第十二話 集いし仲間
小説を書くのって楽しいですね。書きたいように書いてるからでしょうか?
それでは、引き続き本作品をお楽しみください。
『よし、こんなもんかな』
日付が変わるまでログインし続けて、寝て起きて再びログイン。
ブラッドラインやマギアサーベル等でパーツ作成に慣れたのもあり、ブラッドラインを作った時よりも早い時間でカノンのパーツを作り上げることに成功した!
ふふふ、人のロボットを作るのも案外楽しいものね。スキル上げにもなるし、なにより好きに作れるっていうのが最高ね!
チラッと時間を確認するとカノンが来るまでまだまだ余裕がありそうなので、ビームライフルの作成に入る。と言っても、まだどうやって作るのか見当もついてないんだけどね。
とりあえずマギアサーベルの作り方を参考に部品を作り、組み合わせていく。ちゃんとENを込めるのを忘れないのが大事だ。
銃口は高出力に耐えられるように太く固く、丈夫に作っていく。小型化とか、軽量化とかは一度作ってみてからだね。
EN……魔力を収束させるための部品も作っていく。魔導ケーブルとアーティファクト・インゴットに、〈散華の森・中層〉で採れた各種鉱石を加工して組み合わせた結果できたのがこれになる。
[素材・アイテム]魔力収束石 レア度:SR 品質:C- 魔力伝導率:A
用途は不明だが、一定以上の魔力を一点に収束させる、または変換させるために作られた石。素材の質が悪いため品質は低いが、その名に恥じぬ魔力伝導率を誇る。
魔力収束石に魔導ケーブルを繋ぎ、アーティファクト・インゴットで外枠を作っていく。その際、魔力収束石を固定して衝撃で外れないようにするのも忘れない。
そうして本体が出来上がり、先に作った銃口や、本体の大きさに合わせた持ち手、トリガーなどを作り、組み合わせていく。
本体の底側に四角い穴……コネクタを作り、そこにマガジンをセットできるように加工する。マガジンにはいくつかの研磨魔導石を使用し、予備のマガジンも幾つか作成した。
ちなみに、ケーブルで直接機体と繋げても撃てるようにしてある。直接機体のENを使えるようにね。
[武装・アイテム]八八式魔導マガジン レア度:SR+ 品質:B 魔力伝導率:A
保有魔力量:5000/5000
スキル:《魔力自動吸収》
作り上げたマガジンをさっき作ったビームライフル本体にセットする。カチリ、という音と共にマガジンが固定され、外れなくなった。
私はその場でライフルを何度か振り回してみるけど、マガジンがすっぽ抜けることはなかった。うんうん、なんとかできたみたいだね。
ちなみにマガジンの取り外しは持ち手の少し上にボタンを作って、それを押すことでロックが解除される仕組みにした。この位置なら戦闘中でもポチッと親指で押せるからね。
各部の最終調整をして、完成となる。
[武装・兵器]マギアライフル レア度:EX 品質:B 魔力伝導率:A
固定ダメージ:2500 マガジン内消費魔力:1000 射程:100m
スキル:《魔力自動吸収》《光属性》《反動・中》《威力減衰》
かつての超古代文明ですら作ることがなかった携行可能な超兵器。
もはやこの兵器に攻撃力という概念は存在せず、放たれる光に触れただけでダメージを与える。
出ました固定ダメージ武器。マギアサーベルよりもダメージが少ないのは遠距離装備だからって言うのと、素材の品質かな。まだまだ序盤の素材だからね。
見慣れないスキルも付いてるみたいだ。
《反動・中》:この武装の使用時、一回使用する毎に腕部耐久値に左右それぞれに5%のダメージが入る。また、片手で使用した場合追加で10%のダメージが入る。
《威力減衰》:距離によって威力が低下する。射程最大で半分ほどのダメージ。
腕部パーツに反動ダメージか……流石においそれと連発はできないなぁ。しかも、両手持ちしないといけないっぽい。片手持ち15%ダメージは大変だ。魔力と違って耐久値の回復には補修するための素材とかが必要になってくるから、もし使いすぎで壊れたりしたら目も当てられない。
そして、距離による威力減衰……このマギアライフルで言うと、100mで1250ダメージか。え、充分じゃない?
現状のマガジンだと一つのマガジンで五回の発射が限界かな。ま、現段階なら総合的に見て、充分な性能でしょう!
カノンがやってくるまでにいくつかのマギアライフルと魔導マガジンを作成する。慣れればパパパッと作れるものね!
それと、マギアライフルの反動を少しでも軽減させるためにカノンの腕部パーツに手を加えた。カノンのことだから、片手に一丁ずつマギアライフルを持って乱射とかしそうだしね。腰部パーツに予備のマガジンを取り付けるためのジョイントも忘れない。これで、マガジンを交換する速度も上がるはずだ。
『ごめん、遅れた!』
『ん、待ってないから大丈夫だよ。おかげ様で色々作れたしね』
『『『おぉ……!』』』
カノンと彼に連れられて三人の魔機人プレイヤーが私のガレージにやってきた。そのプレイヤーたちは私の姿と手に持ったマギアライフルを見て感嘆の声を上げる。その声にはやっぱり機械音声のようなエフェクトがかかっていた。そして、漏れなく錆び朽ちております。
『もしかしてそれが?』
『うん。まだ試作段階だけど、マギアライフルって言うんだ。ほいっと』
『――っとと。あの、ミオンさん……危ないんで投げないで欲しいんだけど……』
『ははは。まあ落としたくらいで壊れるなら武器として使えないからね。それなりに丈夫だよ。それより、性能を見てみてよ。はいこれ』
『もう……って、なんですかこのダメージ量は……!』
マギアライフルの性能をウィンドゥに可視化させてカノンに見せる。うんうん、掴みはオッケーって感じだね。
『な、なぁカノン。それ、本当にビームライフルなのか……?』
カノンの後ろにいた一人の魔機人プレイヤーが問いかける。性能を確認し終わったカノンは興奮した様子で彼らの方を振り向いた。
『ああ。間違いなくこれはビームライフルだ。名前はマギアライフル。ビームサーベル……マギアサーベルは既に見せてもらってたけど、まさか本当に……』
『えっと、マギアライフルに感動してるところ悪いけど、こっちも確認してくれない?』
私はウィンドゥを操作してカノンに作り上げたパーツ群を譲渡する。空中をタップしていたカノンの声が驚きに変わった。
『ちょ、ミオンさん! これ、本当に貰ってもいいんですか!?』
『いいよいいよ。それは、カノンにあげるために作ったんだから。ほら、つけてみなよ』
『は、はい……!』
私がカノンのために作ったパーツ、その名も、〈ヴォルカニク〉シリーズ。
全体的な色合いはブラッドラインに似ているけど、細部は異なっている。ヴォルカニクは赤と黒がメインの色になっていて、細部がオレンジっぽく光っていた。流れるマグマのような輝きを見せていて、まるでパーツ自体が生きているかのような錯覚を覚える。
なによりも特徴的なのはその装甲の分厚さであり、腕一つとっても一般的な人間の腰周りほど分厚い。それでいて可動の邪魔をしないように作ってあり、純粋な防御力と耐久値はブラッドラインの三倍ほど。このヴォルカニクのコンセプトは「重装甲」だから、当然と言えば当然かな。
よく言えば堅牢、悪く言えば鈍重に見えるこのヴォルカニクだが、足回りにはホバー移動のためのノズルが魔導石と繋がっており、風の魔力で素早い移動を可能としている。このホバー移動は内部の魔導石の魔力を使うため、プレイヤー自身のENを使わなくても使えるのが魅力だ。もちろん、脚部パーツのENが切れている際には自身のENを使って動かす事もできる。
問題なのは脚も本体もENが切れた時だけど……まあ、そうそう起こることでもないし、大丈夫だと思うよ。うん。
マギアライフルを二丁持つその姿は様になっており、その身体の大きさから威圧感を感じるね。ちなみに、バックパックにはマギアサーベルを一本だけ備え付けてある。
『これが、僕のヴォルカニク……』
カノンは指を閉じたり開いたり、肩を回したり、腰を捻ったりして可動域を確かめている。少し動かしづらそうにしているけど、装甲がある分動かしづらいのは仕方ない。
『すごい……』
『錆び朽ちたパーツじゃない!』
『カノンの言ってたことは本当だったのか……!』
ガレージの入り口で呆然と立ち竦んでる三人の魔機人プレイヤー。私は彼らの方へと向かう。
『今回は私のお願いを聞いてくれてありがとう』
『い、いや、俺たちも半信半疑で来たんだ。でも、俺たちの中でも人一倍ロボットに対する想いが強いカノンが言ったんだ……俺たちは変われるって』
『今なら、カノンに聞かされたスキルやギルドの話も理解できます。これだけの装備を作ってもらえるのなら……』
『僕たちは、ミオンさん……貴女と共に、魔機人プレイヤーの援助をしたい。いえ、させてください!』
『『『お願いします!!!』』』
三人揃って私に頭を下げる。ちょちょ、そんなに頭を下げられても困るよ。ロボスキーとして当然のことをしているだけだから!
『とりあえず自己紹介しましょう。知ってると思うけど、私はミオン。装備しているパーツはブラッドラインよ』
『俺は、カイルだ。そっちの女性プレイヤーはクラリス。もう一人がヤマト』
『カイルにクラリスにヤマトね。早速で悪いけど、みんなのSPは余ってるかしら?』
『ああ。俺はそんなにスキルを取っていないから余ってるぞ』
『私はちょっと心もとないですね。パッシブ系のスキルをいっぱい取ってしまいまして』
『僕も余裕はあります。たいしてスキルを取っていなかったので……』
『なら、とりあえずカイルとヤマトは私が言った生産スキルを取って。素材ならそこにいくらでもあるから、ここでしばらくスキル上げね。クラリスは……仕方ないか。相談があるからちょっとこっちに来て』
私はカイルとヤマトにいくつかの生産スキルと敏捷強化のスキルを取得させて、生産スペースへと案内する。
その後カイルたちとカノンと離れて、クラリスを連れてガレージの端の方へと移動する。
『SPに余裕がある二人には自分自身の手でパーツを作らせるとして、クラリスはどうしようか』
『今取ってるスキルをレベリングして、SPを増やしてきます?』
『んー、それだとちょっと時間がかかるかな。じゃあクラリスの分は私が作るよ』
『いいんですか!?』
『うん。ま、いずれは自分で作ってもらうかもしれないけど、今回は特別ね?』
『は、はい。ありがとうございます!』
『それで、どんな機体にしたいかなんだけど――』
クラリスの機体の好みを聞いて、メモを取っていく。ある程度話を聞いたあと、私はむむむと唸った。
『まだ空は飛べないんだよね。私もウイングパーツが欲しいなって思ってるんだけど』
『やっぱりそうですか……では、なるべく速い機体で、装甲はギリギリまで薄くってできますか?』
『そりゃできるけど……なるほどね』
クラリスの好みは速度の速い機体。それも、びゅんびゅん空を飛び回り、地面をローラーでダッシュするような機体が好みだと言う。私の頭の中には白と金の騎士型ロボットが浮かんできた。私は同じ作品だと紅の右腕がかっこいい機体の方が好みだけど。
現状で空を飛ぶ方法に考えがないわけじゃないけど、お試しでやるには少しばかり素材が貴重すぎる。
その点、彼女の提案した紙装甲で速度重視のパーツなら、現段階でも作れる。当たらなければどうということはないを地で行くようなそのスタイル、嫌いじゃないわ!
『とりあえず、高速移動用のローラーなら現時点でも作れそうね』
『ホントですか!』
デュアルアイをチカチカさせながら声を上げるクラリス。人間のアバターならキラキラした目をしてるんだろうな。
『作ってみないと分からないけどね。あ、忘れるところだった。はい、フレンド申請ね』
私はクラリスとフレンドになり、いつでも連絡できるようにしておく。もちろん後でカイルとヤマトともフレンドになるつもりだ。
ついでにクラリスの機体のアバターデータも貰い、早速パーツ作りに入る。
クラリスは邪魔にならないようにカイルやヤマトの方に向かうみたいだ。自分で自分のパーツの整備をしないといけないから、生産スキルの向上に励むという。
教える人数が増えたカノンには合掌しておく。まぁ、これからも同じことを教える機会はあるわけで。少しでも慣れてもらわないとね。
私? 私はもちろん教導じゃなくて製造担当ですから。教えるのはカノンや、その他の面々に任せますとも。私、あまり教えるのは得意じゃないからね。
さて、話を戻してパーツ作りだ。と言っても、ブラッドラインを作った時と工程にあまり変わりはない。せいぜい、装甲を軽くしたり、動きやすいようにパーツを加工したり、その程度だ。
やはりと言っていいのか一番難しかったのは脚部に装備されるローラーで、特に車輪部分が面倒だった。
生半可な素材だとすぐに擦り切れて使い物にならなくなるし、硬すぎても柔らかすぎてもダメなので相当数の素材を消費することになった。
いくつかの試作品を経て、可動式高速移動用ローラーが完成した。直接地面に触れる部分には魔導ケーブルにも使っている合成蛇皮を採用し、さらに強度を高めるために〈散華の森・中層〉の徘徊ボス、フォレスト・スネークの皮も使用している。
これにより品質と魔力伝導率が若干ではあるが上がり、他のパーツのメンテナンスも必要になるなど余計な時間がかかったものの、ひとまずは想定通りのものができたと思っていいだろう。
作ったローラーを外れないように両脚部に固定し、ローラーの可動は内部の魔導石の魔力を使うようにする。こうしておくことで、自身のEN消費を少しでも抑えるのが目的だ。
後は装甲を薄くした関係で若干魔導石の内蔵量が減り、パーツ個々の魔力が少なくなってしまったことと、耐久値が少なくなってしまったことかな。これはクラリスも仕方ないと笑っていた。
機体名はクラリスが考えてきたようで、〈クライシス〉シリーズとなった。機体色は全面紅で、所々に銀色の装飾が入っている。色の理由としてはどうやら速い機体は赤い機体が多いため、赤系統の色がいいとの事で紅色をメインとして作り上げた。
基本装備はマギアサーベル二本と、出力を抑えて作ったマギアダガーが四本。マギアライフルは機体のコンセプトと性質上合わなかったため採用を見送った。
クラリスは武器カテゴリーのスキルを片っ端からとることに決めていたらしく、《片手剣》に加え《短剣》スキルも持っていたので、マギアダガーを作ったんだ。クラリスは『万が一の時のサブウェポンとして忍ばせておきますよ』と笑っていたね。
[武装・短剣]マギアダガー レア度:EX 品質:B- 魔力伝導率:A
固定ダメージ:2000
スキル:《魔力自動吸収》《光属性》《状態変化・短剣》
こうして私は、新たな機体に新たな武器、新たな仲間を増やしつつ、今日も新たな武器やパーツを試作していく。理想のロボットまでは、まだ、遠い。
イベント当日まで、現実時間で残り六日。
[所持スキル]
《魔機人》Lv.43(2up↑)《武装》Lv.38(3up↑)《パーツクリエイト》Lv.--《自動修復》Lv22《自動供給》Lv.32(1up↑)《片手剣》Lv.6《鑑定》Lv.-- 《感知》Lv.16《直感》Lv.25《敏捷強化》Lv.31《採掘》Lv.21《鍛冶》Lv.51(5up↑)《裁縫》Lv.25(5up↑)
残りSP73
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもお楽しみください。




