第四十二話 蒼青龍機-そうせいりゅうき-セイリュウオー
過去最高に長い戦いですね。
それでは本作品をお楽しみください。
『いやぁ……いいものですな、合体変形バンクは』
バッチリと動画に残しましたとも。ええ。
私も合体変形ロボを作りたい……作れるのかな?
「誰も攻撃しなかったから私も攻撃しなかったんだが……これは、攻撃しない方がいい、お約束というやつかな?」
『その通り。ここで攻撃するような無粋な奴がいたら、私がマギスティアモードの最大火力で消滅させてたよ』
「そこまでなのかい!?」
『ヴィーン。ロボスキーにとって合体変形バンクって言うのは、絶対に侵されちゃダメなんだよ。作品によっては邪魔してきたり、そもそも邪魔できない理由付けがされてたりするけどね』
『合体変形バンクを邪魔するのはギルティです。言語道断です』
『まあまあ落ち着けってお二人さん。しかしまぁ……このゲームってあんなこともできたんだな』
『頑張れば私たちでも再現できるかな?』
『確かに、魔機人のパーツの制限に人型であることーなんてないからなぁ。合体魔機人とか、変形魔機人とかも作れそうだなぁ』
『夢が広がりますね!』
『うん! 魔機人はまだまだロマンを追い求められる!』
『……お話中のところすまない。そろそろこちらを向いてもらえないだろうか』
聞き覚えのない男性型の機械音声。声のした方をちらりと見ると、先ほど見事な合体変形バンクを見せてくれたセイリュウオーさんがそこにいた。
『あっ、ごめんなさい……って、シャベッタァァァァァァァ!!!』
『……その反応はどうかと思うがね。まぁ、改めて自己紹介をさせてもらおうか』
いや、突然ボスが喋り始めたらこうなりますって。ほら見てくださいよ。私以外のみんなもポカーンってしてるもん。
あ、あの小さい魔機人だけは通常運転っていうか、動かなくなった青龍の胴体をつんつんしてるね。うーん、癒される。
『私の名はセイリュウオー。蒼青龍機セイリュウオーだ。もっとも、私のことは製作者の一人であるあの研究者ですら知らなかっただろうがね』
『まぁ、知ってたら教えてくれてるはずだもんなぁ……』
『よくぞ、この私を目覚めさせてくれた。君たちにはどれだけの礼をしてもし足りないくらいだ』
『……ふむ?』
『む。伝わらなかったかね。分かりやすく言えば、フラグを立ててくれたことに感謝するということだよ』
『一気に分かりやすくなったけど……なんだかなぁ』
『そもそも、青龍が覚醒するのにも条件があってな。その上で私が目覚めるルートを辿らないといけなかったわけだから、フラグを立てるという言葉は適当だろう』
『あー』
ま、要するに条件を満たしたからセイリュウオーさんが出てきたと。
そうなると……ボス戦はどうなるんだろう?
この状態のセイリュウオーさんと戦うのかな。まだHPバーは残ってるし。
『青龍を倒す、ということであれば既に達成されているよ。だから、私と戦うのはエキシビションマッチのようなものでね。もちろん倒すことによって、通常の報酬よりも高い報酬を得ることが可能だ』
『というわけらしいんだけど……どうする?』
「ふふ、ミオンの中では既に答えが決まっているんだろう?」
『ミオンさんの思うがままに、です』
『僕はどっちでもいいけどなぁ』
『たたかう?』
『戦うんならあたしらも全力出しますよ。ま、結構ボロボロですけどね』
みんなが私を見て頷いてくれる。死に戻りしちゃった人たちには悪いけど、これもMMO。早い者勝ちってね。後で動画を見せてあげよう。
よし、じゃあ戦おうか!
『張り切ってもらったところすまないが、私との勝負は君たちの中から代表者を一人選んでもらう形になる』
『タイマンってことですか?』
『うむ。もちろん体力その他もろもろを全回復してからの戦いだ。エキシビションマッチのようなものと言っただろう?』
ふむ。となると代表者を選ばなきゃいけないわけだけど。
『ってことなら、ミオン以外ないんじゃないかな?』
『私も、ミオンさんに戦ってもらいたいです』
『ぎるます、がんば』
『あたしたちも応援してるぜ!』
「と、全員の意見は一致しているわけなのだけど、君はどうする?」
ヴィーンが問いかけてくる。
……ふふ、そんなの決まってるよ。
『そう言うことなら、不肖ミオンがセイリュウオーさんのお相手をさせていただきます!』
『ミオンと言ったか。では、私と君の状態を回復させてもらう』
パチン、とセイリュウオーさんが指を鳴らした瞬間、私たちの身体を光が包んでいく。青龍との戦いで傷付いたパーツがみるみるうちに綺麗になっていった。
ステータスでHPや耐久値、ENが全回復しているのを確認する。それどころかインベントリの空のマギアタンクなんかも満タン状態になっていた。
セイリュウオーさんのHPバーは一本で、もちろん全回復している。
私は右腕のパイルバンカーと左腕のシールド、ウィングやリングなどが正常に動くか確認し、セイリュウオーさんの前に立つ。
私以外のみんなは、いつの間にかこの部屋に現れていた観客席のようなものに集まっているようだ。
ちなみに、青龍の胴体はいつの間にか消滅しており、私たちのインベントリにドロップアイテムとして入っている。
『では、行くぞ』
『はいっ!』
私は右手にマギアサーベル、左手にマギユナイト・ライフルを持つスタイルだ。まずはお手並み拝見とばかりにライフルでセイリュウオーさんを狙い、撃つ。
地面を蹴り砕く勢いの踏み込みで、私のライフルを避けつつ私の元へと接近してくる。私は左腕のシールドを展開し、セイリュウオーさんの出方を窺う。
『ふん!』
繰り出されるのは高速の手刀。私はそれをシールドで迎え撃った。
バチバチと音を立てて手刀を受け止める。くっ、さすがに威力が高い……!
お返しとばかりにマギアサーベルで切りつけるものの、その時には既にセイリュウオーさんは離脱した後だった。あの威力に加えて機動力まで持っているのか……高火力低耐久っていうのを期待したいところだけど!
ライフルの攻撃は牽制にすらならないと理解した私は、ライフルをしまいマギアサーベルを取り出す。二刀流による近接攻撃で行けるか……?
『面白い。受けて立つ!』
『はぁぁぁぁぁぁっ!』
スラスターを噴かせて加速させ、セイリュウオーさんに切りかかる。右のマギアサーベルは左の手刀で防がれた。なら、左だ!
振り下ろした左のマギアサーベルの一撃は、セイリュウオーさんの右の手刀で受けとめられる。くっ、押し込めない……!
『ぐっ……私と力比べをしようとは……』
どうやらセイリュウオーさんの方もこちらを押し返すことができないようだ。お互いの出力が拮抗している。
ならば。
『リングっ! サーベルに!』
『ぬうっ!』
私はそれぞれの手首パーツからリングを射出。そのままサーベルの出力を上昇させて、一気に押し込む。
突然の出力上昇に虚をつかれたセイリュウオーさんは対応できず、まともにマギアサーベルの連撃をくらった。そのHPバーがガクン、と減る。
私はリングを元に戻すと体勢の崩れたセイリュウオーさんに肉迫し、サーベルを振るう。やはり一度崩れた体勢はそう簡単に立て直すことができないらしく、私のマギアサーベルを防ぐので精一杯のようだった。
このまま押し切れれば楽なんだけどね……!
『ぐっ……仕方なし。ここで使わせてもらおうか。マギアーノ・クライスドーラ博士により与えられた我が秘技を! 【瞬神】、発動!』
セイリュウオーさんが突然赤くなったかと思ったら、とんでもないスピードで私の後ろをとる。しまった、と思う暇もなく背中に強烈な蹴りを入れられた。
『なんだ、今の……』
『突然赤く光ったと思ったら、ミオンさんの後ろに……』
『みえなかった……』
『瞬間移動……じゃあねぇな。赤い軌道が残ってる』
「つまり、あのアーツは高速移動の類……ということかな?」
『瞬神……もしあれに使用制限がないんだとしたら、相当やばいぜ』
『いや、制限はあるんだろう。実際、押し込まれるまで使わなかったわけだから。もしくは、代償が大きいのか……』
『頑張ってください、ギルマス!』
数度バウンドして私の身体は地面に叩きつけられる。そのまま追撃されると死にかねないのでスラスターを噴かせて強引に体勢を立て直す。すんでのところで、セイリュウオーさんの手刀を避けた。
『これを避けるか!』
『全く……なんてアーツを隠し持ってるんですか』
『あれはそう易々と使えるものではないんだがね……ここで切らされるとは思わなかったよ』
『切り札をそうそう何度も使われても困るんですけど』
『ははは。ならば、君に負けないようにさらなる手を打つとしよう。せいぃぃぃりゅうぅぅぅぅぅけぇぇぇぇぇん!』
『まだなんかあるんですかー!?』
セイリュウオーさんが天に手を伸ばす。すると、なにもない虚空に柄から刀身までその全てが蒼で作られた剣が現れた。それを両手で構え、切っ先を私へと向けてくる。
私は無言でリングを射出し、マギアサーベルの出力を上げた。あの剣は、通常状態のマギアサーベルじゃ受け止めきれない。さて、どう攻略したものか。
青龍との戦いから続くセイリュウオーさんとの戦いは、始まったばかりだ。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




