第三十二話 属性鉱石とマギユナイトウェポン
今回は生産回になります。
それでは本作品をお楽しみください。
『よーし、作っちゃうぞー!』
翌日。学校から帰った私はすぐさまフリファンにログインし、ミントランドからそう離れてない草原にガレージを展開した。その中に入り、昨日手に入れた素材を取り出していく。
くふふ、この属性鉱石を見てるだけで色々なインスピレーションが湧いてきますなぁ。他にも使えそうな素材をピックアップしてるから、これでなにを作るか考えよう。
属性鉱石を使うのは初めてだから、とりあえず重力鉱石は後回し。それ以外ので慣れてからだね。
と言うことで、なにか武器を作ろうとは思うんだけど……。
『作りたいものが多すぎて絞りきれないね』
なんとなく、これらを使えばこんなのができるなーって言うのは分かるんだけど、私が作りたいものと若干違ってたりするんだよね。
まぁ、物は試しと一番ポピュラーであろう火鉱石を手に取る。
……よし、まずはこれで作るとしよう。
一旦手に取った火鉱石を置き、スチールゴーレムからドロップした幾つかの鋼インゴットにEN……魔力を流し込みながら、炉に火を入れる。
十分に熱せられた炉に、魔力を込めた鋼インゴットを入れていく。ドロドロに溶けたそれを目的の形の型に流し込み、ある程度固まるのを待つ。
それを再び炉に戻し、それが熱で赤くなったと同時に取り出して鎚で叩いていく。
本当の鍛冶作業がどんな感じかは知らないけど、このゲームではこんな感じだ。あとはリズムよく叩いていって、再び炉に戻して、以下繰り返し。
なにか達成度のようなものや、ゲージのようなものが出るでもなく、感覚……って言っていいのかはあれだけど、作業をしている本人にしか分からないなにかがあって、それを満たすと作業は完了となる。
その感覚って言うのがよく分からなくて曲者だ。鍛冶を始めた頃はその感覚っていうのが分からなくて、よく失敗したもんだよ。
今はある程度感覚を掴めているのか、失敗して作っていたものがひび割れたり使い物にならなかったり、っていうのはそんなにない。たまにはあるんだけどね。
とまあそんな感じで鎚を振り続け、私は自身の腕ほどの長さの"杭"を数本作り出した。察しのいい人なら、なにを作るつもりかはもう分かるんじゃないかな?
完成した杭にENを流した後、素材庫へと放り込む。《パーツクリエイト》でも作れなくはないけど、私の作り方だと強度が心配だからね。使い捨てとは言え、少しでも丈夫に作らないと!
続いて私はその杭を打ち出すための大元の部分に着手する。まずはいつもの八八式魔導石……ではなく、一つランクの高い八九式魔導石を取り出した。へへへ、そろそろこれに挑戦してもいい頃合いでしょう!
八八式魔導石と同じように全体を研磨していき、保有魔力が損なわれない限界まで小さく研磨していく。この作業が地味にキツイんだよねー。
研磨した八八式よりも少し大きいくらいの大きさが八九式の限界らしい。それを素材庫に放り込んでマギアコンデンサ……ではなく、マギアタンクを作り始める。
外付けのENタンク……いわゆるプロペラントタンクってやつを作ろうと思ってね。これは試作型になるから、そこまでの大きさにはしないつもりだ。
魔力を溜め込んでおける宝石をちょうどいい形まで研磨し、それをいくつか並べてタンク状に加工した鉄で挟み込んでいく。
基本的に使い捨て前提のタンクだから、貴重な素材は一切使っていない。宝石って言っても、端金で買えるような安い宝石だ。
それをとりあえず十個ほど作成して、私の身体に繋げておく。こうすることで、自動供給による余剰ENを勝手にこのマギアタンクへチャージしてくれるわけだ。もちろん作業の邪魔にならないように長いケーブルを使っている。
『じゃ、本体作成と行きますか!』
まだまだ余っているアーティファクト・インゴットとアイアンゴーレムのドロップ品である質のいい鉄インゴットにENを込めて、《パーツクリエイト》を起動させる。
その中でそれらを細かいパーツに分けていき、ENを込めながら理想の形へと組み立てていく。
ある程度の形が完成したら一度作業を止めて、火鉱石を手に取った。属性鉱石の使い方は他の鉱石と違いはない。なので、それらを必要な数炉に突っ込み、形を整えていく。
私が作ろうとしているのは杭を打ち出すための、拳銃で言う撃鉄のようなもので、これに衝撃を加えて火鉱石の特徴である火属性の爆発を起こし、その勢いで杭を打ち出すという形を考えている。
これは使い捨てではないようで、一度作ってしまえば壊れるまで何度でも使えるようだ。メンテナンスをすればかなりの時間使えるみたいだね。
というわけで必要なパーツを作り終えた私は、《パーツクリエイト》で仕上げに入る。さっき作ったばかりの撃鉄もどきを本体にセットし、持ち手を付けていく。
腕に固定できるようにジョイントも追加し、簡単に杭を打てるように持ち手にはトリガーを新しく付け足した。これで引き金を引くだけで巨大な杭が敵に突き刺さるわけだね。
さらに私は本体を限りなく小さく畳めるようにして、使用する際にENを流すことで変形し、杭を装填できるようにする形にした。無駄な変形? かっこよくて無駄のある変形は大好きさ!
さらにマギアタンクを取り付けるコネクタを作り、最後に全体的にENを流して完成だ。
[武装・兵器]マギユナイト・パイルバンカー レア度:EX 品質:A− 魔力伝導率:A−
スキル:《杭打ち》《変形》《防御貫通》
《杭打ち》:特定の形の杭を打ち出す。硬い相手ほど与えるダメージが増える。ダメージは杭の強さに比例する。
《防御貫通》:相手の防御力を無視してダメージを与えられる。
[武装・兵器]スチール・パイル レア度:EX 品質:B
基本ダメージ:1000
いやー、我ながらいい仕事をしたもんだ。とりあえず具合を確かめるために右腕にマギユナイト・パイルバンカーをセットする。畳んである状態だと、小盾にも見えなくもない。こんなにごつい小盾はないと思うけどね。
ENを込めて武装を展開する。そこにスチール・パイルをセット。
重さとしては、かなりの重量だね。かなり右にバランスが持っていかれるな。
このバランスに慣れるためにパイルをセットしたままガレージを歩き回り、ある程度バランスに慣れたところで右の拳を突き出す。
本来はこのタイミングでトリガーを引き、セットされたパイルが相手に突き刺さる、と。まぁ試運転はこんなものでいいかな。
固定されたパイルを外し、インベントリへ戻す。その後はマギユナイト・パイルバンカーにENを流し、元の形へと戻した。
さて、次はなにを作ろうかな。とりあえず今日と明日は生産する日って決めてあるから、もう少しなにかを作ってからご飯を食べたい。幸いまだ夕飯までは時間があるからね。
充電ならぬ充魔の終わったマギアタンクを全てインベントリの中へとしまい込み、代わりにマギアタンクを充魔していたマギアライフルを手に取る。
……よし、君に決めた!
私はマギアライフルを《パーツクリエイト》に戻し、それをパーツ毎に分解していく。
銃身の方から順に分解していき、三分の一辺りまでを分解したところで一度ストップする。そこに新しく別のパーツを作り取り付けていく。
新しい素材で作り直した品質の高い魔力収束石を既存のものと入れ替え、もう一度同じように組み立てる。
素材の質が上がり若干威力を増したマギアライフルだけど、本命はこれじゃない。私は第一回のイベントでも使った独特な形状のバレルをもう一度作り上げることにした。
でも、前のままのレシピだと前回の二の舞で本体が壊れかねないので、ここでは魔鉄鉱石をインゴット化させた魔鉄インゴットと、土鉱石を使用している。これらは素材として使用することで完成品の耐久値や消費魔力を抑えてくれる利点があるので、これらをメインに使用してバレルを作成した。
そのバレルを四分割し、ENを通すことで自動的に展開、マギスティアライフルの状態になるように調整する。いちいちENを流すのも面倒だと思ったのでボタンをワンタッチするだけで自動的に展開できるようにした。また、側面からは支えるための持ち手が同時に現れるように作成。
こうして新たなマギアライフル、その名もマギユナイト・ライフルが完成した!
[武装・兵器]マギユナイト・ライフル レア度:EX 品質:A− 魔力伝導率:A
固定ダメージ:4500 最大チャージ:9000 バレル展開時:6000 最大チャージ:? マガジン内消費魔力:1200 バレル展開時:2000 射程:200m バレル展開時:400m
スキル:《魔力自動吸収》《光属性》《反動・中》《変形》《チャージ》
《チャージ》:魔力を貯めることで次の攻撃のダメージを上げる。上限以上にチャージすると反動ダメージが増え、確率で壊れる。
うーん、これは、兵器。
元々のマギアライフルからかなりパワーアップしてるね。
しかしビーム兵器の運命か、光属性の耐性がある敵が出てくると途端にキツくなっちゃうかも?
一応対抗策として(という建前で)マギユナイト・パイルバンカーを作ってみたけど、普通に実剣とか作ってもいいかもね。
『ん、もういい時間か』
時間を確認すれば、そろそろログアウトの時間だ。明日も学校があるし、夕飯と宿題を済ませてさっさと寝るとしますか。
もう少し色々作りたいけど、それは明日に回すことにしよう。
ある程度の満足感を味わいながら、私はログアウトを選択し、現実の世界へと帰還した。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




