第百十八話 予選バトルロイヤル、開始!
投稿遅れました。
第三回イベント続きです。
引き続き本作品をよろしくお願いします。
『おまーたせーしましたぁ! ただいまより、FreedomFantasiaOnline第三回イベント……激闘! PvPバトルを開催しまぁす! 実況は、休日なのになぜか呼ばれたGMの来瀬と!』
『解説として呼ばれました。才羽がお送りします』
わぁぁぁぁぁぁぁぁ、と観客席に座ったプレイヤーたちから歓声が上がる。
第一回のイベントの時とは違って、今回のGMは専用のアバターになっているみたいだ。来瀬さんは金髪のイケメンエルフ、才羽さんは知的な黒髪メガネの美女姿。泣きぼくろがセクシーだね。
『堅苦しい挨拶は抜きにして、早速始めていこうぜ! こちとら休日出勤なんだからな! その分楽しませてもらうぜ!』
『来瀬さん、少しは落ち着いてください』
『これが落ち着いてられるか! フリファン初のPvPイベントなんだぜ!? 観客席のみんなも、盛り上がってるよなぁ!?』
『『『おおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!!』』』
プレイヤーたちの歓声で、ビリビリと会場が震える。これから始まる戦いに、みんな期待してるんだね。
かくいう私も、ワクワクしてないって言ったら嘘になる。会場の熱に浮かされて、今にも叫んでしまいそうだ。
『ってなわけで、第三回イベント、PvP頂上決戦の個人戦の予選を始めるぜ! 今会場にいるプレイヤーたちが、Aブロックの選手たちだ!』
『ブロックはAからPブロックまであり、各ブロックで最後まで残った一人が決勝トーナメントに進めます』
『思った以上に参加人数が増えちまってな。決勝トーナメントの人数を増やすかどうか話し合った結果、予選の人数を増やすことになった』
『個人戦の予選は、バトルロイヤル形式で行います。フィールドの大きさは約3km四方で、タイプはランダムとなります。今回のAブロックの場合は、分かりやすいように《草原》タイプのフィールドになっていますね』
『個人戦には約1万8000人のプレイヤーがエントリーしてくれてな。一ブロックに約1000人ちょいのプレイヤーがいるぜ』
『フィールドによっては隠れることも戦法の一つになりますが、制限時間がありますので、もし時間切れとなった場合、何人のプレイヤーを倒しているかで勝者が決まりますので、ずっと隠れている、というのはオススメしません』
なるほど。人数が減るまで隠れてるっていうのも戦法としてはありか。どちらかと言えば私は真正面から戦いたいから、今回は普通に戦うとしますかね。
ハイドした方が上位に行けるって言うならともかく、今回のルールなら正面からプレイヤーたちを倒していけば問題ない。
『見てる方も萎えちまうからな。ま、それが戦法の一つってんならOKだ。つまり、無駄にこそこそ隠れてんじゃねぇぞってところだ』
『こうしてAからPブロックまでの勝者十六名を選出し、決勝トーナメントで雌雄を決していただきます』
『チーム戦は個人戦が終わってから次の日だから、個人戦にも出ててチーム戦に出なきゃいけないけど装備の調整が……ってやつも心配ないぜ』
『さて、長々と話してしまいましたね。選手の皆さんも、観客席の皆さんももう待ちきれない様子』
『おっしゃいくぜ! 得物は持ったか! 今更準備できてねぇなんて言い訳聞かねぇぞ! Aブロック予選、開始だぁっ!!!』
『『『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!』』』
実況や解説の声、そして、観客の声が聞こえなくなる。ま、実況の声が聞こえてたら誰がどこでどんな風に戦ってるか丸聞こえだし、当然か。
視界の端に映っていたカウントダウンが消え、スタートの文字と共に制限時間が動き始める。
ふむ、制限時間は二時間か。これは、プレイヤーが減ってくる後半にプレイヤーと出会えなかったり、戦いが長期化して終わらないことを考えてこの時間なのかな。バトルロイヤルにしては、結構長めだ。
さて、私としてはあんまり最初に出るってのは好みじゃないんだけど、Aブロックになっちゃったからには仕方ないよね。
『じゃ、プレイヤーのみんなには悪いけど、さっさと片付けさせてもらいますか!』
私は周囲にプレイヤーが見えないことを確認して、インベントリからレジーナ・ストラを取り出す。
翼を折りたたみ、背部パーツとレジーナ・ストラ本体を合体。腕と足をレジーナ・ストラに固定させて、ふわりと宙に浮かぶ。
『今は速度はいらないから、戦闘形態にモードシフト』
高速飛行形態である翼竜形態から戦闘形態である竜人形態に可変させる。
純白の騎士がまとうのは、戦闘用ドレス、竜機女王の魔装。
竜人形態の武装は、肩部にそれぞれ一門ずつ装備されているレジーナ・キャノン。これは、弾倉が回転式になっていて、それぞれ違う属性の属性鉱石が内蔵されている。これにより、相手の弱点属性を突いた戦いが可能だ。
右腕のレジーナ・ブレードは基本は実剣状態で、トリガーを引くことで各種属性のマギア・サーベルをまとうことができる。また、持ち手を捻ることで実剣を収納し、巨大なマギアソードを出現させることも可能であり、非常に汎用性に優れた近接武装だ。
左腕のレジーナ・ブラスターは、私が普段から使っているマギスティア・ライフルをさらに大型化、強化したものになっている。
基本の砲撃とチャージショットを使い分けられるようになっていて、最大チャージした時の一撃の威力は計り知れない。
残念ながらレジーナ・ブラスターは光属性から変えることができないが、それでも規格外な武装なのは間違いない。
背部の翼は、翼膜の部分が全て改良型のソードフレンズとライフルフレンズになっていて、レジーナ・ストラからの魔力供給で動く。
フレンズを全て排出すると翼膜が大型の結晶翼に変わり、変わらぬ機動性を確保してくれる。
尻尾の部分にはブランシュヴァリエソードと同じ素材で作ったテイル・ブレードが搭載されており、なぎ払いや切りつけ、背後からの攻撃の防御だと多彩な行動ができるようになっていた。
『レジーナ・ストラ、ミオン……行きます!』
スラスターを噴射させ、草原フィールドの上空へと飛び上がる。
「な、なんだあれ!?」
「モンスターか!?」
「いや、PvPイベントにモンスターが出るわけねぇだろ!」
「ってことは……」
「「「あれプレイヤーかよ!?!?!?」」」
私はレジーナ・キャノンとレジーナ・ブラスターの照準を、一番近い地点にいるプレイヤーに合わせた。また、自動ロックオンを近辺のプレイヤーに合わせるようにセットする。
『射撃開始!』
属性は光属性に合わせて、トリガーを引く。
プレイヤーに向けた銃口から、光のビームが解き放たれた。
レジーナ・ブラスターの極太ビームをくらったプレイヤーは一瞬でそのHPが消え去り、光の粒子となって消えていく。
レジーナ・キャノンの方も同様で、たまに耐性値が高いのか一撃で倒れないプレイヤーがいるものの、追い撃ちのレジーナ・キャノンで消滅していった。
「なんだあのば火力は!?」
「てか、あれだろ! 【自由の機翼】のギルドマスター!」
「滅神機姫か!? だからってあれはデタラメだろうが!」
「逃げろ逃げろ! とりあえずあの砲撃から逃げねぇと話になら――」
ズガァン! とレジーナ・ブラスターから放たれた光の柱が突き刺さり、爆発する。
『サーチ&デストローイ! 死ぬぜぇ……私の姿を見たやつはみんな死んじまうんだ!』
「どこの死神だどこの!」
『おっと』
レジーナ・ブラスター、キャノンの砲撃をかいくぐり、上空にいる私へと炎の斬撃を飛ばすプレイヤー。それを身を捩ることで躱し、お返しにとレジーナ・ブレイドを構えて突撃する。
「剣で勝負ってか。いいぜ、この炎熱剣士、クレナイが相手になってやらぁ!」
『レジーナ・ブレイド、フリーズモード!』
私はレジーナ・ブレイドに氷属性をまとわせ、クレナイの持つ炎をまとった剣を一閃した。すると、先ほどまで燃え盛っていた炎が消滅し、パキパキと刀身ごと氷で覆われていく。
「馬鹿な、俺の炎熱剣が――」
そのまま切り返し、クレナイの胴体を薙ぐ。どうやら炎熱系装備で身を固めていたようで、私のレジーナ・ブレイド-フリーズモード-がクリティカルヒットし、クレナイのHPを全損させる。
光の粒子に変わっていくクレナイから視線を逸らし、次の獲物をロックオンした。
『今回の私は、自重なしだ! とことんやらせてもらう!』
私は草原フィールドを一周し、残存プレイヤーの位置を確認。それにより埋まったマップを表示させて、それぞれのプレイヤーをピピピとロックオン。周囲に展開したソードフレンズとライフルフレンズを、それぞれの対象に向かって射出した。
「うっそだろおい!」
『ああ、ギルマスと同じブロックなんて、ツイてなさすぎるー!』
「くそ、なんだよこの威力は……!?」
「あれが、滅神機姫の真の力か!」
「スト〇リも真っ青なマルチロックオンだな!?」
『くっ、せめて一太刀でも……ダメかー!』
さらにレジーナ・ブラスターとキャノンでフレンズに任せきれない分のプレイヤーに砲撃。それでも生き残るプレイヤーはレジーナ・ブレイドのサビにしていく。
『当たれぇ!』
フィールド内を縦横無尽に飛び回り、残存プレイヤーを殲滅していく。バトルロイヤルってルールが、これほどレジーナ・ストラと相性がよかったとは思わなかったよ。
それに、ユージン兄さんや、カンナヅキさん、ナインさんみたいな最前線プレイヤーがいないのもでかい。彼らのうち一人でもいれば、私が無双ゲーみたいなことになることはなかったかもしれないね。
こうしてプレイヤーを殲滅し続けて、マップに映る最後の一人を光の粒子に変えた瞬間、ブーという音と共に制限時間のカウントが止まった。
『き、決まったぁぁぁぁ! 試合しゅーーーーりょーーーー! 圧倒的! 圧倒的だぁーーーーっ! まさか、こんな結果を誰が予想したんだ!? 少なくとも俺は予想してなかったぁっ! 試合開始わずか30分足らずで、全てのプレイヤーをサーチ&デストロイしやがった! Aブロック勝者は、圧倒的な力を見せつけた魔機人プレイヤー! 絶対機姫、ミオンだぁぁぁぁぁっ!!!!!』
『『『『『わぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!』』』』』
結晶翼を閉じ、フレンズたちを全機回収する。取り残しがないのを確認し、レジーナ・ストラをインベントリへとしまった。
ブランシュヴァリエの翼を広げて、ゆっくりと地上へと降りていく。
どうやら決着が着いたタイミングで聞こえていた音声が元に戻ったのか、響く観客の歓声が少し耳に痛い。
ってか、運営の人が新しい二つ名を付けないでください……滅神機姫で間に合ってるんで……ほんと……。
『まさかここまでとは。私も驚きです。彼女が使用したのは、第二回イベントの際に作ることのできた魔機装をオリジナルの設計図を用いて製作したものでしょう。おそらく、現状で入手できる最高の素材を使った、まさに最高の兵器。その力、とくと見せてもらいました』
『じゃあミオンは、決勝トーナメント進出者が座る実況解説の隣の席に座ってもらうとして、早速Bブロックの試合を進めていくぜ!』
と、来瀬さんが言うやいなや、草原フィールドにいた私は才羽さんの隣の席に転移させられていた。
えっと、私、ここにいなきゃダメです? あ、ダメですか。なるほど。
『さぁ、Bブロックも粒ぞろいのプレイヤーがいるみたいだ! 実況は変わらず来瀬がお送りするぜ!』
『解説は才羽と』
『え?』
なんで私を見てるの? いやいや、そんな頷かれても……えぇ……。
はぁ。仕方ないか。これもAブロック勝者の務めと思っておこう。
『……えー、【自由の機翼】ギルドマスター、ミオンがお送りします』
『『『『わぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!』』』』
ああもう、どうにでもなれ。
そんな気持ちで、私はBブロックの解説を才羽さんと一緒に行うのだった。
ちなみにBブロックは、カンナヅキさんが勝ち残った。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




