第百四話 デビルロイド・グレモリー
続きです。
それでは引き続き本作品をお楽しみください。
『さて、今日も張り切って続きを作っていきましょー!』
月曜日。今日はひたすらフリファンをやるつもりだったので、学校ではなく家に帰ってからログインしている。
あ、兄さんにはフリファンに籠ることはきちんと連絡済みなので、夜ご飯は簡単に食べられるものを用意してくれるみたい。私も少しは料理を覚えた方がいいかなぁ。
さて、昨日はグレモリーの形をほとんど作ったところで終わってたよね。というわけで早速展開したガレージの中に入っていく。
ガレージの中は昨日インベントリに片付けた状態のまま止まっているので、さっさと続きをやっていこう。
グレモリーの身体を作るのはいいんだけど、なんの武装もないのはちょっといただけないよね。えっと、グレモリーってどんな攻撃してたっけ……?
ああ、ゲロカスビーム……さすがに口からビームを放つのは……ナ〇パじゃあるまいし、女の子(?)にはちょっとさせたくないよねぇ。
んー、じゃあ手の甲と手首を少しいじって、そこから小型マギアライフルとマギアサーベルを展開できるようにしよう。
ヴ〇イガンの機体みたいに手のひらに作ることも考えたけど、こう、カションって動いて展開した方がかっこいいからそうすることにした。
ライフルとサーベルの口は同じで、使用する場合はグレモリー自身に切り替えてもらう形にしようかな。別々のものを入れるよりも一つにまとめた方が強度も出ると思うしね。
あとは……悪魔なんだから、悪魔っぽい翼もあった方がいいかな。
こう、普段は収納されてるけど、有事の際にはバシュン、って飛び出すみたいなやつ。折りたたみできるフロートウィング方式で大丈夫かな。
形状は、記憶の中のグレモリーを参照。うん、なんかこんな感じだった気がする。収納場所は、腰の辺りでいいかな。
あとは、細かいところを調整して……完成!
翼を収納した状態のグレモリーの入れ物……デビルズメモリを入れるからデビルロイドでいいか。デビルロイド・グレモリーだ。
デビルロイドの胸部分を開き、インベントリから取り出したデビルズメモリをセットする。
瞬間、メモリの模様が輝き、その光がデビルロイドへと伝播していく。
自動的に胸部パーツが閉じられ、生体パーツで作られた形のいい胸がポヨンと揺れる。うむ。
ヴン、という音と共にデビルロイド……グレモリーが起き上がった。
『ん、んぅ……ん!? なんか身体が動かしづらい……って、なにこれ!?』
『やぁ』
ビックーンと跳ね起きてワタワタしているグレモリーに、片手を上げて話しかける。なんだろう、主人公を改造した博士の気分を味わえるね。
でも、なんか口調おかしくない? イベントの時はもう少し大人っぽい感じだった気がしなくもないんだけど。
『あ、どうも……って、あなたはあの時の!』
『記憶、あるんです?』
『そりゃもちろん……って言いたいところだけど、残念ながらあなたたちに負けてからの記憶はないわね。気付いたら、えっと……この身体、なに?』
『私が作った、限りなく魔機人に近い身体、かな。知ってるか分からないけど、私たち魔機人は魔法が使えないからね。あなたを復活させるためには、そうやって機械の身体を作るしかなかったの』
『ああ、そういう……んー、最初は動かしづらいって思ったけど、慣れれば便利ね、この身体』
『機能の説明、いる?』
『んー、お願い』
キャラの変わったグレモリーに若干驚きながらも、私はデビルロイドの使い方、性能などを説明していく。
『ふむふむ。ここをこうやると銃口が伸びて、こういじるとサーベルが出てくるわけね』
『ちょっと素材が足りなくてそこそこの身体しか作れなかったけど、大丈夫?』
『全然。というより、感覚的にはあの時よりも強くなってる感じするわ』
『えっ』
『もちろん体力とか筋力とか違う部分はあるけど、身体の使いやすさと軽さはこっちの方がダンチね。煩わしい黒の気配も消えたし』
そう、笑顔を浮かべながら肩をぐりぐり動かすグレモリー。
ん、今グレモリーの言葉の中に気になるのがあったね。煩わしい黒の気配……これって、やっぱり暗黒世界からの者の瘴気というか、魔力を浴びてたってこと?
いきなり設定が複雑化しすぎじゃないですかね運営さん……最初は悪魔が敵かと思ったけど、本当の敵は悪魔ではなく暗黒世界からの者だった、みたいな。
『それで、私はどうやってグレモリーと契約すればいいの?』
『契約? なに言ってるのよ。もう契約は終わってるでしょ?』
『えっ、もう終わってるの?』
『うん。だって、終わってるからこうやって私が動いてるんじゃない』
うむ、わからん。こんなことなら、悪魔の初召喚の時のことをナインさんに聞いとくべきだったかな……いや、そもそも書とメモリだと召喚方法が違うから、聞いても意味なかった気がするけど。
『まぁ、こんな身体に召喚されたことがなかったから、最初は驚いたんだけどね』
『でしょうね……っと、そうだ。これは聞いとかないとグレモリーの召喚可能時間はどれくらい?』
『え? 特にないけど?』
『え、あ、特にないの? つまり、ずっと召喚しっぱなし?』
『んー、そうね。このデビルズメモリ……だっけ。これをこの身体から抜き取らない限りはだけど』
『つまり、メモリを挿入することで召喚、抜くことで送還っていう認識でオッケー?』
『オッケー』
ははぁ。なるほど。
魔法を触媒にして呼び出すと、その魔法が悪魔の身体を構成する形になって、魔力が尽きるまでって制限がつくけど、元からある身体に呼び出した場合はその限りじゃないと。
『ま、この身体はなぜか魔力が消費したそばから増えていくから、ずっと召喚しっぱなしでいられるって感じかな。不思議な感覚』
『ああ。それ私が付けた《魔力自動吸収》ってスキルだね』
『《魔力自動吸収》!? へぇ、魔機人ってそんなスキルもあるんだ』
『そうでもしないと、すぐに魔力が切れてガス欠になっちゃうからね』
『ふーん。でさでさ、もしかしてこの身体ってその、魔機人みたいに後から強化とか、新しく作るとかできるの?』
『イエス。もっといい素材を手に入れたらアップデートしてくよ』
『やたー!』
うーん、可愛い。これがあのゲロカスビームと同じ悪魔なのね。丸くなったというか、キャラが違いすぎるというか。
まぁでも、いい戦力になることは間違いないね。デビルロイドで成功したから、それを応用したものとかも作れそうだし。
さて、これでこの大陸でやることも終わった……よね?
いやね。なんか忘れてる気がするんだよねぇ。グレモリーの本体を回収して改修したし、お土産のビールの実も採取したし……あっ。
『そうだ、クリムちゃんに会わないと』
『クリムちゃん?』
『うん。この大陸の山脈区域のさらに奥に住んでる、上位翼竜のクリムちゃん』
私がそう言うと、グレモリーはギョッとした顔で話しかけてくる。
『いや、上位翼竜って……下手したら上位竜種よりも強いって言われてるヤバい翼竜じゃん。昔、上位だろうと翼竜は翼竜とか言ってた上位竜種が半殺しになったって聞いたことあるけど……』
『なにそれこわい』
確かにクリムちゃんからはただならない雰囲気を感じたけど……まさか、上位の竜よりも上の存在だったなんて。
そういえば、第一回のイベントで戦ったドラゴンは、どの階級の竜種なんだろうか。さすがにあれで上位ってことはないと思うんだけど。
『なんでも、焔と氷を手足のように扱うことから【氷焔の翼竜女帝】と呼ばれたこともあるとかないとか』
『紅蒼翼竜の別名かな……って言うか、グレモリーはどこでそういう情報を見聞きしてるの?』
悪魔ってみんな物知りだったりするのかな?
長い時を生きてるから……とかなのかな。よく分からない。
私の問いにグレモリーは、当然のことのように言った。
『そりゃ、私たちにはDDBがあるからね』
『DDB!? なにその……なに?』
『簡単に言えば、悪魔ならいつでも閲覧できるウィキ〇ディアみたいなものかな。まぁ、この状態……黒い気配に侵食されてない状態でしか使えないけどね。一種の防犯装置みたいな』
『ほえ〜』
悪魔にもそんな能力……能力でいいのかな。いいか。そんな能力があるんだなぁ。
私はDDBのことをゲームの攻略と言うよりかは、設定というか、このゲーム世界のことを知れますよー、みたいなものだと思ってる。中には有用な情報もあるかもしれないけどね。
『ま、私はあなたをマスターとして契約してるから、あなたの指示に従うわ。その……クリムちゃん様がいる場所に行くなら、ついて行く』
『ありがとう。じゃあ飛行練習も兼ねて向かおうか』
『飛行? ……この身体、空を飛ぶこともできるのね……機械の身体って、結構便利ね』
『生体機能もつけてるからご飯も食べられるよ』
『マスター! あなたが私のマスターです! ご飯サイコー!』
『え、えぇ。なにそのテンションの上げ方……』
『いえ、魔法を触媒にした召喚方法だとご飯が食べられないもので……』
『あー』
私はグレモリーとの会話を楽しみつつ、ガレージをしまって工房を後にする。
次の目的地は、山脈の奥地、上位翼竜が住まう場所。
明日も学校があるから、あまり時間はかけたくないね。ささっと行ってクリムちゃんの用件を聞くことにしよう。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




