第九十一話 ローグライクダンジョン
長くなるのかならないのか、未だに決めていないダンジョン攻略の続きです。
それでは引き続き本作品をお楽しみください。
「では、私たちも向かうとしましょう」
ナインさんと私、ダグザスさん、他三名のPTは、三方面にある扉のうち、ド真ん前の扉の先を探索することになった。
私としてはどこからの探索でも構わなかったので、ナインさんの言葉に頷く。
フォーメーションとしてはダグザスさんが一番前で、他三人とナインさんが後に続き、私が殿を務める形になる。
炎の扉を通り抜けると、なにやら膜のようなものを通り抜けたような、不思議な感覚がした。
ステータスを確認してみても特に異常はなさそうで、他のみんなも通り抜けたような感じはしても身体になんの異常もなかったので、先に進むことに。
『なんだか気味が悪いですね』
「私としては、先ほどの感覚は結界の一種を通り抜けた感覚だとは思うのですが……」
『結界ですか……うーん、よくわからないです』
「ま、なにが起こっても対処できるようにしておきましょう」
『ですね』
扉の先は人が二人分ほど並べる細長い通路になっているようで、通路の先には一つの扉が見える。
警戒しつつ進んでみるものの、特に罠などもなく扉の元まで辿り着くことができた。
ダグザスさん扉の先に聞き耳を立ててみるものの、炎のゴウゴウという音で特に物音は聞こえなかったみたいだ。
「行きましょう」
ナインさんの指示で先に進むことにする。
ダグザスさんが扉を開き、他の三人が中に入って部屋の中を確認。特になにもなさそうなので私たちも入ることになった。
部屋の中は特筆することもない正方形の部屋で、今度は正面と右側に扉が見える。
「迷路みたいですね」
「そいつぁ面倒なことで。辺り一面炎の海で方向感覚が狂いそうでさぁ」
『最初の他の二部屋の扉の先も、同じような感じになってるんでしょうね』
「これは、攻略には時間がかかるかもしれませんね」
「……ん、ちょっと待ってくだせぇ。正面の扉からなにか来ますぜ」
ダグザスさんの声に、私たちは臨戦態勢を取る。
恐らくだけどダグザスさんは索敵系のスキルを持っているのだろう。私のスキルでは接近に気付くことはできなかった。
そしてそれは、ご丁寧に扉を開けながらこちらの部屋に入ってくるようだ。
見た目は、騎士だろうか。
身体から鎧に、武器に至るまでその全てを炎で形作られた炎の騎士。
それは私たちの姿を視認すると、腰から炎の片手剣を抜き、私たちに向かって駆け出してきた!
「早速ですか。ダグザス、前は任せましたよ」
「任されたってんだ!」
「他三人はダグザスのサポート。ミオンさんは周囲を警戒しつつ、ダグザスが危険だと思ったら助けてください」
『はいはーい』
私はインベントリからマギユナイト・ライフルを取り出して炎の騎士に照準を合わせておく。
周囲を……というより、左以外の三方向の扉を警戒しておけばいい感じかな。
突然部屋の中にモンスターがPOPするなんてことはなさそうだしね。
「ちっ、炎の武器と打ち合ってたらこっちの武器が持たねぇぜ」
ダグザスさんは炎の騎士の片手剣と打ち合ってたみたいだけど、炎の剣は見た目通りの高熱を持っているらしく、ダグザスさんの使っている両手剣の耐久値がエグい勢いで減っているようだ。
ダグザスさんはそれを嫌って直接炎の騎士を切る事にしたみたい。
重い全身鎧をまとっているとは思えない速さで炎の騎士を翻弄し、その炎の身体に刃を突き立てる。
本体の耐久値はそこまで多くないみたいで、剣に貫かれた炎の騎士はあっという間にその姿を消してしまった。
「旦那ぁ、ちょいと俺が前衛を務めるのは厳しいですぜ。毎回毎回こんなに武器を消耗してちゃあボスにたどり着いた頃には徒手空拳になっちまう」
「ふむ。それは厄介ですね」
『あ、なら私が前衛をやりますよ。マギアサーベルなら炎の剣と打ち合っても耐久値が減らなさそうですし』
そう言って、私はマギアサーベルの持ち手を見せる。
剣が炎にやられて耐久値が減っていくって言うなら、そもそも炎の剣と打ち合っても耐久値が減らなさそうな武器で打ち合えばいい。
マギアサーベルなら刀身は魔力でできてるし、まともに打ち合えるだろう。
ま、もしかしたらマギアサーベルなら炎の剣ごと切れてもおかしくないしね。
「なるほど。そういうことでしたらお任せしてもいいでしょうか?」
『大丈夫ですよ。それで、次はどっちに向かいます?』
私たちが来た方とは別に、新たな扉は二つ。
その先も同じような部屋に繋がっているとなると、いつの間にか方向感覚が狂って同じ部屋をぐるぐる回ってる……なんてことにもなりそうだ。
「そうですね……このまま真っ直ぐに進んでいきましょうか。どちらに行ってもやることは変わりませんから、少しでも現在位置を把握しやすい方に行きましょう」
「ガッテンでさ」
『了解』
私を先頭に、他三人、ナインさん、ダグザスさんの順番で進んでいく。
炎の扉は見た目はゴウゴウと燃え盛ってる炎なんだけど、感触自体は普通の扉みたいな感じだね。熱さも特に感じない。
ぐっ、と力を入れて扉を開く。その先には、さっき通った通路と同じような通路が続いていた。
今回の通路は途中で左か右に曲がっているらしく、少し歩いた先に炎の壁が見える。
マギアサーベルとマギユナイト・ライフルを構えて先に進む。
どうやらこの通路は左に続いているらしい。そのまま進行方向に進んで行く。
突き当たりの扉を開け中に入ると、三体の炎の騎士がこちらに向かって剣を構えているところだった。
『ちぃっ!』
私は一番近くにいた騎士に向かってマギユナイト・ライフルのトリガーを引く。
発射されたビームは騎士の身体を貫き、その身体を消滅させる。
なるほど、なにかしらの攻撃を当てれば消えてくれるのかな? ダグザスさんの攻撃でも一回で消えてたしね。
なら、ちゃっちゃと倒しちゃおうか。
残りの二体の騎士もマギユナイト・ライフルによる遠距離攻撃でサヨナラ!
敵がいなくなったことを確認した私は、みんなを部屋の中に招き入れる。
部屋の中の構造はさっきの部屋と同じで、今度は左と前に扉があるみたいだ。
装飾もまるっきり同じで、元の部屋に戻ってきてしまったかのような錯覚も覚えそう。
んー、なんか昔にやったゲームで似たような感じのゲームがあった気がするんだよねぇ。なんだったかなぁ?
「もしかして、全ての部屋がこんな感じなんですかねぇ。迷宮……ですかい?」
「辺り一面が炎の海というのも、考えものですね。これが普通の材質の部屋などであれば、もう少し落ち着けるのですが」
「炎の部屋なんぞ、害がないと分かっていても身構えちまうもんですからねぇ」
迷宮……ダンジョン……不思議な……あっ、そうだ!
ローグライクゲームだ! シ〇ンとか少年ヤ〇ガスとかポケ〇ンとか、そういったローグライクゲームに出てくるダンジョンに似てるんだ!
まぁ、そのゲームだと部屋は完全な正方形だけじゃないし、扉なんかもないけど……それを現実に置き換えたらこんな感じになるんだろうか。
入る度に地形などが変わるローグライクゲームだけど、この炎の宮殿はどうかな?
一回外に出てみないと判断はできないけど、このダンジョンの特徴としてはそれで合ってるはず。
もしかしたら、先に入っていったPTとは違うダンジョンの可能性はあるよね、ローグライクゲーム風のダンジョンなら。
それぞれが別の生成されたダンジョンに潜ってるとか、可能性はありそうだ。
もしかしたら入った場所が違うだけで中身は同じって可能性もあるけどね。そればかりは、直接他のPTに会わないと分からなさそうだ。
ひとまず今までの道順を書き留めておこうとインベントリから紙を取り出した瞬間、手に持った紙が炎を噴き上げる。
『うわわ』
「大丈夫ですか?」
「おいおい、どうしたってんだ」
おどろいて声を上げた私に、ナインさんとダグザスさんが声をかけてくれる。
『いや、ここまでの道のりを紙に書いておこうと紙を取り出したら急に燃えちゃって……』
「なるほど。つまりこのダンジョンの主は、紙なんて使わずにおのれの頭で記憶しろと言いたいわけですか」
「あー、《地図》スキルを持ってるやつは他のPTに回しちまいましたからねぇ。これを頭で覚えるのは大変そうだ」
「ふふ、大丈夫ですよ。これくらいであれば覚えていられそうです」
「マジっすか!? さすがは旦那……」
「ふふ。さっさとこの不思議なダンジョンを攻略して、朱雀さんの顔を拝むとしましょうか」
「おう!」
『ええ!』
私たちは声を上げて頷き合う。
今回のダンジョン攻略はナインさんの記憶が頼りになりそうだね。
みんなと相談した結果、私たちは正面の扉の先に向かうことになった。
このダンジョンには気になる点が多いけど、まずは先に進まないとお話にならないよね。こんなことならユージン兄さんに西の攻略の時の話をもっと聞いておくんだったな。
私たちのダンジョンアタックは始まったばかりだ。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




