第四十五話 第二陣……のその前に
今回から新章になります。
久しぶりに長い生産回になります!
それでは本作品をお楽しみください。
第二の浮遊大陸の東の空に浮かぶ浮遊大陸。その工場から戻ってきた私たちは、早速各々の生産活動に勤しんでいた。
工場には黄昏の戦乙女の格納庫から直接転移できるようになったので、私たちの艦は西の港町、ホワイトハーバーの港に着艦している。
あれからユージン兄さんに色々聞かれたりしたけど、詳しいことを話しておいた。
他の方角のボスにもシークレットボスがいるはずだからね。それを倒す手助けになればいいなと思って。
……ちなみに彼氏ができたのかとかどうとか、よく分からないことをほざきやがったので少し怒っておいた。なにを言ってるんだあの兄は。
で、そんなことはどうでもよくて、とりあえず私はさっさと左腕を修理しないといけないわけなんだけど。
『……うーん』
私は目の前に広がる素材たちを見て悩んでいた。
これらは全て東の工場……【自由の機翼】所有の工場になったから自由工場と呼ぶことにしようか。自由工場のダンジョンで手に入れた素材たちだ。
様々な用途に使える素材たちで、その使い道を考えるだけで時間が潰せそうだ。
とはいえ、いつまでもこのままってわけにはいかない。
強化するにしろ、同じものを作るにしろ、さっさと左腕をなおさないと生産活動ができないからね。
ひとまず困った時の異界式腕部パーツに切り替えて、ブラッドラインの左腕を作っていく。
うーん、緊急用のパーツを新しく作っておくべきか。もしくは、ブラッドラインの腕をもう一つ作ろうかな?
『ま、この際だから全身オーバーホールしちゃおうか。魔導石を新しいやつに変えて……っと』
各パーツの傷んでいる部分や、交換した方がいい部品などを交換していき、見た目は変わらないながらもさらに強力になったブラッドラインのパーツ群。そして、マギアサーベルの魔導石も新しいものに変えた。
それらを改めて装備した私は、未だに装備していたマントをインベントリにしまって親方の元へ歩く。
親方は相変わらず誰かしらの相談を受けているようで、その相談が一段落したところで近付いて行った。
『やぁやぁ親方』
「おう、ミオンか。どうした?」
『ちょっと、第二陣の装備について相談したくて』
『あぁ……そう言えば、もうすぐだったか』
『そそ。でね、私としては、今後ギルドに新しく入ってくれた魔機人のプレイヤーには、錆び朽ちたパーツよりもちょっと性能がいいくらいのを配布するのがいいと思ってるんだけど、親方の意見を聞きたくてね』
「なるほどなぁ。確かに、最初から高性能なパーツを渡しても宝の持ち腐れ……いや、第二陣だとしたら、ミオンたちの情報を得て楽に強くなりてぇっていうふてぇ野郎も来るかもしれねぇから、それくらいが妥当だとは思うぜ」
『よかったー。いやね、あの量産型魔導石で新人用のパーツを作ればいいんじゃないかなーって思ったんだよ』
「あれか。確かに、新人用として使えるな……カラーリングはどうするつもりだ?」
『そこはみんなと相談してって感じになると思うけど、私的には灰色がいいかな』
「その心は?」
『量産機っぽい色だなって』
「なるほどな」
親方と笑い合う。
それに、無制限にギルドメンバーを増やせないってのもあるし、試験ってわけじゃないけど、ある程度の条件は出さないとなって思ってるよ。
それこそ、楽に強くなりたいだけの、ロボットに対して愛のないプレイヤーには入ってほしくない。私が求めてるのは、熱きロボット魂を持ったプレイヤーたちだからね。その点、今のうちのギルドメンバーは愛があるね。
ていうか、そうじゃないと多分うちのギルドメンバーたちについていけないような気がするんだ。もちろん、私自身にもだけどね。
量産型魔導石で量産機パーツを作るのは確定として。
ま、新人さんにはもっと強いパーツがほしいなら、自分で頑張って作ってねってところかな。これでも、過去の行動を反省しているのです。
その分、パーツの強化やパーツを新しく作るための素材は共有倉庫から使っていいし、そこまで悪い条件じゃないとは思うけど。
親方との相談を終えた私は、今親方と相談した内容をテキストチャットでみんなに送り、自分のガレージの中に戻る。
さて、とりあえず新人さんたちに舐められないように(という建前で)新しい武装かなんかを作っていきたいところだけど……なにがいいかな。
やっぱり、色んな状況に対応できてこそ私の目指す汎用機って感じがするんだよね。
そうなると、汎用性の高い武装……統合? 複合? 兵器になるのかな。色んな武装を一つにまとめた感じの。それこそ、ガナリー〇ーバーみたいな。
よし、とりあえずその方向で武装は作るとして、あとは機体を強化できるパーツも作りたいところだね。
参考としては、自由工場のダンジョンに出てきたキラーゴーレム。四足のロボットって言うのはロマンがあるよね。
だとしたら……普段は普通に二本の足で、腰部パーツが変形して四足になる感じで……作るか!
普段は邪魔にならないようにウィング兼スラスターとして使って、地上を素早く駆ける際に変形! とかどうよ。もちろん、フロートウィングと共存できる形で。
これなら、スラスター噴射で使うENも節約できてかっこいい機体になりそうだけど。
……うん、いけそうだね。じゃあ早速作っていこう!
まずは複合兵器の方から作っていこうかな。
搭載する機能としては、遠距離攻撃、近距離攻撃を基本として、ビームと物理武器をどっちも扱えるようにしようか。
あとは専用のマギブラスト・リングも増設したい。銃口にリングを取り付けておいて、射撃または格闘戦の際に必要に応じて射出していく……みたいな感じで運用できれば。
それならリング自体も小型のものでいいかな。幸いゴーレムコアは沢山あるし、素材となる鉱石類もゴールデンマウンテンで採掘してるチームのおかげで潤沢だ。
あとはどこにマウントするか……取り付けるかだけど、左肩にマギアソードを取り付けてるし、右肩でいいかな。右肩にジョイントを増設してそこに取り付ける形でいこうか。
そうと決まれば早速作業に移ろう。
取り出したるは、予備で作っておいたマギアライフルです。マギユナイト・ライフルを作ってからは下位互換のマギアライフルの出番がなかったからね。ここらで生まれ変わらせてもいいんじゃないかと。
と言うわけで分解! さらに分解した部品を《パーツクリエイト》に突っ込んで形を変えていく。
複合兵器の持ち方としては、トンファーの持ち方が一番近いかな? 逆手……でいいんだろうか。全体的な形は縦に細長くて、先っぽにはライフルとサーベルが切り替え可能な銃身を取り付けていく。
ライフルの機能とサーベルの機能を持たせるにあたって、心配なのは魔力消費量かな。マガジンを交換しやすいように持ち手に近い部分にコネクタ部分を作製していく。マガジンだけじゃなくてケーブルで直接ENを送れるようにね。
ライフルを撃つためのトリガーとサーベルを生み出すためのトリガーを同一にして、持ち手の人差し指が当たる部分に取り付ける。ライフルとサーベルの切り替えはENを流すことで切り替わる仕組みにした。ここら辺はゲームだからできることだね。
あとは物理武器だけど、これは幅と長さをギリギリまで大きくした片手剣サイズの刀身を取り付けることにした。持ち手の親指を置く部分にボタンを作り、そのボタンを押しながら持ち手を手前に引くと、銃身が格納されて刀身が中からくるりと飛び出す仕組みにしてみたよ。
刀身部分には魔鉄インゴットとアーティファクト・インゴットを使い、なるべく強度が高くなるように作った。現状手に入る鉱石類だとこれが一番硬いんだよねぇ。早くアダマンタイトとかオリハルコンとか出てきてくれないかな? 未知の金属素材でも可!
そして、忘れちゃいけないのがこれ。小型マギブラスト・リング!
これを銃身の太さに合わせて輪の大きさを調整して……遠隔操作するためのゴーレムコアを武装本体に取り付ける。これを……四つくらい作ろうかな。
小型マギブラスト・リングの機能は増幅だけでいいかな。こんなちっちゃいのでリング・スラッシャーとかしても意味なさそうだし。それなら、増幅効果だけにした方が燃費もいいしね。
さらにこいつを使用する際に右腕に固定するためのコネクタを作った。ブラッドライン側にも専用のコネクタの穴を作って、噛み合うかどうかの確認を行う。
実体剣モードの際には一緒にズレるように設計したから、変形する時に引っかかったりはしないはずだけど、こればっかりは実際に使ってみないとね。
そんなこんなで、遠近両用の複合兵装、名前はどうしようか……うーん、ディナイアル……トリアイナ……アームド……えっと、語呂をよくして、ディ・アムダトリアにしよう。うん、かっこいい。武器の名前なんて極論かっこよければいいんだよ。
そして複合兵装、ディ・アムダトリアが完成した。
[武装・兵器/片手剣]ディ・アムダトリア レア度:EX品質:A+ 魔力伝導率:A+ 魔力保有量:10000/10000
サーベルダメージ:5000 ライフルダメージ:4000 ビーム増幅倍率:1.5倍
ATK△△△△△
スキル:《魔力自動吸収》《光属性》《状態変化:片手剣》《変形》《増幅》《遠隔操作》
私専用の武装。くぅ〜かっこいいね!
早速増設した右肩のジョイントに接続して重さや取り回しなどを確かめる。特に重さは気にならないね。武装の取り回しの方も、ちょうどいい感じだ。
コネクタのスライドも問題なく作動している。よし、ディ・アムダトリアはこんなもんでいいかな。
お次は腰部に新しく取り付けるウィング兼脚の作成に入るよ。こういうのはね、思いついた時に作らないといけないと私は思うんだ。
一度背部パーツからマギユナイト・フロートウィングを外して、変形させておく。いつかは私たち魔機人でもこんな感じの可変機構を搭載してみたいね。腕とか足とかの感覚がどうなるのかが分からないけど。
まずは今から作る四足形態を動かしてみて、だね。どんな感じで動かせるのかな?
『そうだ、あれを使ってみようかな』
私は今取り出してる素材に加えて、セイリュウオーさんとの戦いで得た魔力結晶炉を取り出した。
こいつをお試しで使ってみようか。魔力結晶炉があれば魔導石とかは使わなくていいだろうし。
素材の目処はたったから、あとはデザインかな。腰を中心にして両側にVを描くようにウィング兼足を作っていけばいいかな。右と左のVを合わせてWの形になるように作ってみよう。
まずは基本となる四足になる部分。これらはブラッドラインなどのパーツを作る時と同じように作成する。つまりはプラモ型だ。
ウィングとして機能しつつ、変形して後ろ足になるようなギミックを仕込んでいく。同じようにブラッドラインの脚部パーツにも似たようなギミックを仕込む。人間と同じような足だと走る時にコケちゃいそうだからね。
ちなみにきちんと外部サイトで馬の足の形を見ながら作製していくよ。
脚部の裏側にあたる部分に、ウィング形態の時にスラスターの噴出口になるパーツをはめ込んでいく。マギユナイト・フロートウィングよりも出力は高いだろうから、その分多めに作っている。
脚部になる際には、スラスターのある側を裏側になるようにしたので、地上戦闘時でもスラスターによる加速は可能だ。使う機会はあまりないとは思うけどね。
あとは……せっかく魔力結晶炉を使うんだから、胴体の魔力結晶炉とも繋ぎたいな。ほら、ツイ〇ドライヴ的なね? ゲーム的に二乗になる……とは思わないけど、EN量が二倍くらいになってくれないかなと。
というわけで早速腰部パーツに取り付ける拡張パーツに魔力結晶炉を繋いでいき、魔力結晶炉同士を繋ぐためのケーブルを保護しながら伸ばしていく。
腰部パーツ、胴体パーツに邪魔にならないようケーブルを伸ばしていって、胴体内部に格納されている魔力結晶炉と繋ぎ合わせた。
『お、おお、おおおおお?』
それらを繋いだ瞬間、なんだか身体が軽くなったような、そんな感覚がした。急いで追加拡張パーツを完成させて、腰部パーツに取り付けていく。もちろん重力鉱石を多めに加工して内蔵させるのも忘れない。
こうなると腰にマギユナイト・ライフルを取り付けるスペースがなくなるから……マギアソードを左肩から左腰に移し替えて、左肩のジョイントにマギユナイト・ライフルを取り付けようかな。
改めてシルエットを見ると……なんかごつくなったね?
そりゃ、右肩と左肩にごつい銃器が増えて、背中から腰にかけて大きなウィングが追加されたからそうもなるか。
腰の拡張パーツの名前は……変形した後の姿のケンタウロス型にちなんで、マギユナイト・セントールウィングって名前にしようかな。長いから普段はCウィングで。
変形後は、ブラッドライン・エクステンドから、ブラッドライン・エクスセントールに名前も変えよう。こういうのは、ノリが大事だからね。
試しにCウィングを起動させてセントール形態に移行させる。すると、ブラッドライン側の脚部パーツもそれに合わせて変形していく。
動かし方としては、特に難しいことはないと思う。頭の中でこう動きたい、と思えば勝手に後ろ足が動いてくれる感じだ。この辺はマギブラスト・リングなんかと変わらないかな。
ガレージ内を駆けると、今までのダッシュとは比べ物にならないくらい速いことが分かった。ついでにスラスターも噴かせるとまさに殺人的な加速で、制御しきれずに壁に激突してしまう。幸い耐久は高めに作ってあるからブラッドラインもCウィングも壊れるようなことはないけど。
これに加えてマギユナイト・フロートウィング……こっちもFウィングって呼ぼうかな。FウィングもCウィングを取り付けた状態で背部パーツに合体できるように作っているので、地上戦空中戦共にかなりの進化を遂げたと言っていいだろう。
ついでにCウィングの先(足で言うとくるぶしの辺り)にマギブラスト・リングを二つ増設して、通常サイズのリングが四つ、小型サイズのリングが四つの計八つのリングを扱えるようになった。と言っても小型のはビーム増幅機能しかないから、実質四つだね。
これらのパーツを親方に見せに行くと、
「……お前はどこに戦争ふっかける気だ? ま、それはともかくあとでCウィングは見せてくれや」
と苦笑混じりに言われてしまった。
いやまあね。ちょっと頑張って作りすぎちゃったかなって感じはあるんですよ。でも止められなかったんだ。反省はしていない。
「そうそう。新人用の量産魔機人パーツだけどな、他のやつとも相談して大まかな形はできたから確認しといてくれ」
『もうできたの?』
「もうって言うか、お前さんがガレージにこもってからゲーム内で六時間は経ってるんだけどな」
『あら、そんなに』
「ものづくりってのは夢中になると時間を忘れるもんさ。好きなものなら余計にな。てなわけで完成品を装備してくれているカイルだ」
『よっ、ギルマス。量産機あるところに我あり、だぜ』
親方の後ろから量産機好きのカイルが出てきた。
カイルが装備していた魔機人のパーツは一言で言えばとても量産機っぽい見た目をしている。そうなるように設計してもらったんだけどね。
それにしても完成まで早かったな。六時間でここまで作っちゃうのか。
機体デザインとしては私のブラッドラインをモチーフにしているらしく、ツインテールのパーツがポニーテールのパーツになっていて、全体的な装甲が男性型になっている。
カラーリングとしては灰色をメインにしてあり、ところどころは黒色と白色で装飾されているようだ。
武装としては、量産型魔導石を使った量産型マギアサーベルに量産型マギアライフル。それらの威力は、サーベルが固定800ダメージで、ライフルが600ダメージだと言う。確かに大元のマギアサーベルやライフルからはかなり威力が抑えられてるね。
「ま、これでも散華の森の上層くらいなら楽勝だろうし、少し手を入れれば中層も歩けるようになるだろ」
『これでも頑張って性能を抑えてるんだよ。ま、錆び朽ちたパーツよりはマシ程度にはなってるはずだ』
「俺としてはこんなもんでいいと思ってるんだが……そこはギルマスの意見を聞きたくてな」
『それで、どう?』
『うん! ちゃんと量産機っぽい見た目にもなってるし、性能もかなり抑え目になってるからこんなものでいいと思うよ。それで、名前は決まってるの?』
『もちろんだ。名前は分かりやすくアーキタイプマギナシリーズだぜ。ま、全ての基本形……ってわけじゃないけどな』
二人の話を聞きながら新人に配る予定の量産型魔機人……アーキタイプマギナを見る。うん、私としてはこれでいいと思う。
最初から自分で作りたいっていう人には腕部だけ渡せばいいかな。流石に錆び朽ちた腕部でパーツなりなんなりを作るのは止めた方がいいと思うけど。あれだと時間がかかりすぎるからね。ソースは私。
『で、どれくらい数を作るつもりなんだ?』
『そうだね……私としても、増やしても百人くらいかなとは思ってるんだけど』
「増やしすぎてもあれだしなぁ。それに、資格のないやつは弾かねぇといけないしな」
『もう誰彼構わずようなことはしないよ。魔機人プレイヤー百人、整備班希望のプレイヤー三十人ってところかな』
「条件の方は?」
『色々考えてはいるけど、よほどやばい人かロボットに愛着のない人は通らないように考えてるよ』
『それで十分だろ。ただ、本当にロボットを好きなやつがいっぱい来た場合はどうすんだ?』
『その時は……保留って形で、魔機人のパーツの作り方を教えるくらいかなぁ。この黄昏の戦乙女だってそんなに人が入るわけじゃないだろうし』
「いや、ここは一応ギルドホームだから拡張すれば何人でもいけるが……」
『えっ、そうなの?』
「居住区ならハウジングメニューから拡張できるぞ?」
今更知った衝撃の真実。そう言えば扱いとしてはギルドホームだったね。私自身、この艦のことを移動手段として認識してたから……。
『ならできるだけ拡張して、新人さんに備えようか』
「そうだなぁ。この規模だと……必要な素材やお金を含めて、対応できるのは千人くらいまでか?」
『最終的な定員はそれくらいにしようかな。第二陣ってどれくらい増えるんだっけ』
『えっと……公式の案内だと、第一陣と同じく五万人だそうだ』
『その中の何人が魔機人を選ぶのか……』
「ま、なるようにしかならねぇさ。さて、俺はヴィーンの新しい武器でも作ってくるかな」
『じゃあ俺はヤマトたちとこいつを量産してくるわ』
『二人ともありがとう。私もカイルたちを手伝うよ!』
『そりゃ助かる!』
こうして私たち【自由の機翼】でも、第二陣の受け入れ準備が着実に進んでいた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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