第三話 いざ、ダンジョンへ
本家スパロボにアルドノア・ゼロが来る日を待ってます。
あれから私は、ゲーム内で六時間ほどモンスターをサーチ&デストロイしていた。最早ゴブリンなんて鼻歌交じりに倒すことができる。おかげでスキルレベルの方もかなり上昇した。ま、他のプレイヤーには出会えなかったけどね。
そうそう。確認したところ、腕部パーツに追加された情報っていうのは以下の通りだった。
[パーツ・腕部]錆び朽ちた腕部・右(左) レア度:EX
ATK▽ DEF▽ MDEF× キャパシティ:6/10(6/10)
長い年月を経て錆び朽ちてしまった腕部。かつての優美な姿とはかけ離れている。仕込まれたギミックは辛うじて作動するもののその動きはぎこちなく、各種耐性も軒並み最低である。
新しくキャパシティという項目が増えていた。これは恐らく、腕部パーツに格納している剣と刀のことだろう。一つにつき基本値が2増えるようだ。大きさによって値も変わり、このサイズの武装だと一つにつき6のキャパシティを使うらしい。あんまり大きな武装は入れられないって事だね。
以下は六時間のスキル上げの成果となる。いやー、ついつい倒しすぎてしまった。
[所持スキル]
《魔機人》Lv.12(11up↑) 《武装》Lv.15(14up↑) 《パーツクリエイト》Lv.-- 《自動修復》Lv8(7up↑) 《自動供給》Lv.5(4up↑) 《刀剣》Lv.14 (13up↑)《鑑定》Lv.-- 《感知》Lv.6(5up↑) 《直感》Lv.10(9up↑) 《敏捷強化》Lv.9(8up↑)
残りSP24
戦ってて思ったのは、《敏捷強化》の恩恵がとても助かったということ。錆び朽ちたシリーズによってあらゆるステータスがダウンしている中モンスターと対等以上に動けたのは、どう考えてもこのスキルのおかげだった。単にAGIを上げるだけじゃなく、素早い動きをしようとした時にその動き自体に補正が入るみたい。それで相手の一撃を躱せた場面も少なくない。いいパッシブスキルを取ったものよ。
それに、《感知》スキルも仕事をしてくれた。スキルレベルが上がるにつれて、モンスターの大まかな位置がわかるようになったからだ。感知できる範囲はそこまで広くないものの、モンスターによる不意打ちは避けられている。
《直感》スキルはこちらにとって危ない攻撃をしてくる直前になんらかの形で教えてくれるスキルだった。私の場合は悪寒かな? 背筋がゾクッとする感じ。その感覚がしたらとりあえず左右に思いっきり回避すれば大丈夫。《感知》スキルと併せて不意打ち即死を防ぐことができる。非常に優秀なスキルたちだね。
未だに身体の可動に違和感は残るけど、《敏捷強化》スキルのおかげでだいぶ動きに慣れてきた感じはする。視界の方も見えにくさは変わらないけど、慣れてくれば案外どうにかなるものだ。
六時間も狩りをしていればドロップアイテムはかなり集まる。ちなみにこの森に生息しているモンスターは最初に戦ったゴブリンと木でできた狼、機械仕掛けの猿、色が派手派手しい蛇の四種類。名前はそれぞれゴブリン、ウッドウルフ、マシナリーエイプ、ポイズンスネークだ。ゴブリンとポイズンスネークは大したことないが、他の二匹は厄介だった。
ウッドウルフは身体が木で構成されているため突きをあまり通さなかった(こちらの装備が貧弱とも言える)。ウッドウルフを倒すためには錆び朽ちた剣で鋸のようにギーコギーコと切っていくしかない。ある意味、この中だと一番戦いたくない相手だった。再生能力を持ってないことが救いね。
マシナリーエイプは外面はただの猿なのだが中身は機械仕掛け。剣で切りつけた際に皮が破けてその中身を露出させた。何故かウッドウルフよりも柔らかかったので普通に突きと斬撃で倒せたのはよかった。
ポイズンスネークは雑魚ね。機械の身体には毒なんて効かないから一方的な蹂躙よ。ある意味ゴブリンよりやりやすい。ま、毒に腐食属性が付与されていたら分からなかったけど。魔機人以外のプレイヤーだと結構キツい相手かもしれない。
……ま、ドロップアイテムはレア度Cのお世辞にも使えそうなアイテムじゃない。それに、集まったところで街には行けないし、売る相手もいないんだけどね。
『あ、そうだ。《パーツクリエイト》!』
私がスキルの使用を宣言すると、目の前にいくつかのホロウィンドウが表示される。見れば、いくつかのウィンドウには名前がついているのがわかった。
一つは素材庫。どうやらここに《パーツクリエイト》で使用する素材アイテムを入れるみたい。
もう一つは生成。素材庫に入れた素材アイテムをここでパーツに変えていくらしい。操作パネルやホロキーボードが表示される。くふふ、オリジナルパーツ作成、胸が高鳴ります!
物は試しとインベントリを開き適当な素材アイテムを一つ《パーツクリエイト》の素材庫へと移す。しかしその瞬間素材アイテムは弾かれ、インベントリの中へと戻っていった。ウィンドウには、素材の条件を満たしていません、と表示されている。
それなら、と手持ちの素材を片っ端から突っ込んでいったがどれも弾かれる結果となった。これにはさすがの私もむむむと唸る。なにがいけないんだろうか。素材の条件っていうのがなに一つ分からないから手の打ちようもない。
うんうん言いながら森を歩いていると、ふと気になるものを見つけた。《パーツクリエイト》を閉じてそちらを見る。
それは、何の変哲もない穴だった。森の動物かモンスターが掘った穴だろうか。私はそう考えて穴を無視して歩き始める。が――
『んー、でも気になるなぁ』
気になる理由としては、森の中にぽつん、と穴が空いていること。動物やモンスターが掘ったにしては綺麗すぎる形をしていること。この二つが挙げられる。あの穴、なにかありそうね。もしかして、ダンジョンだったり?
『ま、確認するだけならタダだし』
私は進路を変えてその穴へと近づいていく。近づくにつれて、私の中で疑惑が確信に変わった。それは、穴の奥に青く光る膜のようなものが張られていたからだ。これは、間違いない!
『もしかしなくても本当にダンジョンさんじゃないですか!?』
ダンジョン。RPGではお馴染みの場所だろう。プレイヤーを襲うモンスターが跋扈し、巧みに宝箱が隠されており、最奥ではボスモンスターが宝物を守っている。このフリファンでも例に漏れずダンジョンは存在し、現在判明しているダンジョンボスが落とすアイテムはどれもが一級品の素材となる。それだけダンジョンの踏破っていうのは難しいんだけどね。
しかも、目の前にあるダンジョンはベータテスト時代には存在していないダンジョン。つまりは、製品版から追加された新規のダンジョンだ。興奮せずにはいられない。
未発見のダンジョンは中の様子が分からないため危険だが、その分の見返りをくれることだろう。つまり、私はこのダンジョンに釘付けになっていたわけだよ。
ダンジョンの近くにガレージを置き、リスポーン地点として設定する。これでダンジョンで死に戻ってもここで生き返るわけだ。
ガレージの倉庫へ要らない素材アイテムを預けて、装備を確認する。と言っても確認するほどの装備はない。剣と刀だけだからなぁ。しかも錆び朽ちてるやつ。
ま、とりあえずダンジョンに潜りますか。幸い、時間はまだまだある。必ず私が、このダンジョンを踏破してみせる!
『ミオン、行きまーす!』
そして意気揚々とダンジョンへと潜っていった私だったが――
『あふんっ』
――見事に死に戻っていました。
ダンジョン探索は最後まで順調だった。というのも、全くモンスターが出てこなかったからだ。
内部は近未来チックな装いで、どちらかと言えば私のガレージの内部によく似ている。壁にはよくわからない機械類が取り付けられていて、明かりとして不思議な光を灯したランプが等間隔で設置されていた。
どんなモンスターが出てくるのかワクワクしながら進んでいたけどモンスターには一向に出会わず、宝箱のたの字もないときた。しかもダンジョンはほぼ直線で、最奥に扉が一つあるのみ。その扉も重厚感溢れる巨大な扉で、一目でボス部屋だとわかる。
程なくして最奥にたどり着いた私は重そうな扉を力を入れて両手で押した。見た目ほど重くないのかあまり力を込めなくても開いたみたいで、力を入れて押した私はその場でつんのめってしまう。うう、見掛け倒しか……。
巨大な門を通ってきた私が見たのは、このダンジョンのボスと思われるモンスター。
見た目は私とそう変わりない、錆び付いている外見の人型ロボット。装甲の端々はボロボロになっているがもとの金属の色があちらこちらに見えており、私の装備ほど朽ちているわけではなさそうだ。さらに近くに片手剣(ここから見える大きさ的には)が突き刺さっており、恐らくそれを武器にして戦うボスなんだろう。
私が周囲を警戒しながら部屋の中央まで入った瞬間、目の前のロボットの瞳に光が宿り、床に突き刺さった剣を引き抜き私に襲いかかってきた。
戦闘開始……いきなりのご挨拶ね!
『――速いっ!?』
私はすぐさま剣と刀の刀身を出現させ、ロボットの一撃を受け止める。その頭上には、確かにHPバーが三本存在していた。
フリファンのモンスターは基本的にHPゲージが見えない。相手の反応や動き方でどれだけHPが減っているかを見るわけだ。私も六時間の狩りでだいぶ相手のHPの減ってからの動きが分かってきたと思っている。
基本的に、と言ったのは例外があって、それが目の前のボスモンスターだ。
ボスモンスター、または単にボスと呼ばれるモンスターにはHPゲージが存在する。その本数はモンスターによってまちまちで、一本しかないやつもいれば十本もあるモンスターもいたという。
そして目の前のロボットの頭上にはHPゲージが三本。さて、勝てるかな?
私は力任せにロボットの一撃を振り払い、右の剣で渾身の突きをお見舞する。私の一撃はロボットの装甲を削り、はっきりとしたダメージを与える。HPバーの減り方からして、バー一本に対して大体1%くらいのダメージは与えられたようだ。
私の攻撃を受けたロボットはお返しと言わんばかりに鋭い斬撃を放つ。辛うじてそれを避けるが、ロボットは連続で高速の斬撃を放ってくる。当然それを避け続けなきゃいけないわけで、このままだとジリ貧だ。
ロボットは錆び付いた見た目からは想像もできない膂力と速度で剣を振り続ける。私はそれを剣や刀を使いながら避け続けた。
『ちっ!』
そして、この戦いも終わりの時がやってきた。私がロボットの攻撃を受け損なったためだ。ガリガリと減っていくHP。さすがに脆すぎる、とは思ったものの自分が装備しているパーツの性能を思い出して舌打ちする。敵は、そんな私の隙を逃さなかった。
連撃に次ぐ連撃。それをいなしそこねた私に繰り出されるアーツ。振り上げられた刀身が輝いているため、アーツを使ったのだと見当をつけた。そのアーツは私のHPを残らず刈り取っていき、死に戻りとなったのだ。
ガレージの入口で仰向けに倒れる。完膚なきまでに負けたぁ……同じ錆び付きロボットとは思えない動きだったな。
今の敗戦でどれだけスキルレベルが上がったか確認すると、一回の戦闘で得られる経験値としてはかなり多いことがわかった。戦闘に勝たなくても経験値が入ることが分かったのはありがたいね。
んー、これからしばらくはあのロボットと戦ってようかな。この森のモンスターだともうレベルが上がりにくくなってきたし、この錆び朽ちた身体じゃあ始まりの街にも行きたくない。かっこよく、まではいかないけど、もう少しちゃんとした格好をして街に行きたい。そのためには、この錆び朽ちたシリーズをどうにかしなくては。
『ま、再戦は休憩してからかな』
私はガレージの中へと帰り、安全を確認した後にログアウトした。
[所持スキル]
《魔機人》Lv.15(3up↑) 《武装》Lv.18(3up↑) 《パーツクリエイト》Lv.-- 《自動修復》Lv13(5up↑) 《自動供給》Lv.7(2up↑) 《刀剣》Lv.19 (4up↑)《鑑定》Lv.-- 《感知》Lv.8(2up↑) 《直感》Lv.14(4up↑) 《敏捷強化》Lv.14(5up↑)
残りSP26
ここまで読んでくださりありがとうございます。
どうぞ、続きをお楽しみください。




