第九十八話 VS朱雀戦②
朱雀戦続きです。
話タイトルにいつも悩む今日この頃……なにが正解なんだろう……。
それでは引き続き本作品をお楽しみください。
『離れててもチリチリとしやがる……この身体だと、お互いに相性が悪いな』
『ローリングフレイム……分かりやすくローリングって言うけど。あの攻撃で広範囲が朱雀の炎に焼かれちゃったね。あれだけ用意した【アクアボール】も消されちゃってるし』
『これからはローリングが来る前提で戦いを進めねぇとな。そうなると、一番楽なのは……【アクアレイ】か』
事前に【アクアボール】を用意しておく戦略が取りづらくなると、アンドラスの戦い方にも気を付けないといけない。【アクアレイ】なら、発動から発射までが短くて威力が高く、さらに着弾速度も早いからこの場合で言えば有効的にも思える。
でも、【アクアボール】と比べて消費MPが多いのが難点だ。【二重詠唱】を使用したとしても【アクアボール】の方が燃費がいい。
カヴィザさんも【アクアレイ】は使えるらしいから術者に関しては問題ないけど……大幅な軌道修正が必要かもね。
ローリングを終えた朱雀は、その場で大きく翼を翻すと、頭上にいる私たちに視線を向けてきた。どうやら、地上にいるナインさんたちのヘイトはかなり低いようだ。
しっかし、翼をばさばさする度に熱風やら熱気やらを発するのは勘弁してもらいたいんだけどね……なんだか、時間が経てば経つほど感じる熱気が強くなってる気がするんだよね。
アンドラスの方も同じことを思っているのか、熱風を身に浴びながら『まずいな……』と呟いている。
ナインさんたちの方にはあまり熱気やら熱風やらは向かっていないようで、回復も最小限で済んでいるようだ。
戦いを長引かせるわけにはいかないけど、相手が悪いんだよねぇ……あの炎の盾さえなければ、多少無茶して攻撃もできるんだけど。
朱雀がこちらの様子を窺っている隙に、私はインベントリを開く。なにかこの状況を打開できそうなアイテムとか武装とか入ってないかなっと。
んー、有用そうなのは全部売っぱらっちゃったしな……ここに残ってるのは、倉庫にしまい忘れた試作品やらガラクタしかないんだけど……。
ああ、あとは倉庫にしまい忘れた素材とかね。属性鉱石とか、そこそこの数がインベントリに眠ってるよ。
……待てよ? 属性鉱石……弱点は水……武装……鍛冶……パーツクリエイト……って、ああ!
そうだよ! 素材があるなら、今この場で作っちゃえばいいじゃないか!
AG〇システムばりの強力な……強力でなくてもいいんだけど、現状を打開できるくらいの武装なら作れるはずだ!
今必要なのは、アンドラスに補給させる水……じゃなくて、朱雀の炎の盾をどうにかできる武器、または武装だ。
属性は水、つまり水鉱石を使って《パーツクリエイト》で作製すればいい。
必要な時間は、目の前の頼れる悪魔が稼いでくれる。なんなら、ダメージも入れてもらえれば時間も稼げて一石二鳥だ。
私は早速とばかりに、今思いついたことをアンドラスへ説明する。
説明を受けたアンドラスは首を傾げながら半信半疑だったものの、『ま、機姫さまが言うなら大丈夫だろ。マスターとは繋がってるから、こっちで説明しておくぜ』と笑みを浮かべて了承してくれた。
私は朱雀のヘイトから外れるために少し後方へ、アンドラスは朱雀のヘイトを集めるために翼を翻して突撃していく。
アンドラスから話は通っていたのか、ナインさんとカヴィザさんが水魔法でアンドラスをサポートする。
朱雀の方もアンドラスの対応をしつつ私を警戒していたようだけど、なにもしてこないと分かるとアンドラスの対処に集中していった。
『よし、やるか!』
時間はない。だから、多少の粗さは妥協する。これは、私にしかできないことだから。
まずは形。今の私のメインウェポンはブランシュヴァリエソードだから、それを活かす形にしないとね。
となると、同じ剣の形はあまり好ましくないか? 二刀流ってのはかっこいいけど、朱雀の炎の盾を消してから攻撃したい現状だと、あまり得策だとは思えない。
なら、形は銃の形……って、水属性の射撃ができればいいだけなら、わざわざ銃から作らなくても大丈夫だよね。
既存の銃……この場合、マギユナイト・ライフルに拡張装備として取り付けるのが一番丸いかも。
X102-デュ〇ルのライフルに付いてたグレネードランチャーの形を採用しよう。ただ、一回一回取り付けて発射するのは効率が悪いから、ライフルの下部にそれを取り付けて、ウォータービーム的なものを発射させる感じで作っていこう。
素材は水鉱石と、そこそこ丈夫にしたいから魔鉄でいいかな。あとはENを伝達させるためのケーブルやタンクになる魔導石なんかをちょちょいとくっ付けて……。
くっ、時間があれば見た目にも気を配りたかったんだけど…?これじゃあただの無骨な鉄の箱だ。
でも今は戦闘中だから、デザインの手直しは気が向いた時にすればいいだろう。どうせ、今回限りの拡張装備だからね。
ちらりと戦況を確認すると、ナインさんたちが頑張っているようで、既にHPバーの一本目がそろそろ削り切れそうになっている。
手持ち無沙汰だったダグザスさんも遠距離から攻撃できる《両手剣》スキルのアーツを使って貢献しているようだ。その分MPの消費量が多いらしく、連発はしてないみたいだけど。
アンドラスの回復にはカヴィザさんの【アクアレイ】を使用しているようで、その分ナインさんが攻撃に加わっている。
最悪の場合アンドラスを再召喚する可能性も考えて、MPの消費には気を配っているみたいだ。使用するMPの量と回復するMPの量を考えて使用する魔法を考えているみたい。三大ギルドの長は伊達じゃないってわけだね。
私はその様子を尻目に、《パーツクリエイト》から無骨な鉄の箱を取り出す。名前はそのまま、マギユナイト・ライフル拡張装備、ウォータービームガンだ。
私はインベントリからしまっていたマギユナイト・ライフルを取り出して、ウォータービームガンを取り付ける。さすがは《パーツクリエイト》と言ったところで、部品のズレやジョイントサイズの不一致なんかは一切起こらなかった。
カチリ、とトリガーの反応先をマギユナイト・ライフルからウォータービームガンへと切り替えた私は、朱雀の頭上で待機する。
私の姿を認めたアンドラスが私に向かってニヤリと笑い、私はそれに親指を立てることで応えた。
『おらぁっ!』
アンドラスの鋭い右ストレートが朱雀のボディに突き刺さる。苦悶の声を上げた朱雀だったが、すぐさま体勢を立て直しアンドラスへ炎に包まれたその手を伸ばした。
……今だ!
『即興で作ったこいつの出来栄えは如何ほどかな!』
私は朱雀の頭上から加速をつけて、降下しながらウォータービームガンのトリガーを引く。
発射されたウォータービームは思った以上の威力と拡散性を持っており、強い勢いで朱雀の全身を水で濡らしていった。
アンドラスに伸ばした腕の炎も消え去っており、炎のなくなったその腕を軽々と回避していく。
『そこだっ!』
炎の盾も消え去り、無防備となった朱雀の身体にブランシュヴァリエソードを振り下ろす。
突然の出来事に反応できなかった朱雀はブランシュヴァリエソードの一撃をくらって深々とした傷を残し、私は怯んだままの朱雀に追い打ちをかける。
マギユナイト・ライフルを腰の裏にマウントし、腰から引き抜いたマギアサーベルとブランシュヴァリエソードでさらにダメージを加速させていく。
『はあああああっ!』
同様から立ち直った朱雀が再び炎をまとうものの、私はそれを持ち替えたウォータービームガンで除去。守るもののなくなった朱雀の身体を両手の剣で切り刻んでいく。
このままではマズいと思ったのか、朱雀が翼を翻して逃げようとするものの、いやらしい笑みを浮かべたアンドラスに背中を殴られ逃げることは叶わず、さらにダメージを負う。
朱雀の残りHPバーは一本と半分。決着の時は着々と近付いていた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




