新しい戦艦が見つかったかもしれないということと、それを見つけた【黒の機士団】と合同で修理するということを伝えると、満場一致で『行きたい!』と声が返ってきた。聞くまでもなかったって感じだね。
親方や他の指導役の魔機人プレイヤーと取得スキルについての相談をして、必要なスキルを取得してもらってからの出発となった。
最低限のスキル上げの時間として、ゲーム内時間で一時間は欲しいと言うことだ。
それをダリベさんに伝えると、むしろそれくらいの時間で行けるなら願ってもない、と上機嫌だった。口調は変わらないけど、声音が弾んで聞こえたよ。
一時間後にまた集まることを約束したダリベさんは【黒の機士団】の新人の面倒を見るために一度戻っていった。
さて、私は一時間でなにをしようかな。
新しいパーツは……時間が足りない。作りかけのはあるけど、一時間じゃさすがに終わらないかな。新しいパーツを一から作ってるようなものだし。
それにゴールデンマウンテンの鉱石素材もちょっと心もとない。今度みんなで採りに行かないとね。
あ、沼地に行くならこのままの装備じゃダメかな。ずっとスラスターを噴かせて飛んでるわけにもいかないし。
私は暇そうにしてる何人かのプレイヤーを捕まえて、できる限り脚部の拡張パーツであるマギアホバーを作っていく。これはカノンたち第二部隊のプレイヤーには標準装備されてるやつだね。
量産型魔導石のおかげでこれくらいの拡張パーツなら魔導石の在庫を気にせずに作れるってのがいいね。
でも、沼地の戦艦もどき……一体どんなのなんだろうね? 低空で浮いたりするのかな?
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




