第三十話 第二の浮遊大陸-セカンド・ファンタジア-
今回は短めのお話になります。
それでは、本作品をお楽しみください。
「ようこそ、西の港町、ホワイトハーバーへ!」
港に黄昏の戦乙女を着艦し、登録を済ませた私たちは早速町へと繰り出していた。私はヴィーンとカノン、クラリスとPTを組んで素材探しをしている。
さすがは第二の浮遊大陸。見たことのない素材がいっぱいだね。使わないアイテムや素材を売却したお金がかなりあるので、少し多めに消費しても問題はないかな。
いくつかの素材を購入し、街の観光に入る。
町並みはセカンディアとそう変わらないかな。港町なのに海の香りがしないのがやっぱり不思議ってくらいだね。
あとは、町のいたるところに白い虎のエンブレムが置かれていることかな。なにか意味があるんだろうけど、現時点ではよく分からない。
そんなこんなで一通り町を回り終わった私たちは、ヴィーンの食事に合わせて飲食店で休憩していた。
『で、これからどうします?』
「(むぐむぐ)」
『んー、できればフィールドに出たいよね。どんなモンスターがいるのか気になるし、採れる素材も気になる』
『僕は、ダンジョンを探してみたいな。もしかしたら、あのダンジョンみたいに魔機人しか入れない種族制限のダンジョンがあるかも』
「(ずずー)」
『なるほどねー。なら私は、マギアーノ・クライスドーラって人の研究所なんかを探したいかな。もしかしたら、魔導石がまた手に入るかも』
『じゃあダンジョンを探しつつ、モンスターを狩っていく感じにしますか?』
「(もぐもぐ)」
『あー、でもそれだと今日中にどこかの町に着いてないとログアウトの時間的にまずいかもね。まずはどこかの町をめざして、そこから周囲の探索なんかにしようか。あと、余裕があれば町の人たちに話を聞きたいかも。もしかしたらなにか知ってるかもしれないし』
『RPGの定番だね。フラグを立てればなにか起こるかもしれない』
『そうそう。それに、追加されてるはずのまだ見ぬ浮遊大陸についても調べてみたいな』
『じゃあ、町の人たちへの聞き込みは余裕が有れば狩りの後に聞くということで』
「(ごっくん)話はまとまったようだね。では、行こうか」
『はーい』
手早くお会計を済ませてフィールドへと向かう。この町から向かえるのは北と東と南で、聞いた話によると真ん中の山に近付けば近付くほどに敵が強くなっていくようだ。恐らく、あの山の中にこの大陸の大ボス、浮遊大陸の守護者がいるのだろう。
火口で戦ったりするのかな……相手次第では、かなり厳しい戦いになるね。
ま、大陸の攻略の方は攻略組に任せて、私たちはのんびり寄り道でもしましょうか。
南は今頃プレイヤーがわんさか集まってるだろうから、まだ誰も行けてない北に向かおうっていう話になった。反対意見もなかったので、そのままフィールドに出る。
フィールドには石造りの街道が整備されてるらしく、その街道に沿って進むとモンスターとあまり出会わないことが分かった。少しでも街道から外れるとエンカウントするみたい。
「モンスターの素材を集めるためには街道から逸れる必要があり、北の町へと向かうには街道沿いに歩かねばならないか……」
『町の人に聞いたかぎりだと、そんなに時間も掛からずに着けるとのことでしたが……』
「明日は平日だからね。さっさと次の町へ向かってしまおうか」
『そうですね』
ちなみにモンスターとの戦いは話をしながらでもできるくらいで、強さ的には始まりの浮遊大陸よりも少し強いかな? 程度のモンスターしか出てこなかった。話の通り、山の方に向かわなければモンスターはそこまで強くないみたいだ。
『んー、鉱石素材って言ったら山……だよねやっぱり』
「普通に考えたらそうだろうね」
『ひじょうに行ってみたいですが、まずは町へ急ぎましょう』
『そうだね。ちゃっちゃと街道を進もう』
代わり映えない風景を見ながら、ちょくちょく突っ込んでくるモンスターを排除しつつ私たちは最寄りの町へとたどり着いた。
ミントランドと呼ばれるこの町は宿場町となっているらしく、西のホワイトハーバーから北のグリーンハーバーへと向かう人々の中継地になっているようだ。
そのため宿屋と飲食店が多く、また街道沿いにはあまりモンスターが出現しない影響か武器屋の類が少ない町らしい。それと、この町にも白い虎のエンブレムがあったね。それに加えて、緑色の亀のエンブレムも同じくらい置いてあった。虎に亀……んー、どっかで聞いたことあるんだよね。思い出せないんだけど。
それはともかく、ログアウトまで時間もあるので、この町をとりあえずの拠点にして周囲の探索を始めることにした。
『ここら辺のモンスターなら、多分ソロでも勝てると思うけどどうする?』
「山に行かないのなら四手に別れるのも手だね。山に行くなら、さすがに四人で行きたいところだけど?」
『私的には、みんなの意見に従うよ? どうせみんなと別れた後も山には入るつもりだし』
「はぁ。ま、ミオンには言っても意味ないかな」
『そこに未知の素材があれば、死に戻ってでも取りに行くのが私ですから』
「はいはい。それで、二人はどうする?」
『そうですね。私の方はまだ新作の腕パーツが作れてないので、よければ山に行きたいです』
『僕はどちらでもかな。強いて言えば、なにかが確実にある山に行きたいところだね』
「では、我々四人であの山に向かうとするか」
『さんせーい』
というわけで未知の素材アイテムを探しに山へと向かう私たち。山に続く街道なんかはないので、モンスターの湧く草原を最低限の戦闘回数に抑えて移動していた。
確かに山に近付くにつれてモンスターの強さも上がっているみたいだ。どうやら、この浮遊大陸は鳥型のモンスターが多く出てくるみたいだね。
私たちを襲ったあの鳥型モンスターも、元々はこの浮遊大陸にいたのかな?
魔機人的にはあまりおいしくない素材を落とす鳥型モンスターをしばきつつ(ヴィーンは矢の性能が上げられると喜んでいた)、私たちは山の麓まで来ていた。聞いた話によると、この山はゴールデンマウンテンという名前らしい。
名前の由来は金が取れる鉱山だからではなく、黄金の龍が住まう山と言われているからその名前が付けられたそうだ。
やっぱり、なんか聞き覚えがあるんだよね。虎、亀、黄金の龍……まぁ考えても仕方ないし、とりあえず素材素材っと!
「とりあえずモンスターを倒しつつ、採取ポイントを探していこうか」
『ここも例に漏れず鳥型モンスターが多いね』
『金属のゴーレム系の敵とか出てくれると、素材的に助かるんだけどねー』
『私たち、ゴーレムの亜種みたいなものですからね』
『ファンタジー金属と言えば……ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトにヒヒイロカネ……』
「出てくるとしても、まだ出てくるレベルではないだろうね。出てきても、加工ができないと見た」
『だよね。あー、凄腕の職人の集まる浮遊大陸とかないかなー』
『あってもおかしくないですよね』
『色んな素材が集まってそうで、魅力的な浮遊大陸だね』
「さて、どうだろうね。でも、まずはお客さんを歓迎してからだよ」
『ここら辺のモンスターが比較的強いって言ってもボス級のカメレオン・ワイバーンとかより弱いし、素材的なうまみもないから倒すのがだるいよねー』
『まぁまぁ。とりあえず、ぶっ飛ばそうや!』
空から襲いかかってきた三羽の鳥型モンスター。もはや作業になりつつある戦闘をサクッと終えて話を続ける。
『なにはともあれ、新しい金属素材は必要だね。だから、鉱石素材があると思われるゴールデンマウンテンの中に行きたいんだけど……』
「ふむ。さすがに山の中にまで鳥はいないだろうが」
『私としてもやはり山の中に行きたいです』
『山の中だと、マギアライフルの使用を控えた方がいいかな? このゲームのことだから、ビーム兵器使ったりすると落盤とかしそう』
『あー。分かる』
「では、三人は近接攻撃主体で、どうしようもない時のみマギアライフルを使うことにしようか。私は弓で援護するよ」
『それじゃあ行ってみよー!』
「その前にお客さんだけどね」
『本当にエンカ率高いなぁ!』
完全に作業と化した鳥型モンスターとの戦闘をこなしつつ、私たちはゴールデンマウンテンの中へと足を踏み入れた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




