第三十八話 開戦! マギアスタル・ガーディアン戦!
今回からボス戦に入ります!
それでは、本作品をお楽しみください。
『これで調整終わりっと』
この工場で研究員をやっていた男からボスについての情報とボス部屋の鍵を貰った私たちは、件のボス部屋の前で最後の休憩を取っていた。
私はパイルバンカーの最終調整だね。ちょっと付け加えたい機能もあったから、ついでに追加しちゃった。
パイルももう少し数を作りたかったからみんなに断りを入れて五個ほど追加で作らせてもらった。これだけあれば足りる……と思うんだけどね。
最悪、戦闘中に作ることになるかも。
携帯鍛冶キットはセーフティーエリアでしか使えないけど、《パーツクリエイト》でなら作れるからね。多少の強度が足りなくても許容範囲内だと思うし。
そうならないために追加で作ったんだけどね。
『ごめーん! 私の方は準備終わったよ!』
「分かった。なら、私は点呼を取ってくるよ。全員揃ってたら行こうか」
『はいなー』
私は手を振ってヴィーンを見送る。さて、残りの時間でなにができるかな?
新しい武器を作るのは論外として……とりあえず各部の調整くらいはしておこうか。
みんなが揃うまでの時間で不調がないかを確認し終えた私は、各PTのリーダーが集まっているところへ移動する。ボス戦前の最終確認だね。
ちなみに、司会進行役としてヴィーンが共に参加してくれている。
「さて。ミオンも来たことだし、早速対マギアスタル・ガーディアン・ゴーレム……マギアスタル・ガーディアン作戦の確認をしようか」
『ま、作戦って言ってもそんなに難しいことはないよ。私が青龍のシールドを破壊した後にみんなで総攻撃をかける。これを何度も繰り返すって感じだね』
「青龍の攻撃方法についてはなにも分かっていないため、その場で臨機応変に対応してもらいたい」
『ふむ。予測できる攻撃方法としては……まぁ龍型と言うくらいですから、なんらかのブレス攻撃はあるんでしょうな。ゴーレムと言うことなら、ブレス攻撃に見立てたビーム攻撃と言ったところですかな』
『あとはどれだけの大きさかにもよるな。巨体での押し潰しなんかはそれだけでも厄介だぜ?』
『他に考えられる攻撃方法は、尻尾の薙ぎ払いかね。巨体での押し潰しも厄介だけど、広範囲に届く攻撃も厄介さね』
『私は無敵シールドが気になりますね。ギルマス、本当に大丈夫でしょうか?』
『ぶっつけ本番だから絶対に、とは言えないけど……自信はあるよ!』
『ギルマスが自信あるって言うなら相当だろうよ』
『私たちは指示に従って動くさ。好き勝手やって勝てる相手とも思えないしね』
『ありがとうございます。私も、精一杯頑張ります!』
打倒、青龍に向けて心を一つにする。巨大兵器との戦闘とか、考えただけでも燃えてくるね!
私が内心で闘志を燃やしていると、ヴィーンが手を挙げた。
「事前確認はこれくらいでいいかな。最後に一つだけ。ボスもこの工場のモンスターだ。だから、光属性のマギアサーベル、マギアライフルは効きにくいかもしれない。みんな、物理武器は持ってるかな?」
『大丈夫っすよ!』
『一回整備班のところに戻った時に調達は済ませてます!』
『うちは元々物理武器をメインに使ってたからね。問題ないさ』
どうやらみんなボス戦の準備は完了してるようだね。とりあえず私が一撃入れないことには始まらないから、少しだけプレッシャーを感じる。
……頑張らないと。
「じゃあミオン、早速開戦と行こうか」
『うん。みんなで勝とう!』
『『『『『『おー!』』』』』』
私たちはそれぞれのPTの元へと戻り、ボス部屋前の扉の前に集まった。
その扉はかなり大きく、恐らく大型のゴーレムなどが通れるように作ってあるのだろう。
その扉の端に小さな端末が置いてあった。私はインベントリから鍵を取り出し、その端末へと向かっていく。
端末にはスマホくらいの大きさのモニターと、鍵を差すための鍵穴、中に押し込めるようになっている固定された大型のレバーが取り付けてある。私は鍵穴に鍵を差し込み、左回りに捻った。
ゴゴゴ、とレバーを固定していた部品が収納され、モニターに『Push!』の文字が現れる。
『……っ、開けぇぇぇぇぇぇっ!』
深呼吸を一つして、力の限りレバーを押し込んだ。
するとピピッ、という音の後にモニターの表示が『Authentication Completed!』に変わり、押し込んだレバーが隔壁に閉ざされ、端末ごと床の中へと消えていく。
そこから光の線が通って行き、その線が扉に到達した瞬間、扉にいくつもの光の線が浮かび上がった。
その光が収まるのと同時に扉が左右に開いていく。
中は暗く、魔機人の目を以てしても見通すことはできなかった。進まないと見えないってことかな。
私はみんなを振り返り、頷く。
みんなは各々の得物を持って、頷き返してくれる。
さぁ、行こうか!
『これよりボス戦を開始する! 目標、マギアスタル・ガーディアン・ゴーレム! 青龍! 総員、突撃!』
『『『『『『『おぉーーーーーーー!』』』』』』』
暗闇をものともせずに私たちは駆ける。私は右腕の拡張パーツにENを流し、その形状を変化させていく。
マギユナイト・パイルバンカー……この戦いで最も重要な武装を展開した私は、インベントリから一つ目のスチール・パイルを取り出し、マギユナイト・パイルバンカーにセットした。
「それが?」
『うん。これなら、多分シールドを割れるはず』
「ボス部屋からはボスを倒すか全滅するかしか出る手段がない……頼むよ」
『任せて』
ヴィーンと短い会話をした後に、私はボス部屋の中心へ走る。このボス部屋に入った時から、そこになにかがいるのを感じていた。
ふと、周囲が光に溢れる。この部屋の明かりが付いたみたいだ。
私たちが目指す先にいたのは、まさに龍と形容すべき存在。
その全身が、青い……どちらかと言えば蒼い結晶で作られた煌めく鱗に覆われている。見たこともない……いや、もしかして、これって魔力結晶?
魔機人の動力源になっている魔力結晶炉の色は緑……翡翠色だったけど、用途によって色が変わったりするんだろうか?
うっすらと脈動するように明滅しているところを見ると、ただの飾りっていうわけじゃあなさそうね。
そして、見上げるほどの巨体。この部屋の大きさ自体が大きいというのもあるんだろうけど、見た感じ頭から尻尾の先まで大体50mくらいはあるんじゃないだろうか。そんな巨体がとぐろを巻くようにしてそこに鎮座している。
見たところ、腕や足といった部位はなさそうだ。今の姿を見てる限りだと、龍と言うよりも蛇の方が近そうだね。
もちろん、腕や足が格納されている可能性もある。なんて言ったってこいつは兵器だからね。
ゲームの仕様上モンスターとして扱われているけど、大昔に作られた立派な兵器。
はてさて、どんな攻撃をしてくるのやら。怖い以上に楽しみだね!
緑色に光っていた双眸が赤へと色を変える。侵入してきた私たちを、敵だと判断したようだ。
瞬間、青龍の周りに薄い膜のようなものが張られる。あれがシールドかな?
「来るぞ!」
『みんな、気を付けて……っていきなりぃ!?』
私たちが戦闘態勢に入ったのと同時に青龍の顎が開かれ、そこから一つの大きな砲塔が迫り出してくる。青龍はその砲塔にエネルギーを貯めているようだ。
『初っ端からブレス攻撃ってわけか!』
『ブレスって言うか、あれ絶対にビームですよね!?』
『ハ〇メガ砲か!』
『もう、アニメじゃないんだよ! 全機散開! 絶対に青龍の射線上に入らないでね!』
『こりゃ、慌ただしい開幕戦じゃねぇか!』
『……ねぇねぇ、今のうちに攻撃するのは?』
『君ねぇ。青龍には属性攻撃を無効化するシールドがあるのを忘れたのかい?』
『でも、シールド張りっぱなしじゃ攻撃できないんじゃない?』
『ふむ。それは一理あるが……』
「そこ! さっさと避ける!」
ヴィーンが注意してその場にとどまっていた二人のプレイヤーを射線上から退かせる。その間にも青龍はチャージを続け、チャージが完了したその直後に、ぐるん、と頭ごと砲塔を私たちの方へと向けた。私たちがロックされてる!?
『ヴィーン!』
「すまないけど、頼むよ!」
私はヴィーンを抱えてウィングを起動させる。スラスターを噴き上げた私は、青龍のビームから逃れるために空中へと躍り出た。これで避けられるか……?
そんな思いも虚しく、青龍はそれでも私を狙い、その砲塔から極太のビームを発射した。中からの攻撃は通す都合のいいシールドですか!
『私たちじゃなくて、まさかの私個人狙いぃぃぃぃぃっ!?』
「ぐっ……これは、判断を誤ったかもしれないね……!」
『絶対に、当たってやるものかよぉぉぉぉぉっ!』
私は空中を、味方に被害が及ばない程度に縦横無尽に飛び回り、追尾してくる極太のビームを避けていく。その間にも、私は青龍の姿を確認していた。
……背中にある大きな魔力結晶の棘みたいなのが、シールド発生装置かな。その棘以外にそれっぽいものがなかったし。あの位置を攻撃するのは大変そうだなぁ……。
しばらく飛び回っていると、チャージしていたエネルギーが切れたのか、私を追尾していたビームが消え去った。安全を確認した後に、ヴィーンを地上に降ろすために高度を下げる。
『ふぅ、なんとか避け切った……』
「私としては、渡らなくてよかった橋を渡った気分だよ……」
『いやまぁ、まさか私がピンポイントで狙われるとは思ってなくて』
「それを言ってしまえば、私もそうなんだが……さて。先手は取られてしまったけど、大丈夫かい?」
『もちろん! こいつの威力、見せてやりますよ!』
そう言って私はマギユナイト・パイルバンカー……パイルバンカーをヴィーンに掲げる。趣味で作ったこれが役に立つ時が来るとはって感じだけど、まずは効くのかどうかを試さないとね。
青龍ら砲塔を口内に収納し、ジッと私を睨みつけてくる。自分の防御を貫いてくる可能性があるって分かってるのかな?
さて、じゃあ次は、私のターンと行きますか!
セットしたパイルを力いっぱい引き、最大の威力が出るように調節する。目標、青龍!
『まずは一発、ぶん殴る!』
私はローラーを展開し、地面を滑るように移動する。青龍の首元からいくつかの砲身が現れて、私をロックした。
そこから極細のビームが放たれるものの、私はそれをローラーの高速移動とスラスターでの空中の機動でなんとか回避する。首元だとシールドの内部だろうから、潰したくても潰せないしね!
『パァァァァァイル、ブレェェェェェイク!』
青龍の懐に潜り込んだ私はパイルバンカーを青龍を守る薄い膜のようなシールドにしっかりと当て、右手に握りしめたトリガーを引く。
バゴォン! という爆音と共にセットされたパイルが発射され、青龍を守るシールドにぶち当たる。そのまま勢いを止めることなく突き進んだパイルはバリィン! とシールドを粉砕し、深々と青龍の身体を貫いた。
『全機、攻撃開始!』
声にならない叫びを上げながらのたうち回る青龍。私は次のパイルをセットしつつ、みんなに攻撃開始の指示を出した。
さ、青龍攻略と行きますか!
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




