第百二十一話 予選バトルロイヤル、開始!④
投稿が遅れました。しばらくは投稿が不定期になってしまいます。
また、本作の改稿の方も進めています。
ある程度の部分まで改稿したら、なろうはまとめて更新する予定です。
改稿版の方はノベプラの方で完成次第上げているので、もし改稿版を先に見たいという方がいたらノベプラに読みに来てください。改稿前よりも分かりやすくなっていると思います。多分。
また、一部設定が変わっているので、改稿前と比べてところどころ違うものになっています。
ですが大筋の話の流れは変わらないので、どこがどう変わったのか、楽しみながら読んでいただけると幸いです。
長くなってしまいましたが、引き続き本作品をよろしくお願いいたします。
予選バトルロイヤルDブロックのステージタイプは、《島》。
周囲を海に囲まれた孤島。そこに約1000人ものプレイヤーたちがひしめき合う。
かろうじて陽の光が届くであろう深い森に、いくつもの洞窟が繋がった大洞窟。それに、《島》のあちこちにはそこそこの大きさの湖が散見される。
なんと言うか、様々なタイプのステージがごっちゃになっているような、そんな感じだよね。綜合力が試されそうなステージだ。
『さて、始まったDブロックの戦い! 立ち上がりはみんな慎重か? 動きが見えないぞ!』
『今までのブロックが派手過ぎて、感覚が麻痺しているのかもしれませんね。ステージタイプ的にも、ゆっくり進んでいくのではないでしょうか?』
『うーん、否定できん! っと、早速動きがあったようだ!』
『ふむ。不思議系魔機人少女との異名を持つアイさんですね。どうやら深い森の中で何人かのプレイヤーに囲まれているようです』
『どんな戦いを見せてくれるのか、楽しみだぜ!』
おっと、どうやらアイちゃんのところで戦いが起こるみたいだ。これは見逃せないなっと。
アイちゃんが立っているのは、《島》の東側に広がっている広大な大森林。幹の太い木々が乱立していて視界が確保しづらく、根っこがそこら中に張り巡らされていて歩きにくい地形になっているみたいだ。
アイちゃんは……微妙に地面から浮いてる? ああ、カノンが主に付けてるホバー機能を使ってるのかな。少なくとも、ホバー機能があれば地面の根っこは無視できるね。
アイちゃんも飛行ユニットは持ってるだろうけど、あんな飛びにくい森の中じゃ的になるようなものか。ホバー機能に加えてスラスターを使えば、森の中でもかなりの速さで移動することができるだろう。
対するプレイヤーたちは、リーダー格のエルフを中心に森歩きに優れている装備を揃えているみたいだ。似たような服装をしてるし、もしかしたら同じギルドのメンバーなのかもしれないね。
「その姿、【自由の機翼】のメンバーだな?」
『ん、そうだけど?』
エルフプレイヤーの問いに、首を傾げて答えるアイちゃん。
むぅ。魔機人だからってうちのメンバーだと思い込むのはいただけないな。【黒の機士団】だってうちと同じく魔機人多めのギルドだし、少し前から魔機人のプレイヤー自体が増加傾向にある。これでもし違うギルドのメンバーだったりしたら恥ずかしいんじゃないかと思ってしまう。今回は当たってるわけだけどさ。
「滅神機姫や妖精美姫ほどではないだろうが、【自由の機翼】のメンバーを倒せたとなれば俺たちにも箔が付く。悪いが、全力で勝たせてもらうぞ」
「女の子一人に寄って集ってってのは主義じゃないが、これもリーダーの決めたことなんでね」
「悪く思うんじゃねぇぞ?」
エルフプレイヤーを中心としたプレイヤーたちが、ジリジリとアイちゃんを包囲しにかかる。対するアイちゃんは視線自体はプレイヤーたちに向けているものの、何をするでもなく。強いて言えば、インベントリから銀色のバットのようなものを取り出したくらいだ。
あれ? 前までは普通にメイスだったと思うんだけど……いつの間にバットを作ったのか。親方かな?
『ん』
アイちゃんはインベントリから取り出したバットの先端をエルフプレイヤーに向ける。これってあれかな? ホームラン宣言ってやつなのかな? ちょっとアイちゃんの行動が読めない……。
「舐めてくれるな! 【チャージ】、【ハイチャージ】!」
「「「「【チャージ】【ハイチャージ】!」」」」
エルフプレイヤーのアーツ宣言に続き、周囲のプレイヤーも同じアーツを使用する。
えっと、確か【チャージ】や【ハイチャージ】は両手武器のスキルレベルを上げれば覚えられるアーツだったはず。効果はどの両手武器でも共通で、次に与えるダメージの増加だったっけ。
【ハイチャージ】は【チャージ】よりも効果が高いだけで同じ効果なんだけど、どうやら重ねがけができるようだ。それは知らなかったな。
発動の際にはタメなども必要なく、アーツの使用宣言だけで使える有用なアーツだったはずだ。いくら魔機人の装甲でも、【チャージ】【ハイチャージ】後の攻撃を連続でくらえば危ないかもしれない。
私? 私の場合は【チャージ】とか使わせる前にマギアウェポンでなんとかしちゃうから……。
「くらえ! 【大斬撃】!」
アイちゃんの後方から両手剣を持ったプレイヤーが進み出る。地面に擦り付けた大剣が、木の根っこを切り刻みながら高速でアイちゃんに迫る。
それをちらりと一瞥したアイちゃんは、最小限のスラスター稼働で立ち位置を修正。思いっきりバットを振りかぶって――
『げっと。【流星打球】』
――振り上げられた大剣ごと、プレイヤーをガキィン! とぶっ飛ばしてしまった。
ちょうどいいところにぶち当たったのか、ぶっ飛ばされたプレイヤーは木々の枝をバキバキと折りながら空へと昇っていき、アーツの効果なのか硬直したまま受け身も取れずに地面に頭から落ちて光の粒子に変わっていった。
「は?」
『は?』
まさに、エルフプレイヤーたちと観客席のプレイヤーたちの思考が重なった瞬間だった。現に私も、開いた口が塞がらないくらいには驚いてる。
……そう言えば、セイリュウオーさんと戦った時もメイスでカッキンカッキン打ってたっけ……すっかり忘れてたよ。
『こないの? ならこっちからいくよ――げっと。【流星打球】』
アイちゃんはあまりの光景に固まっているプレイヤーたちに忍び寄り、再びバットをフルスイング。同じように快音を響かせながら飛んで行ったプレイヤーが光の粒子に変わる。
その光景で我に返ったのか、エルフプレイヤーが周囲のプレイヤーに指示を出す。
「同時に別方向から攻撃しろ! フルスイングとは言え360度全てをぶっとばせるわけじゃない!」
「お、おう! 【大斬撃】!」
「やってやらぁ! 【大斬撃】!」
「俺も行く! 【大斬撃】!」
アイちゃんを囲っていた全てのプレイヤーがアーツを発動し、アイちゃんに襲いかかる。
『おっとぉ、さすがのホームラン女王でもこればかりは万事休すかぁ!?』
いつの間にかアイちゃんにホームラン女王とかいう名前が付けられてるけど、さもありなんって感じだ。
【大斬撃】を発動し、根っこを破壊しながら突撃してくる多数のプレイヤー。アイちゃんはそれらを眺めてバットを構える。
どうやらホバー機能を切って地面にアンカーを撃ち込んだみたいだ。さて、なにをするのか。
『しるばりおばっと、おーばー』
アイちゃんがそう言うと、アイちゃんが持っていたバットが音を立てて変形していき、一つの巨大なバットと化した。持ち手の大きさは変わっていないのに、先端に向かうにつれて大きく太くなっている。あの、アイちゃんの背後の木々がバキバキに折れまくってるんだけど……?
突然巨大になったバットに驚きを隠せないプレイヤーたちだったが、既にアーツを発動させているため、アバターはアーツの動きを正確になぞろうと自動的に動く。
確かアーツって設定でマニュアル操作にもできた気がするけど、彼らはオート操作のままみたいだ。
『おーるげっと。【流星打球】』
ブォン! と振るわれる巨大なバット。
周囲の木々を容赦なく巻き込みながら振るわれる巨大バットは、アイちゃんに向かっていたプレイヤーたち全てを快音と共に上空へと吹き飛ばした。
あまりのバットの大きさに周りを囲んでいた全てのプレイヤーがぶっ飛ばされてしまったようで、ほどなくして地面にぶつかり光の粒子変わってしまった。
深い森の中に巨大なミステリーサークルを作った張本人は、フルスイングの感触に頷き、巨大なバットを元の長さに戻していく。
『ちょっ、あの、これはなんて言えばいいんだ!? ありのまま今起こったことを話すぜ! 小さい女の子がバットを振りかぶったと思ったら、明らかに大きさのおかしいバットになって超巨大なミステリーサークルを作っちまった! 何を言ってるか分からねーと思うが、俺自身何を言っているのか分からん!』
『え、本当に【流星打球】を使ったんです? あの開発の悪ノリで生まれた珍アーツを? 真芯に当てないとダメージが発生しない代わりに、当たった時は問答無用でホームランにして致死高度から叩き落とされて確殺になる、あのアーツを?』
『これはまた……』
『ミオンちゃんのところにいる子は面白い子ばかりだね』
『あはは、これはちょっと予想外かな……うん……』
運営さんがガチで戸惑ってるからね……さすがはアイちゃん……何を考えてるのか分からない女の子ってギルド内で言われてるだけはあるよね……なんだろう、うちのギルドに対する認識がかなり変なものに変わったような気がするよ。
その後もプレイヤーを見つけては快音を響かせ続けたアイちゃんは、時間切れで見事Dブロックの勝者となりました。
「……って、俺の出番は!? 空気すぎじゃない!? 俺も結構頑張ったんですけど!?」
と、そんなことを言っていた有名ギルドのサブマスターがいたとかいなかったとか。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
暫くは不定期更新が続くとは思いますが、これからも本作品をお楽しみください。
より良い作品にしていくために、改稿作業も頑張りたいと思います。




