第三十一話 探せ、未知の素材アイテム!
今回は少し長めのお話です。
それでは本作品をお楽しみください。
『てぇぇい!』
私は振り下ろされた一撃をひらりと避け、カウンター気味にマギアサーベルを振り抜く。振り下ろされた腕を切り落とされたゴーレムがバランスを崩し、その場に倒れ込んだ。
隙を逃さずに接近し、その大きな身体を切り刻んでいく。目の前のゴーレムは私に攻撃を当てられることなくその全身を光の粒子に変えた。
『んー、やっぱ鳥よりゴーレムだね!』
『はい! 素材がザックザクです!』
「本来ならこれもかなり強いモンスターのはずなんだけどね……アイアンゴーレムをスパッと切ってしまう二人を見てると、そう大したことがないんじゃないかと錯覚してしまいそうだ」
『大丈夫。僕もそう思うから』
私たちがゴールデンマウンテンの中へと入ってからおよそ一時間。現れるモンスターは、動く岩石系のモンスターや、さっき倒したような金属系のゴーレムばかり。外の鳥地獄が嘘のように素材が手に入るね。もう、最高!
アイアンゴーレムのドロップ素材である鉄インゴットは、散華の森になぜかあった採掘ポイントから取れる鉄鉱石を製錬したものよりも品質がいい。これを集めるだけでも、かなりの収入になるね。
そしてなにより、ゴーレム系のレアドロップにはゴーレムコアが存在する! このゴーレムコアを使えば、魔力兵器のエネルギー効率がよくなったり、遠隔で指示を出せる小型のゴーレムを作ったりできるらしい!
別のアイアンゴーレムを倒した時に出たゴーレムコアを鑑定したら、《パーツクリエイト》を使えばそういうこともできるよーみたいな感じで書いてあったんだよね。
カノンとクラリスには書いてあって、ヴィーンの鑑定ではなかったってことを考えると、対応するスキルを持ってないと出てこない情報なのかもしれない。
とりあえずギルドチャットでこのことはすぐに伝えたので、ギルドメンバーもゴーレムコアをゲットするためにこの山に来ると思う。レアドロップだから、数倒さないと出ないと思うけどね。
私的には、この遠隔で指示を出せる小型のゴーレムに可能性を感じてるんだ。もしこのゴーレムの形が人型固定じゃなくていいなら、もしかしたらファン〇ルやド〇グーン、ビ〇ト的な武装を作れるかもしれない。それが作れれば、理想のロボットにグッと近付くね!
「いやしかし、本当に君たちは固くて動きの遅い相手が得意だね。アイアンゴーレムなんか、今の私だと攻撃力不足で倒せなさそうだ」
『光属性の耐性を持ったモンスターが出てこない限りは、魔力兵器でなんとかなっちゃうからねぇ』
『でも、さすがに敵も強くなってきましたね。結構耐えてくる相手が増えました』
『それでも、楽に倒せることに変わりはないけどね』
『あと、坑道? の高さが結構あるから戦うのにも支障がないのがいいね』
ちなみに、坑道と言っても明かりがついて舗装されているような道ではなく、本当にただ穴を掘りましたと言わんばかりの、言わば天然のトンネルのようなものだ。
実際は明かりがない分暗いんだけど、私たち魔機人は暗くても昼間のように見えるし、ヴィーンには《暗視》スキルがあるから問題はない。
つまりこの環境は私たちにとって苦にはならないってことだね。
「ゴーレムが基本的に大きいものばかりだから、それに合わせてるんだろうね」
『じゃあモンスターも倒したし、早速採掘タイムに入ろー!』
ゴールデンマウンテンの中にはランダムで発生する採掘ポイントがいくつもあるらしく、今私たちがいるところにもいくつかの採掘ポイントが存在していた。ちょうど採掘ポイントを見つけたタイミングでアイアンゴーレムに襲われちゃったのでそのまま倒したって感じだね。
『鉄鉱石が多いですね』
『あとはチラホラ上質な鉄鉱石が……』
『おろ、魔鉄鉱石だ』
「ん、新素材か。どれどれ」
[素材・アイテム]魔鉄鉱石 レア度:R 品質:C+
魔力のこもった鉄鉱石。精錬した魔鉄インゴットで作られた装備品は、通常の鉄インゴットで作られた装備品よりも強く、ハンターの中では魔鉄製の武器を持っているだけで一目置かれるほど。
《パーツクリエイト》を使用して使った場合、耐久値が上がり完成品に《消費魔力減少・小》がつく。
「ふむ」
『消費魔力減少がつくのは嬉しいね。しかも、耐久値も上がるみたい』
『もう少し奥に進めば、もっと魔鉄鉱石を取れるでしょうか……』
『これはほしいね。うん、ほしい』
『インベントリにはまだ余裕があるから、ログアウト前までにひたすら掘っていこう!』
『賛成です!』
「やれやれ……とりあえず、アイアンゴーレムが来てるからそれを倒してからだね」
『ゴーレムコア!』
パパっとアイアンゴーレムを片付けた私たちは、さらなる鉱石を求めてゴールデンマウンテンの奥へと向かう。奥って言っても、外から見た感じだとまだまだ外縁部って感じがするけどね。本当に大きかったから。
幾度かの戦闘をこなし、次のランダム採掘ポイントを発見した。
『ここ掘れワンワン!』
『魔鉄鉱石出ました!』
『こっちも出たよ』
『うーん、こっちは鉄鉱石だけだね……』
「ふふ、物欲センサーに引っかかったのはミオンだけかな」
『ぐぬぬ』
次こそは……次こそは魔鉄鉱石を掘り当ててやるぞ!
と意気込んだのはいいものの、二人はどんどん魔鉄鉱石を掘り当てていると言うのに、私は鉄鉱石ばかり。さすがに仕事しすぎですよ物欲センサーさん!
小さくため息をついて、気持ちを切り替える。こう言うのはね、最後の最後に運が集束するものなのよ!
「時間的にはそろそろ最後の採掘になるかな」
『えっ、もうそんな時間?』
『気付きませんでした……』
『僕も気付かなかったな……』
「三人とも熱中してたからね。次のランダム採掘ポイントを見つけたら、そこをラストにしよう」
『はーい』
ゴーレムや岩石系のモンスターの襲撃を警戒しつつ、先へと進む。ゴーレム系はともかく、岩石系のはステルスがかかってて見つけにくいやつがいるんだよね。知覚系のスキルをもう少し鍛えた方がいいかも。
私たちの中では一番知覚系のスキルが高いヴィーンが、珍しく焦ったような声を出した。
「これは……ゴーレムの群れだね」
『群れ!?』
『ゴーレムって群れるものなんですか!?』
『さすがファンタジー……』
『感心してる場合じゃないって! 一体ならともかく、群れって言うほど大勢で来られたら厄介だよ』
「少し待って……うん、数は八体。真っ直ぐこちらへ向かって来ているね」
『仕方ないか。ここで迎え撃つよ! カノン、マギアライフルを用意しといて!』
『撃つのかい?』
『八体もいるなら、壁や天井に当たる前に当てられるでしょ!』
『それもそうだね!』
カノンはマギアサーベルからマギアライフルへと持ち変える。二丁取り出さないところを見ると、しっかりと狙って確実に当てることを優先したらしい。
私はマギアサーベルを二振りと、ツインテールの隠し腕から二振りのマギアサーベルを構える。あと二つ腕があったら阿修羅みたいだね。
クラリスは右手にマギアサーベル、左手にマギアダガーを構えて臨戦態勢だ。ローラーも下ろしており、敵が来るのを今か今かと待ち受けている。
ヴィーンは後方で援護攻撃の準備をしている。通常の矢だと刺さりがよくないので、親方謹製の無属性の魔法攻撃扱いの矢を放てる「OC001ーアロー」を構えていた。ちなみにこの型番のOCの意味はOyaktaCreateらしいよ。親方のネーミングセンス……っ!
マギアサーベルとかマギアライフルにも型番とか付けようと思えば付けられるけど……いまさらな感じがするね。
「……来る!」
『先制攻撃、行くぜぇ!』
ヴィーンの言葉の後に現れたアイアンゴーレムに向けてマギアライフルを放つカノン。その一撃は綺麗に胴体に当たり、確実なダメージを与えた。
やってきたのはアイアンゴーレムが三体、見たことのないゴーレムが五体だね。その内の三体は同じ造りのゴーレムで、残りの二体がそれぞれ違う感じだ。
まだ距離が離れているので、カノンがマギアライフルでHPを削っている最中に《遠視》スキルの後に《鑑定》スキルを使う。
[モンスター・ゴーレム]スチールゴーレム
鋼で作られたゴーレム。アイアンゴーレムよりも高いHP、攻撃力、防御力を持つ。並大抵の武器では傷をつけることすらできない。
[モンスター・ゴーレム]ガーディアンゴーレム
なにかを守るために作られたゴーレム。ガーディアンゴーレムが守るものの近くに寄ると、自動的に周りのゴーレム引き寄せて対象の殲滅に向かう。
[モンスター・ゴーレム]グラビティゴーレム
重力属性の属性鉱石で作られたゴーレム。自身の攻撃の際に重力を強めて威力を上げたり、攻撃を受ける前に相手に不可視の攻撃をして動きを止めるなど一筋縄ではいかないゴーレム。
あの三体はスチールゴーレム。んで、残りがガーディアンゴーレムとグラビティゴーレムか。
……ん、ちょっと待って?
この一文……重力属性の属性鉱石?
お、おおおおお!?
これは、来たかもしれない。
重力属性と言えば、ロボットネタで定番! 空を飛んだり、ブラックホールで相手を押し潰したり……この重力属性の属性鉱石、重力鉱石を手に入れることができれば、もしかしたら空を飛べるかもしれないし、色々と作れるかもしれない!
これは、やるしかないね!
『私は奥の黒いゴーレムをやるよ! アイツだけは、逃がすわけにはいかない!』
『なら私は隣の硬そうなゴーレムをやります!』
「となると、残りの六体は私たちが受け持つことになるけど?」
『大丈夫だ! ここにたどり着く頃には半分以下にしてやるよ!』
「OKだ。二人とも、行ってよし!」
『『了解!』』
私はスラスターを噴かせて一気にゴーレムとの距離を詰める。私の邪魔をしてこようとするアイアンゴーレムの腕をサーベルで切り落とし、その身体を蹴ってさらに加速させた。
蹴られたことでよろめいたゴーレムは、もちろんカノンの的に早変わりだ。
『せぇぇぇい!』
『……!』
『なっ!?』
私は飛び上がってグラビティゴーレムを切りつけようとするが、背中からなにかに押し潰されるような衝撃を受け、地面に墜落した。
……なるほど、これが重力属性を利用した攻撃ってわけね。とりあえず、高い位置への攻撃は許さないと。
なら、今度は地上から!
『そこっ!』
『……!』
『これもか……っ!』
地面を蹴って近付いた私は右のマギアサーベルを振り上げるも、振り下ろす瞬間になにかに防がれるような衝撃があり、その身体を傷付けることはできなかった。
本当に万能だね重力属性って! 今のがどうやって防がれたのかも分からないよ。
それでも、レアな素材を目の前にして諦めきれるほど行儀はよくないんですよ、私は!
咄嗟に左のマギアサーベルをグラビティゴーレム相手に投げ、私は右回りでグラビティゴーレムに近付く。
投げられたマギアサーベルはなにかによって弾かれたものの、私自身は懐に入り込むことができ、その身体にマギアサーベルの三連撃を叩き込む。
やっぱり、こいつは一箇所にしか重力属性の攻撃、または妨害ができないんだ。それさえ分かればこっちのものよ!
弾かれたマギアサーベルを拾い直して、再びグラビティゴーレム目掛けて投げる。それを弾いたグラビティゴーレムに近付き、再びマギアサーベルの三連撃をくらわせた。トドメとばかりにその身体を蹴りつけて重力攻撃の範囲から離脱すると、グラビティゴーレムはその身体を光の粒子に変えた。
マギアサーベルを拾いつつドロップアイテムを確認すると、ちゃんとほしかったものが入っていた。
[素材・アイテム]重力鉱石 レア度:R+ 品質:B-
重力属性の魔力を生み出している鉱石。これを精錬すれば、重力属性の付いた武器や防具を作れるだろう。
《パーツクリエイト》で作った場合、様々なものが作れるだろう。
いやっふぅぅぅぅぅ! やってやったぜーーーー!
しかもこの重力鉱石が三つも出た! さらにはゴーレムコアまで!
いやぁ、さっきまでの物欲センサーはこのためにあったんだね! やはり運は集束する!
私がドロップアイテムに狂喜乱舞してる間に、戦闘を終えた他のみんなは私の元に集まっていたようだ。私はニヤニヤした雰囲気を抑えきれずに重力鉱石を取り出してみんなに見せる!
『ドヤ!』
「おお。見たことのない鉱石だね」
『重力属性の鉱石……すごいです!』
『だからいの一番にあのゴーレムを倒しに行ったんだね』
「なるほどね」
ヴィーンとカノンから呆れたものを見る目で見られる。うっ、だって仕方ないじゃない! あの説明文を見たら誰でもほしくなるって!
「それはそうと、さっさとこの先に行ってみようじゃないか」
『なにかあるの?』
「ん、なに。ガーディアンゴーレムが守っていたものとやらが気になってね」
『……あ!』
そう言えば、鑑定した時になにか書いてあったような気がする。重力鉱石に全てを持ってかれてて覚えなかったね。
この先にはモンスターの気配もしないとのことで、ゆっくりと向かう。
クラリスが倒したガーディアンゴーレムからは、守護鉱石と呼ばれる、その鉱石を使用して作られた武具の防御力を増やす効果があるらしい。また、受けるダメージが確率で減る《守護》と呼ばれるスキルも付与できるそうだ。
カノンたちが倒してくれたスチールゴーレムからは鋼インゴットがドロップしたそうだ。鋼って鉄に炭素を混ぜて作るんだっけ? そう言えば、鋼鉱石なんて聞いたことないもんね。
お互いの戦利品を見せあったところで、一際大きな空洞が現れた。広さはガレージと同じくらいで、天井は見えないくらいに高い。
なにより、いたるところで採掘ポイントが光ってる。これは掘り掘りするしかないね!
『ツルハシ持ってえ〜んやこら〜っと』
『なんかジジくさいですね』
『ジジくさいって……』
『それには同感。って、お、属性鉱石だ』
『こっちもです』
『なんだって……って私もだ』
私たちが掘り当てたのは、それぞれ火鉱石、水鉱石、風鉱石という名前の属性鉱石だった。一発目からこれって運がいいね。
って、二回目も属性鉱石!?
ちょっと待って。もしかして、ガーディアンゴーレムが守ってたのって……。
『なるほど、属性鉱石の鉱脈を守ってたのか』
『うぉぉぉぉぉ! 掘る! 掘る! 掘る!』
「ミオンは随分とハッスルしてるね」
『掘ります! 掘ります! 掘ります!』
「……クラリスもか」
『どうやら、ここらの採掘ポイントからは属性鉱石が確定で掘れるみたいで』
「なるほど。それはそうなっても仕方ないね。そういうことならマップにここの位置を書き込んでギルドメンバーに共有するとしよう。きっと、みんな来るよ?」
『ああ、未来が見える……』
そんなこんなで三人で三十分ほど掘ってたら採掘ポイントの光が消えた。かなりの量の属性鉱石が手に入ったけど、重力鉱石はなかったね。
最終的に火鉱石、水鉱石、風鉱石、土鉱石、猛鉱石、守護鉱石、光鉱石、闇鉱石の八種類を採掘することができた。
採取ポイントが消えた後にヴィーンに《採掘》スキルを取ってもらったら、私たちが見えてたのと同じ場所に採掘ポイントが現れたので、ここの採掘ポイントはランダムじゃなくて固定だということが分かった。
これは魔機人以外でも使える鉱石だし、スキルを持ってれば誰でも採掘できるね。これを私たちだけで独占しても意味がないし、ここは知り合いには知らせておこうかな。とりあえずユージン兄さんにフレンドコール……フレンドコール……繋がった!
『どうしたの、ミオンちゃん』
『ゴールデンマウンテンで新種の鉱石を発見したんだけどさ』
『……おーけー、続けて?』
『属性鉱石っていう鉱石で――』
重力鉱石を除く八種類の属性鉱石の話をユージン兄さんに伝えた。重力鉱石を除いたのはここの採掘ポイントからは取れなかったからだね。
『なるほど。でも、俺に教えてよかったのかい?』
『んー、独占するって言っても、私たちだけが強くなっても意味ないし、どうせなら知り合いくらいには教えておこうかなって。この後にカンナヅキさんとナインさんにも教える予定だよ』
『はぁ。ま、そこがミオンちゃんのいいところかな。それで、その情報はいくらで買えばいいんだい?』
『お金は特に求めてないんだけど……貸しってことでいいかな?』
『随分と重い貸しだね……おーけー。なら、その情報はこっちから二人に伝えておくよ。もちろん、ミオンちゃんへの貸しの話もしとくから』
『そこは疑ってないよ』
『一応ね。で、この情報を俺に言ったってことは、この情報を広めるにしろ広めないにしろ、俺たちに決めてほしいってことでいいんだよね?』
『もちろん。その判断は私たちにはちょっと難しいからね』
『おーけー。そういうことならこちらで判断させてもらうよ』
『あ、もしかしたら複数体のゴーレムと戦うことになるかもしれないから気を付けてね。結構手強いやつ』
『魔機人で手強いか……気を付けるよ。それじゃ、ちゃんと夕飯までにはログアウトするんだよ』
『分かってるって。じゃあね』
兄さんとのフレンドコールを終えて、内容をみんなと共有する。
「いいんじゃないかな? 私としては、独占してもいいとは思うけどね」
『そこはほら、みんなが属性鉱石で色々なものを作ってくれれば、それを参考に新しい武器を作れるかもっていうね』
「下心とは呼べない下心だね。ま、私はミオンのそういうところが気に入ってるんだけどね」
『僕も、下手に隠さなくていいと思うよ。まぁ、【極天】を含むトップ三のギルドがどういう判断をするかだね』
『そんなことよりも、この鉱石があれば色々と作れそうですね。早く戻って作りたいです』
『だよね? だよね!』
「作るのはいいけど、そろそろログアウトの時間が迫ってるから、ミントランドに戻ってログアウトしてからだね」
『はーい』『はいです』
こうして私たちは、新たな素材を発見した。これでなにが作れるのか、考えただけでワクワクしてくるね!
ミントランドに戻った私たちはそこで解散し、私は夕飯を食べるために現実世界に帰還した。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
次は地味な生産回の予定です。
続きもどうぞお楽しみください。




