第百三話 デビルズメモリ
続きです。
それでは引き続き本作品をお楽しみください。
さて、これはどっちを選ぶべきかな。
完全版のグレモリーの書か、謎のアイテムであるグレモリーのメモリーか。
……なんて、答えはもちろん決まってる。
グレモリーの書は、恐らく今まで通りの悪魔の書と同じスキルオーブ。そして、なんらかの方法で悪魔と契約して、ナインさんのように悪魔を召喚することができるようになる。
だけど魔機人は魔法が使えない種族。恐らく、悪魔の召喚に必要な魔法を使うことすらできないだろうね。
だから、私が選ぶべきはグレモリーのメモリー。
多分だけど、これは魔法が使えなくても悪魔を召喚できるようになるか、悪魔の力を借りれるようになるアイテムだと思ってる。
だって、いくら魔機人が強い種族だからって、一種族だけ悪魔の力を使えないなんてゲームとしてアレじゃない?
悪魔の書はいいお金になるけど、今現在お金に困ってるかと聞かれれば否と答える。欲しい素材も現状だとお金を払っても手に入らないようなものばかりだし、先に進めばさらにいい素材が手に入るかもしれない。
だから、使えそうなグレモリーのメモリーを入手するのになんの抵抗もないんだよね。
私は目の前に表示されているウィンドウにタッチし、グレモリーのメモリーを選ぶ。
[注意! グレモリーの書(完全版)とグレモリーのメモリーはどちらか一つしか選べません。さらに、譲渡や売却も不可能です。グレモリーのメモリーを選択しますか?]
・はい
・いいえ
なるほどね。サブナックの書の時にはこんな表示出なかったけど、グレモリーの書に関しては他のサーバーのプレイヤーが手に入れててもおかしくないからかな。まぁ、ここは『はい』一択でしょ。
私が『はい』をタッチするとウィンドウが消滅し、なにも映っていなかったモニターが輝き始める。
その輝きが収まると、モニターの前に一つのアイテムが浮かんでいた。
それはふわりと浮き上がると、私の手のひらにゆっくりと降りてくる。
私はそれをキャッチし、そのアイテムを確認した。
[大事なもの・メモリ]デビルズメモリ(グレモリー) レア度:UR
グレモリーという悪魔の全てが記されたメモリ。彼女を蝕んでいた黒の瘴気は完全に取り払われており、暗黒より解放された彼女は契約者を待っていることだろう。
大きさはおよそ、青リンゴ社のスマートフォンくらいのサイズだろうか。片手にすっぽりと収まるサイズ感だ。
表面にはうっすらと電子回路のようなものが写っており、光を当てるとその回路は様々な色に変わって見える。
裏面にはアルファベットでGremoryと刻まれていて、表面と同じような電子回路もどきの装飾が施されているみたい。
『メモリーって、記憶じゃなくてメモリの方か』
この形なら、グレモリーの書よりも格段に使い道があるね。
私としては、劇場版ガン〇ムOOのティエ〇アみたいな形で召喚したいな。そうすれば、魔機装の中や、工夫すれば常時召喚することも可能だろうと思う。
消費魔力がどれくらいかはまだ分からないけど、ナインさんの場合は悪魔の身体になる魔法にかなりの魔力を持っていかれてるようだった。
私ならどうするか……いや、普通に身体を用意すればいいのでは?
ほら、《パーツクリエイト》なんかでちょちょいっとさ。
問題なのは動力だけど……できることなら魔力結晶炉を使いたいよね。
でも、魔力結晶炉は元々持ってた一つとセイリュウオーさんに貰った一つしかない。これはちょっと現実的じゃないよね。
ってことで作戦変更。魔導石を連結させて一つの大きな魔導石にして、それを動力源にすればとりあえず問題はなさそうだ。
私の機体と同じように《魔力自動吸収》を付ければ動く分には問題ないだろうし、仮に戦闘があるなら私が魔力を供給すればいい。
よぅし、色々アイデアが浮かんできたぞ!
早速戻って製作を……いや、別に戻る必要ないよね?
だって私にはガレージがあるじゃないか!
というわけで早速ガレージを展開。その中に入って扉をロックする。
デビルズメモリを机の端の方に置き、倉庫とインベントリの中から使えそうな素材を取り出していく。
各パーツは作ったことがあっても、それはあくまでもプレイヤー用だからね。こういうNPC用のパーツ……この場合、機体でいいか。機体を作るのは初めてだから緊張するなぁ。
んー、なにか忘れてる気がするけど……とりあえず今はグレモリーの機体作りだ。
『まずは大事な胴体から作っていこうかな』
私は記憶に残っているグレモリーの姿を思い出す。その姿を資料に、新たな身体を作っていくわけだ。
まずは魔導石を連結させるところからかな。使う魔導石は八九式魔導石でいいだろう。ここは贅沢にパーッと使っちゃおうか。
私は取り出した七つの八九式魔導石を研磨し、極化させていく。それを七回繰り返して、一度脇に置く。
さて、次は動力炉を守る心臓部を作っていこう。ブラックミスリル……と言うより魔導黒銀を使いたいところだけど、残ってるのはボックスで増やす予定のインゴットだけだから、ここは我慢だ。そこで今回使うのは、在庫が余ってるミスリルとマギアリウムの合金インゴットだ。これならまだ在庫が余ってるし、強度の方も申し分ない。
まぁミスリルもマギアリウムも、現在出回ってる素材としては最上級に近い素材なんだけど……その、人間上を知っちゃうとどうしても、ね?
ん、んんっ。ともかく、《パーツクリエイト》の中に合金インゴットを突っ込んで、形を整えていこう。さらに並行して魔鉄でフレーム部分も組んでいく。
それらの作業が終わって《パーツクリエイト》から取り出し、一つの魔導石の周りに六個の魔導石を置く形で心臓部パーツを作る。
魔鉄自体の魔力伝導率がいいから、わざわざケーブルで繋ぐ必要がないのはありがたいね。ケーブルって今ある素材だとそこそこのものしか作れないし、多めに魔力を流したら断線する可能性があるからね。使わないに越したことはない。
心臓部が作れたら、あとはそれにフレームパーツを組み込んで、人の形を作っていくだけだね。
他のパーツも所々に八九式魔導石・極を使うけど、作り方はそんなに変わらないのでちゃっちゃと作っていこう。明日は月曜日で学校があるから、できる限りのパーツを今日中に作っておきたいな。
全身のフレームパーツを組み上げた後、基本となる装甲部分を取り付けていく。ここの部分の素材もミスリルとマギアリウムの合金インゴットを使っていこう。
あとは、胸の部分にデビルズメモリを挿入できるギミックを仕込んで……っと。
最後に胸と口を生体素材で作って、細かい形を記憶の中のグレモリーとすり合わせて整えていく。
ある程度の完成が見えてきたところで時間が来てしまったので、ログアウトすることにした。
明日はグレモリーを完成させて、召喚実験……いや、起動実験かな? をやりたいね。
「うわ、ゲームから戻ってきた瞬間に眠気が……でも、ご飯は食べないと……」
襲い来る眠気と戦いながらご飯を食べた私は、ベッドにダイブした後すぐに眠ってしまうのだった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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