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第四十三話 瞬神、攻略!

長かった青龍、セイリュウオー戦も今回で終わりです。

それでは本作品をお楽しみください。

 さて、相手には【瞬神(しゅんしん)】という極々短時間のみ出力を上げることのできるアーツがあり、さらになんか凄そうな剣が出てきたわけですけど。

 これ、私勝てるのかなぁ……?

 難易度的に、まだ挑んじゃいけない相手だったんじゃないかと思ってしまう。


『動かぬならば、こちらから行くぞ!』


 動きをみせない私を様子見していると思ったのか、セイリュウオーさんは大地を蹴ってこちらに迫ってくる。

 少しは考える時間をくれてもいいんじゃないかな!


『ちぃっ、リング!』


 あの剣……青龍剣は通常状態のマギアサーベルでは受けきれないと思った私は、サーベルにリングを通し強化サーベルにして青龍剣を迎え撃つ。

 刀身をクロスさせて受けた一撃は重く、衝撃で身体が押されて足の接地面がガリガリと音を立てて削れていく。くっ、勢いを殺しきれない!

 このままじゃ押され続けて壁に激突してしまう。現状をどうにかするために私は地面に向けてアンカーを射出する。


『ぐぅぅぅ!』

『ほう、我が青龍剣の一撃を止めるか!』


 脚部に想像以上のダメージが入るけど、必要経費だと思っておこう。セイリュウオーさんの一撃を受け止めた私は、マギアサーベルに直接EN(エネルギー)を送り出力を強化する。この方法は限界以上の出力を出せる分、サーベルが出力に耐えきれないからやりたくはなかったけど……四の五の言っていられない!


『はぁぁぁぁぁぁっ!』

『むう!』


 出力を限界以上に引き上げた強化マギアサーベルは易々と青龍剣を押し返し、その身体に傷を付ける。バチバチとサーベルの持ち手から火花が散るけど、もう少し耐えて!

 再び私に向かって振り抜かれる青龍剣を強化サーベルで弾き、セイリュウオーさんに斬撃を叩き込む。


『なんとっ!』

『もう少し持ってね、マギアサーベル……!』


 一撃一撃が重く、セイリュウオーさんのHPバーはみるみるうちに減っていく。しかし、セイリュウオーさんのHPバーが半分を切ったあたりで、私の持っているマギアサーベルが爆発した。

 破片が私の腕部パーツを傷付け、動力源の魔導石が砕け散る。貴重な魔導石だったけど……背に腹はかえられない!

 私は再びリングを手首に戻し、インベントリを操作する。

 しかし目の前の相手はその隙を逃さなかった。


『てやっ!』

『しまっ――』


 意識がほんの少しインベントリへと向いた瞬間、至近距離まで近付いた青龍剣によって私の左腕が切り落とされてしまう。幸い切り落とされる直前で身を逸らしたため、肘から上は無事だ。


 ガシャン、と音を立てて転がっていく左腕。シールドを持っていかれたか……!

 私はセイリュウオーさんから距離を取り、インベントリから予備のマギアサーベルを二本取り出す。それらを一度背部パーツに取り付けた私は、再びインベントリを漁る。


『それではもう左腕は使い物になるまい。さて、どうする?』

『まだまだ……これからですよ!』


 私はインベントリから見た目がボロボロのマントを取り出し、装備した。これは本来ならシールドの代わりになってくれるスグレモノなんだけど……あの青龍剣相手じゃ焼け石に水かもね。


『さっすがギルマス分かってるぅ!』

『まんとはいいぞ』

『欲を言えばもう少し機体がボロボロなら……』

『あれはブラッドライン・リペアだぁ!』

「しかし、片腕を失ってしまったか……」


 分かる、分かるよみんなの気持ち。私もブラッドラインの頭部パーツをそれっぽく改造したい! ボロボロの機体にマントの組み合わせは素晴らしいものだよワトソンくん。

 私は内心でニヤつきながらセイリュウオーさんに向き直り、左肩のジョイントからマギアソードを引き抜いた。


『ほう……』

『これは酷くENを食うからあんまり使いたくはなかったんだけど……仕方ない』

『その剣が我が青龍剣と打ち合えるか、確かめてやろう!』


 地面を蹴り砕き、私に急接近するセイリュウオーさん。私はマギアソードに直接ENを注ぎ、その刀身を出現させる。

 マギアサーベルとは比べ物にならない大きさの刀身で、青龍剣を受け止めた。


 マギアソードの弱点は、維持コストの高さ。マギアソード本体のENを使ってしまうと、およそ50秒程しか使うことができないくらい燃費が悪い。

 では私自身のENを使うとどうなるかというと、それでも100秒使えればいい方だろうか。これでも腕部のENも使ってなるべくマギアソードの刀身を維持できるようにしているんだけどね。

 というわけで、これを使ったからには短期決戦に持ち込まないといけないわけだ。


『リング・スラッシャー!』

『む!』


 私はリングを右の手首と切り落とされた手首から射出し、ビームの刃を生み出させて回転させる。こんなこともあろうかと、各種パーツを調整した時にゴーレムコアの数を増やしておいて助かったよ。すこしばかり反応が悪いのは仕方ないね。


 私はそれらをセイリュウオーさんにけしかけ、自身も懐に潜り込もうと接近した。

 青龍剣でリングは弾かれるものの、そこは私のイメージ次第で動く兵器。弾かれるのと同時にその勢いを利用してさらにセイリュウオーさんに攻撃を仕掛ける。


『ちぃっ!』

『まだまだ!』


 リングとマギアソードによる3方向からの斬撃。リングに気を取られすぎるとマギアソードに斬られ、マギアソードを気にしすぎるとリングに背中を切りつけられる。

 青龍剣で切り落とされないように細心の注意を払いながら、リングをけしかけていく。


『悪いけど、これを抜いたからには速攻で決めさせてもらうよ!』

『ぐぅっ!』

『リング、やつを切り裂け!』

『厄介な……!』


 リングとマギアソードによる連続攻撃で戦いを有利に進める。セイリュウオーさんのHPはどんどん減っていき、残りはおよそ二割ほど。

 このまま押し切れれば勝てるかもしれない。しかし、セイリュウオーさんにはまだあれが残ってる。


 【瞬神】……おそらく、あと一度くらいは使ってくると思うんだけど、そのタイミングがいつなのか。

 攻略の手立てはついてる。でも、タイミングを逃せばやられるのは私だ。

 セイリュウオーさんの動きを、一挙手一投足見逃さないように見る。リングの位置も、大丈夫。

 さぁ、いつ使ってくる――


『――【瞬神】、発動』


 目の前が真っ赤に染る。赤い軌跡を残しながらセイリュウオーさんは私の後ろを取り――


『待ってましたよ、それを』


 リングによって増幅されたサーベルによって貫かれていた。


『な、これは……』

『奥の手っていうのは最後まで取っておくもので。リングを毎回この位置に戻してて正解でしたよ』


 私の頭部にあるツインテールパーツ。その先端がくるりと回り、そこから隠し腕ならぬ隠しマギアサーベルの刀身が伸びていた。それらはリングを通して強化マギアサーベルとなり、攻撃に意識を向けた無防備なセイリュウオーさんの装甲を貫いてくれたってわけだ。


『……見事』


 〈スペシャルボス:セイリュウオーを討伐しました〉

 〈戦闘の貢献度に応じて報酬をインベントリへ送ります〉

 〈戦闘の貢献度一位のミオンに特別なアイテムを送ります〉

 〈魔力結晶炉(マギアスタルドライヴ)を入手しました〉

 〈東の守護者を討伐しました。これにより、東の工場が開放されます〉

 〈初回討伐報酬として、東の工場の所有権をギルド【自由の機翼(フリーダム)】が獲得しました〉

 〈東の守護者の全てが攻略されたことにより、北、西、南の守護者が弱体化しました〉


 瞬間、セイリュウオーさんのHPバーが削り切れ、私の前に討伐のログが流れる。って、んん? なんかいくつか大変なことが書かれていたような……?


『……ところで、そろそろこれを引き抜いてはくれないか?』

『え……ああ! ごめんなさい!』


 私はセイリュウオーさんに刺さりっぱなしのマギアサーベルを抜き、元のツインテールパーツに戻す。リングも右の手首に戻し、左の分はインベントリにしまう。切り落とされた腕を回収するのも忘れない。

 もちろんマギアソードは左肩のジョイントに接続しておく。


『見事だ。見事、私を打ち倒した。私を完全な状態で打ち倒した君たちには、授けたいものがある。こちらへ来てくれ』


 と、私たちを手招きしてセイリュウオーさんはさっさと奥へと向かってしまった。とりあえずみんなと合流しようか。

 観客席のようなものから降りてきたギルドのみんなと合流し、相談した結果とりあえず向かってみようということになった。


『しっかし、これまた綺麗にすっぱりと……』

『ずばばんずばばん?』

『どうしてそこで魔神皇帝のうたを……?』

『きぶん』

『そうですか……』

『ふふ、これはこれでかっこいいからよし。やろうと思ってもできることじゃないからね。それに、これでもっともっとパーツを強化できるし』

「東の云々は全体アナウンスだったけど、これでまた掲示板で騒がれるね」

『また【自由の機翼】がなんかやったぞ……みたいな?』

「そうそう」


 みんなと話しながらボス部屋の奥を進んで行き、突き当たりの扉の前にたどり着くとそこにセイリュウオーさんがいた。


『すでにアナウンスされていると思うが、この先のものを君たちに譲渡する。これをどう使うかは君たち次第というわけだ』

『その先にあるもの……』

『工場とか、ログに残ってるんですけど……』

「……覚悟して進むしかないか」


 私たちはセイリュウオーさんに促されるままに扉の先へと進む。

 そこで私たちが目にしたのは、人間の拳大ほどの石を作り続ける機械たち。その拳大の大きさの石は、色は違えど私たちがよく見るもの。

 そう、魔導石に酷似していた。


『あの……セイリュウオーさん、これって……』

『君たちならば分かるだろう? ここは、魔導石を量産する工場。つまり、ここから見えるあの石は量産型魔導石というわけだ』

『『『『『『――はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』』』』』』


 量産型魔導石って……どういうことだってばよ!?

ここまで読んでくださりありがとうございます。

続きもどうぞお楽しみください。

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― 新着の感想 ―
[一言] マントといえば、ダブルオ○ガンダムだよねー。 ...他を知らないからだけど。
[一言] 魔導石を流通させて一儲けとか好き放題出来るねぇwww
[良い点] まぁヒューマンタイプのトッププレイヤーの妹って立ち位置と魔機人タイプトップという立場だし、嫉妬はあれど叩かれはしないだろうね(初手不遇過ぎたのも含め) 防衛戦でフレンドリー(ロマン軍団)な…
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