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第百十二話 サラマンドラ大鉱山

サラマンドラ編続きです。

それでは引き続き本作品をお楽しみください。

 サラマンドラ大鉱山のある鉱山街には、他の街区と違って出入りする際に向かう場所に応じた採掘証明書が必要になる。これには、無許可で入り込んで盗掘することを防ぐ目的があるようだ。

 私たちは鉱山街の入口近くにある鉱山役場で証明書を発行してもらい、無事に上級鉱山に入るための上級証明書を手にすることができた。


 上級鉱山に入るためにはサラマンドラへの所属が必要になるって話だったけど、これは役場で所属申請を出すだけでサラマンドラに所属したことになるという。その流れで許可証も発行してもらい、いくつかの諸注意を確認した私たちはサラマンドラ大鉱山へと足を踏み入れたわけだ。


「見た目は他の鉱山とあんまり変わらねぇか?」

『んー、そうみたいだね。入ってすぐはやっぱり下級鉱山ばっかりだ』

「ま、これだけの鉱山が屹立してるというのは、それだけで凄いとは思うけどね」


 いくつもの鉱山で構成されたサラマンドラ大鉱山は、一つの大通りに鉱山へ向かうための小さな道が、木の枝のように繋がっていた。この左右に別れた道の先には、それぞれ採掘可能な鉱山があるという話だ。

 私たちの目標は上級鉱山なので、このまま大通りを進んでいくことになる。

 道中はモンスターの類いも出ないので、山が連なる景色を眺めながら歩いていく。この部分だけ切り取ると、まるでピクニックにでも来たみたいだね。


『種族はドワーフが多いけど、人もエルフも獣人も、ある程度の数はいるみたいだね』

「まぁ、どの種族でも金属ってのは重要なもんだ。確かに、鉱石を掘るエルフってのはあんまりイメージにないがな」

『しっかしでけぇ山だらけだな。これが全部鉱山なのか?』

『全部が全部、ってわけじゃないみたいだね。中には火山なんかも混じってるって話だよ』

「火山……温泉もあるという話だけど、街中にそれっぽい施設は見かけなかったね?」

『確かに。戻ったら温泉のことも確認してみようか』


 私たち魔機人(マギナ)が入れるかどうかも確認しないといけないし。電気で動いてるわけじゃないから、入ろうと思えば入れるはずだけど……この身体で温泉のあの感覚を味わえるのかどうかは謎だ。

 各々くだらない話をしつつ、見える景色が下級鉱山から中級鉱山に変わり、中級鉱山から上級鉱山に変わっていく。

 中級鉱山まではある程度の人の動きがあったものの、上級鉱山の辺りには動いている人影はあまりない。と言うより皆無と言っていいレベルだ。


『さすがに上級鉱山ともなると、人がいないね』

「まぁなぁ。上級鉱山からは強力なモンスターが出るから、ある程度戦える力がないと許可証を発行できないって言ってたもんなぁ」

『その点私たちは、戦う炭鉱夫だから問題ナッシングだね』

『ん、たんこーふ』

『そりゃ、うちのギルドの連中、ほとんどが採掘スキル持ってんだぜ? 炭鉱夫ギルドって言われても違和感ないね、あたしは』

「その割には物騒なもんを色々と持ってるがな」

『ははは。さて、どの上級鉱山に入ろうか?』


 サラマンドラ大鉱山に存在する上級鉱山の種類は、およそ七種類ほど。どこを選ぶかで採掘内容が変わったりはしないみたいだけど、あんまり現地の人がいないところを選びたいよね。

 うちのシマでなに勝手に掘ってくれてるんじゃあ! なーんて言われてプレイの邪魔になるのもあれだし。

 まぁ、うちのシマもなにも、サラマンドラ大鉱山は国の管轄だから関係ないわけだけども。そこはほら、気分的な問題っていうか?

 そもそも上級鉱山には滅多に人は来ないらしいけど。


「んー、外にいるやつがいないからどの鉱山にどれだけ人が入ってるか、なんて分かんねぇぞ?」

『ですよねー。まぁ、好きなところに入ろうか。PT(パーティー)どう分ける?』

「とりあえずカノンとクラリスのそれぞれのPTに、親方たち整備班(メカニック)が二PTだとすると、残りは私とミオンにレンとアイだね」

『じゃあその分け方でいこうか。ここから先はPT毎に自由探索ってことで。かいさーん』


 ざわざわとそれぞれのPTで集まっていくギルドメンバーたち。

 私はヴィーン、レン、アイちゃんの三人とPTを組んで、四番上級鉱山と書いてある鉱山へと歩みを進める。

 並び順は、先頭から私、アイちゃん、ヴィーン、レンの順番だ。

 近接も遠距離も行ける私が真ん中の方がいいんじゃないかと思うんだけど、ギルマスは前がいいとの満場一致の意見でこうなった。

 それにまぁ、このメンツはうちの高校のVRゲーム同好会のメンバーだし、気の置けない間柄でもあるからね。くだらない話や世間話などをしつつ、先へと進んでいく。


 私は先頭ということで、ブランシュヴァリエソードを持って前方を警戒している。上級鉱山に出てくるモンスターについては、強力なモンスターとしか分かってないから、どこからどう来るかが分からないのが面倒だ。

 入口近くには《採掘》スキルに反応する採掘ポイントはなさそうで、仕方ないか、と奥へ奥へと進んでいく。

 幸いなことに中は一本道で、しっかりと固められた坑道を支えているのは、木枠の代わりの鉄枠だ。やっぱりサラマンドラで木材は貴重なものなんだね。


 入口近くの坑道内には一定間隔でランタンが設置されていて、明かりに困ることはない。しかし、ある程度進んでいくと、鉄枠は置かれているものの、明かりとなるランタンが途中で途切れている場所がチラホラと見える。

 そこからさらに進むと、ランタンの明かりが完全になくなってしまった。どうやらここから先のランタンは、壊されているか使われていないかのどちらかのようだ。

 三人に今まで以上に警戒するように伝え、私はインベントリから光鉱石で作ったLEDライトもどきを取り出した。


 このLEDライトもどきは、直接手で持たなくてもいいように工夫がしてあって、本体のジョイントを少し弄ると魔機人の肩に取り付けられるようになる。これを両肩に取り付けて、両腕の動きを妨げないようにした。

 最後尾のレンもインベントリからLEDライトもどきを取り出し、それを左手で持って周囲を警戒しているようだ。まぁ、肩につけたら前方しか照らせないからしょうがないね。


 その状態でしばらく歩くと、一際大きな空間に出た。

 ライトで照らしてみると、この部屋は半径10メートルほどのドーム状の部屋になっているようで、壁際の方にいくつかの穴が空いていることが分かる。その先が続きの坑道になっているんだろう。

 ライトで周囲を照らしつつ歩みを進めていくと、《直感》スキルに反応があった。


『みんな、上から来る!』

「散開!」


 私の警告にヴィーンが指示を出し、全員でバラバラの方向に飛び退る。その後、私たちのいた空間をなにかが引き裂いていった。

 ライトを当てて見てみれば、それは巨大なコウモリだった。

 天井の隅の方に隠れていたのだろうか。そのギラりとした足の爪が私たちのいた地面を裂き砕いていた。

 1メートルほどもある大きな翼をはためかせ、その巨大なコウモリは醜悪な顔をこちらに向ける。どうやら、完全にロックオンされているみたいだ。


『ちっ、まだまだいやがるぞ、このコウモリ!』

『いち、にー、さん……いっぱい』

「早速のお出迎えだ! 各個撃破でいこう! ダメそうならその都度報告!」

『はいよっと!』


 ヴィーンに返事を返しつつ、目の前の巨大コウモリに向けてブランシュヴァリエソードを一閃。その切れ味はやはり凄まじく、飛んで逃げようとしたコウモリの片翼を完全に切り落とした。


『ふっ!』


 バランスが崩れて飛び立てなかったコウモリはその場に転倒し、私はその隙を逃さずにコウモリの首を剣ではねとばした。

 粒子に変わっていくコウモリから視線を外し、次のコウモリに向かって剣を振り下ろす。


『これで二匹目っと……うわ、まだまだいるねぇ』


 一体どんなに潜んでいたんだと愚痴りたくなるくらいの数が、ドーム状の部屋の中にひしめいていた。これは、切っても切っても埒が明かないね。

 コウモリの首を十数回は落としただろうか。それは突然やってきた。


「っ、さっきのコウモリの親玉が出てきた!」

『嘘だろぉ!? あれよりも大っきいってのか!?』

『むぅ、さすがにめんどくさい』


 ドーム状の天井から現れたのは、先ほど戦っていたコウモリを二倍くらい大きくした、特大コウモリ。頭の上にHPゲージが出てないからボスじゃない普通のMOBかな。強MOBってやつ?

 私たちに向けて耳障りな奇声を上げるその特大コウモリは、ドームの天井付近で滞空したまま、聞くに耐えない声を発し続ける。もしかしてこれは、超音波攻撃みたいなものなのかな?


『任せて! クリスタルウィンンング!』


 降りてこないなら、こっちから出向いてやる!

 私は鉱山で採掘するには邪魔だからと畳んでいた翼を展開し、結晶翼(クリスタルウィング)を現出させ空中へと飛び上がった。


『てぇぇぇぇいっ!』


 瞬く間に同じ高さに上昇した私はブランシュヴァリエソードを振り上げ、他のコウモリと同じようにその翼を断ち切る。

 片方の翼がなくなったことでバランスが取れなくなった特大コウモリを、背中側から蹴りつけることで地面へと突き落とす。


『貰ったぁ!』


 そこへ大剣を振りかぶっていたレンが近付き、特大コウモリを一刀両断。それは光の粒子に変わっていき、私たちにドロップアイテムを置いて消えていった。


『きしゅうはめんどうだけど、ほんたいはざこ』

「ふむ。知らないモンスターだから危ないかもと思ったけど、どうやら杞憂だったようだね」

『まぁ、これでも私たちの武装ってチートレベルだからね……』

『まぁなぁ』

『さてさて、ドロップアイテム確認のお時間です……んー、コウモリの翼膜とか今更使い道あるかな?』

『よくまくなら、わいばーんのがある』

『そうなんだよなぁ。あ、今のコウモリ、小さい方がケイブバットで、大きい方がビックケイブバットだってさ』

「洞窟コウモリ……そのまんまだね」

『ふう。どうやらこの部屋にも採掘ポイントはなさそうだし、ちゃっちゃと次行きますか!』

『さんせーい』


 サラマンドラ大鉱山での初戦闘を終えた私たちは、希少な鉱石を目指して新しい道を進んでいく。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

続きもどうぞお楽しみください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 古いマンガで農業をする為にロボットになったおじいちゃんがバトルするマンガがあって、温泉に入浴しているシーンが在りました。参考までに書き込んでおきます。
[一言] ここまではすんなり来てるけど鉱山に危険が伴うのは必然だけど出てくるのが蝙蝠では酷く今更感があるな(ʘᗩʘ’) 鉱山関連の魔物なら蝙蝠、ゴーレム、鉄喰らいでミミズかモグラかな(?・・) キ…
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