第十四話 激闘? 擬態翼竜戦!
久々のボス戦回です。
複数人での戦闘を書くのは初めてなので、少し緊張しています……。
それでは、本作をお楽しみください。
「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!」
目の前のカメレオンワイバーンが耳障りな咆哮を上げる。それが、戦闘開始の合図となった。
「私は二人のように火力もなければ、サポートもできないからね。せいぜいあのギョロ目を潰すことくらいしかできないかな」
ヴィーンはそう言いながら弦に矢を番え、正確無比な狙撃でカメレオンワイバーンを翻弄する。目を狙った狙撃はことごとくがその長い舌に阻まれているが、カメレオンワイバーンは嫌そうな声を上げていた。
『ヴィーンさんにヘイト向けるわけにもいかないからね。ここは僕が!』
しっかりと構えられたマギアライフルから放たれた一撃が、カメレオンワイバーンの翼に直撃する。その翼膜を貫通し、カメレオンワイバーンは悲鳴にも似た叫びを上げる。
HPバーを見れば一本目の三分の一が消えており、そのダメージ量の高さを改めて感じることになった。
その一撃でカメレオンワイバーンはカノンを脅威と判断し、その長い舌による打撃や口から放たれる溶解液、毒液などを飛ばしてくる。
見た目は鈍重なカノンだが、機動性は高い。素早くホバー移動で位置を変え、カメレオンワイバーンの遠距離攻撃を躱している。
『移動砲台、舐めんじゃねぇぞってなァ!』
カノンはライフルを使うと性格が変わるらしく、いつもの言動よりも荒々しくなっている。普段より攻撃的になるのでダメージソースとしての活躍が期待できるため、私的にはGood。
それに、機体に乗ると性格が変わるパイロットとか、いいじゃん?
『オラオラオラァ!』
マギアライフルを連射するカノンだが、カメレオンワイバーンも馬鹿ではなかった。最初の一撃を喰らったあと、当たることを避けて立ち回っている。だけど……。
『足元がお留守だね!』
スラスターを噴射させ、両手に持ったマギアサーベルでカメレオンワイバーンの両脚を切りつける。完全な死角から放たれた斬撃は、カメレオンワイバーンの肉片とともにHPバーを一本分削り切った。
怒りの形相で私を睨むカメレオンワイバーンだが、私にばかり気を向けていると……。
『よそ見は厳禁……ってよォ!』
狙いすました一撃が再び翼膜を貫き、苦悶の声を上げるカメレオンワイバーン。
追撃を嫌ったのか、翼を羽ばたかせて空へと昇る。しかし翼膜が傷ついているからか、いつも通りには飛べないようだ。バランスが悪そうに空を飛んでいる。
『狙撃スコープなんて作ってないんだけどな!』
「つべこべ言わずに撃つ!」
『下手な鉄砲数打ちゃ当たるってなァ!』
『分かってるって!』
ヴィーンの矢、私とカノンのライフルが空を飛び回るカメレオンワイバーンに集中する。カメレオンワイバーンは私たちの攻撃を避けつつ溶解液や毒液を飛ばしてくるが、着弾点が分かっているので余裕を持って回避できた。
回避ざまに私の放った一撃が運良く翼に当たり、体勢を崩したカメレオンワイバーンが墜落する。
『落下ダメージに加えてこいつも喰らえェ!』
リロードを終えたカノンの銃撃がカメレオンワイバーンを襲う。これで、奴のHPバーは半分!
「本来だと、カメレオンワイバーンの攻撃を耐えて降りてくるのを待つのが定石なんだが……かなわないね」
『透明化させないようにHP管理に気をつけろよォ!』
『了解、ってね!』
私はスラスターにENを送り込み、加速しつつ体勢を整えている最中のカメレオンワイバーンに切りかかる。しかし野生の本能からか瞬時に身を引き、私の斬撃を躱された。
『今のを躱すかよ!』
『避けた先にもご注意をってねェ!』
カノンがカメレオンワイバーンの行動を読み、ライフルの一撃をぶちかます。さらにHPバーが削れ三本目のHPバーが半分を切り、カメレオンワイバーンの動きが激しいものに変わる。
私は舌による薙ぎ払いをジャンプして避け、マギアサーベルをバックパックに戻す。
左肩のロックを外し、マギアソードを抜き放つ。
『ライフルの大盤振る舞いだぜェ! ……って、しまった、削りすぎた!』
運悪くカノンの放った銃撃が全てカメレオンワイバーンに当たってしまい、4本目のHPバーを僅かに削る。カメレオンワイバーンは一際大きな咆哮を上げると、その姿が徐々に掻き消えていく。
「ミオン!」
『こんなこともあろうかと!』
私はスラスターに使う分を除いた残りのENをマギアソードに注ぎ、その刀身を極大化させる。
残ったENを全てスラスターに回し、消えゆくカメレオンワイバーンに肉薄した。
『《魔力収束》ぅぅぅぅぅぅ、斬!』
極大化した刃でカメレオンワイバーンの身体をすれ違いざまに切り上げる。抵抗もなくその身体を両断した刃は、ブゥンという音と共に消滅した。《魔力収束》を使い稼働時間が大幅に削れたためだ。
カメレオンワイバーンのHPバーはきれいさっぱり削り切れており、音を立ててその身体が崩れ落ち、粒子に変わる。
『EN使い切っちゃったけど、なんとか勝てたね』
「カメレオンワイバーンの溶解液は腐食属性だから、魔機人の天敵みたいなモンスターだったんだけど」
『魔力兵器の火力さまさまだね』
ドロップアイテムも気になるところだが、カメレオンワイバーンを倒したことを荷馬車を運んでいる人たちに教えないといけない。
私たちは彼らにカメレオンワイバーンを討伐したことを伝え、そのままの足で山道を通り抜け、無事に港町セカンディアへとたどり着いた。
ちなみに、私たちが始まりの街って呼んでいるスタート地点の街はファスディアという名前らしい。正式な名前を知っても、始まりの街って言い続けるとは思うけどね。
私たちの仕事はここまでで、荷運びの責任者の方からクエスト達成の証明となる特別な紙を渡される。これを始まりの街のマスターの元へと持っていくとギルド証に変わるわけだ。
私たちだけなら始まりの街へ帰るのにそんなに時間はかからないため、復活したENでスラスターを吹かせて急いで戻ることにした。ヴィーンは私がお姫様抱っこしてます。うーん、柔らかい。
「さすがに、男であるカノンに抱っこさせるわけにもいかなくてね」
『分かってるよ』
完全に夜になる前には始まりの街へと戻ることができた。駆け足で路地を進み、酒場のドアを開ける。
昼間とは打って変わり、店内の雰囲気がどこかアウトローな空気に変わっているのを感じる。下品な男たちの笑い声。酒とつまみで一杯やっている仕事終わりの男たち。それに混じっておっさんプレイヤー(見た目)たちが騒いでいるのも見える。
昼と夜とでここまで違う顔を見せるのかと、少し驚いた。
相も変わらずコップを拭いていたマスターは私たちの姿を見つけると、コップを置いて話しかけてくる。
「おう、お前さんら。早かったな」
『おかげさまで。無事モンスターを討伐して、紙を持ってきました』
カノンがインベントリからギルド証に使われるという特別な紙を取り出し、マスターへと手渡す。
「……確認した。確かにこいつは特別製のギルド紙だ。お疲れさん、よく頑張ったな」
ニッ、と白い歯を見せて笑うマスター。私たちの目の前にはクエスト達成のウィンドウが表示され、パンパカパーンとファンファーレが鳴り響く。
なるほど、クエストクリアの演出ね。
「んじゃあ早速ギルドを設立するか。ギルド員はお前さんら三人か?」
『いいえ、他にもギルドメンバーになる人はいます』
「そうか。とりあえずギルドマスターさえ決めてくれれば人員に関してはなんにも言わんさ。誰がギルドマスターになるんだ?」
『私がギルドマスターになります』
「名は?」
『ミオンです』
マスターに名前を告げると先程の紙に万年筆のようなペンで私の名前を書いている。
「ミオン、ね……よし、登録完了だ。ギルドネームは決まっているか?」
『僕は知らないけど……』
「私も、聞いてはいないな」
『ふふふ、こんなこともあろうかと! 私が決めてあるよ!』
「ふむ、なら任せようかな。君が作りあげるギルドだからね」
『いい名前をよろしくね』
「それでどんな名前なんだ?」
ヴィーンはどこか期待するような、カノンはソワソワと落ち着かない感じで聞いてくる。ちなみにマスターは早くしてくれと少々呆れ気味だ。
『私たちのギルドネームは――』
私たちが目指すのは、まともに遊べない魔機人プレイヤーの応援と援助を行うギルド。
どんな逆風にも負けない。どんな荒波にも抗うことのできる、機械仕掛けの自由の翼。私たちは、それを与えてあげる役目を負うことになる。
その名は――
『――自由の機翼、だよ』
イベント当日まで、現実時間で残り五日。
ついに、私たちのギルドが設立された。
[所持スキル]
《魔機人》Lv.47(4up↑)《武装》Lv.41(3up↑)《パーツクリエイト》Lv.--《自動修復》Lv22《自動供給》Lv.34(2up↑)《片手剣》Lv.10(4up↑)《鑑定》Lv.-- 《感知》Lv.19(3up↑)《直感》Lv.27(2up↑)《敏捷強化》Lv.37(6up↑)《採掘》Lv.21《鍛冶》Lv.51《裁縫》Lv.25
残りSP78
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもお楽しみください。




