第百十四話 オーバーホール
続きです。
投稿が不安定で申し訳ありません。なるべく予定通りに投稿するつもりではいますが、しばらくは不安定なままかも知れません……。
引き続き本作品をよろしくお願いします。
『いやー、掘った掘った!』
あれからいくつかの坑道を探索し、つるはしを振るい続けた私たちは、かなりの量の鉱石を掘り出すことに成功していた。
うん、とりあえず私が掘った分は試作で使う分くらいにはなるかな。新しい鉱石と、今まで手に入り辛かった鉱石が取れたし、私の制作意欲も高まっている。PvPイベントに向けて色々と準備を整えたいところだ。
確かに私にはチートじみたアーツ【転神】があるし、戦闘力を大幅に引き上げてくれるレジーナ・ストラも持ってる。でも、備えってのはいくらあってもいいものだからね。そろそろ基本武装のバージョンアップが必要な時なんじゃないかと思うんだ。マギアサーベルとか、マギユナイト・ライフルとか。
どんな風に改造するかはまだ決めてないけど……ま、PvPイベントが始まるまでには作らないとね。
採掘が終わった私たちは、鉱山から出てギルドハウスへの帰路に就いていた。ヴィーンたちもそれなりの収穫があったようで、みんなホクホクとした雰囲気で歩いている。
あ、カノンや親方たちにはすでに先に帰る旨を伝えてあるよ。どうやら親方たちは一つの鉱山の採掘ポイントだけじゃ満足できなかったみたいで、怒涛の勢いで採掘ポイントを探しまくってるそうだ。
逆にカノンたちは、採掘ついでに鉱山の奥にいるモンスターと戦ってくるそうだ。なかなかに手強くて楽しいらしい。あの二人、しばらく見ない間に戦闘狂になってないかな……?
ま、戦闘が楽しいのは分かるけどね。戦闘用ロボットは戦ってなんぼだと思ってるから。
というわけで私たちは早めに採掘を切り上げて帰っている最中ってわけだ。
途中、鉱山街の守衛さんに挨拶をしてからギルドハウスへと帰る。こういう細かなコミュニケーションで色々と変わってくるのがフリファンクオリティ。実際、NPCに色々と酷い行動を取ったプレイヤーが何人もアカウント停止になってるしね。どうせなら仲良くなっておこうと。
ギルドハウスに戻った私たちは、転移ポータルで黄昏の戦乙女に帰還。工房でプレイヤーが作業しているのを物珍しそうに眺めるクリムちゃんを横目に、私は自分のガレージを取り出して中に入った。
『とりあえず鉱石類をしまってっと……よし』
どうにも貴重なアイテム類はさっさと倉庫にしまっておきたい私は、ライトミスリルなどを最低限必要な分を残してガレージの倉庫へとしまい込む。
時間を確認して、まだログインしたままでも大丈夫なことを確認し、早速基本武装の改修……もとい改造に取り掛かる。
実剣であるブランシュヴァリエソードがあるとはいえ、このまま光属性メインで戦うのはよろしくないということで、まずはこのマギアサーベルから改造していこうか。
『新しい属性鉱石もあるし、これを試していこうか』
私がインベントリから取り出したのは、六種類のカラーメタル鉱石。
それぞれレッドメタル鉱石、ブルーメタル鉱石、グリーンメタル鉱石、イエローメタル鉱石、ブラックメタル鉱石、ホワイトメタル鉱石という名前がついている。
簡単に言ってしまえば火鉱石や水鉱石なんかの属性鉱石、それの上位互換版だ。
その分加工は面倒だけど、《鍛冶》スキルが《上級鍛冶》スキルになっているため、わざわざ《パーツクリエイト》で形をいじらなくてもいいようになっている。
さて、作るならなんの属性がいいかな。
まずは火属性……は、フリファンではかなり使用者の多い属性だ。だから、火属性への対策はされているだろうね。プレイヤーだけじゃなくて、NPCやモンスターも火属性を扱うことが多い王道な属性だ。
それを言っちゃうと、水属性も風属性も使用者は多いんだけどね。なにせ、その二つの属性は育てれば複合属性の雷属性になるらしい。
不人気なのは土属性だけど、使い手が全然いないのかと言われればそうでもないんだ。
光や闇も人気の属性だね。つまり、どの属性を選んでも特に変わりはないわけだけど……どうせなら、色んな属性対応した装備を作りたいところだ。
私はそれぞれのカラーメタル鉱石を炉で熱し、ドロドロに溶かした後に全てを混ぜてみる。
それを再び炉に戻して熱し、いい感じに混ざったところで取り出し、インゴットの型に流し込む。
それを冷やし固めてできたのは、ブラックメタル・インゴット。
詳しく調べてみても、ブラックメタル以外の特徴を持たないインゴットになってしまったようだ。
ま、今回は六個全部入れてインゴットを作ったらどうなるのか試してみただけ。本番はこれからさ。
ということで、次は二種類ずつのカラーメタル鉱石でインゴットを作っていく。組み合わせはレッドとイエロー、ブルーとグリーン、ホワイトとブラックだ。
まずはレッドメタルとイエローメタルを熱し、インゴットへと変えていく。
結果できあがったのは、マグマメタル・インゴットという新たなインゴットだった。やっぱり上位の属性鉱石は、組み合わせで新たな複合属性鉱石にできるみたいだね。これは、火鉱石などの下位の属性鉱石だとできないことだった。
マグマメタルは溶岩属性という、《火魔法》と《土魔法》をカンストさせることで生まれる複合派生先の《溶岩魔法》の属性だろう。
《溶岩魔法》とはいうものの、習得できる魔法はマグマ系だけでなく、しつこくねばっこい泥のような炎なんかもその溶岩属性に含まれるようだ。
掲示板やWikiには概要くらいしか載っていないけど、それを見ているだけで厄介そうな属性だと分かる。というより、複合属性はそのどれもが面倒な性能をしているみたいだね。
というわけでインゴット作成の続きだ。これはもう予想がついてると思うけど、ブルーメタルとグリーンメタルを合わせることで雷属性のライトニングメタル・インゴットが作成できた。
これも人気な複合属性で、掲示板やWikiではかなりの情報が流れている。また、非常に対策がしづらい属性らしく、特に金属鎧を装備しているタンカーにとっては天敵ともいえる属性みたいだ。
金属装備が多ければ多いほど雷属性攻撃を受けた時のダメージが上がり、スタンという特殊状態異常を引き起こしやすくなるという。スタンを受けると、一定時間身体を動かせなくなるらしい。仲間のために盾を構えなければいけないタンカーにとって、これほど厄介な属性もないだろう。
では、金属の塊のような魔機人もスタンを受けるのか。答えは否だ。
確かに雷属性が弱点であることはスキルに明記されているものの、スタンという状態異常は受けない。これは、雷によって動かせなくなる肉体がないからではないか、というのが検証したプレイヤーの話だ。
ただ弱点属性であることに変わりはないので、なにかしらの対策はしたいよね。うーん、ゴムとかこのゲームにもあるのかな? さがせばありそうな気はするんだけど。
さて、次はブラックメタルとホワイトメタルの複合インゴットを作っていく。闇属性と光属性が合わさると一体どんな属性になるのかなっと……おや?
熱してドロドロに溶かした鉱石をインゴットの型に流し込むまではよかったんだけど、冷えて固まる段階でバキリと音を立てて崩れてしまった。そのまま光の粒子に変わってしまう。
うーむ。光と闇は合わさることができないんだろうか? いや、私の見たことあるラノベでも聖と魔を合わせた剣を使ってた剣士がいたし……これは、少し配合率を変えてみようか。
というわけで、ブラックメタルとホワイトメタルの比率を2:1にしてみた。これでインゴットを作製していく。
先ほどは型に流したあとに崩れてしまったのに、今回のはそのまま形を保っている。そして、冷え固まりインゴットとなった。
『デモンメタル・インゴット……つまり、ブラックメタルの上位インゴットってことかな?』
私の目論見通りとはいかなかったけど、新しい属性鉱石インゴットを作ることができた。なら、今度はその比率を反対にしてインゴットを作ってみる。
結果できたのが、セイントメタル・インゴット。つまり、闇は魔に、光は聖にランクアップしたって認識でよさそうかな?
これは他の組み合わせも見てみたい! というわけで残りの複合属性、及び上位属性のインゴットが作れないかどうかを試作していく。
結果、いくつかの複合属性のインゴットができ、偶然にもまだ存在が確認できていなかった複合属性を発見することができた。
ブラックメタルとレッドメタルを組み合わせたブラッドメタル・インゴット。これは、魔血属性という、火と闇の複合属性だという。
《魔血魔法》は未だに存在が確認されていない未知のスキルのため詳細は分からないけど、語感だけでかっこいいのが分かる。うん、このブラッドメタル・インゴットは使うことにしよう。
『……はっ、実験に夢中でマギアサーベルの改造をすっかりと忘れてた!』
ふぅ、と私は息をついて、《上級鍛冶》スキルを駆使してブラッドメタル・インゴットと、ライトニングメタル・インゴット、セイントメタル・インゴットの数を増やしていく。
新しいマギアサーベルには、この三種のインゴットを使おうかな。さて、形やギミックはどうするべきか。
私はトンテンカンと鎚を振るいながら、頭の中で新しい武装について考えを巡らせるのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




