第八十七話 マギユナイトリオン・オーヴァウィング
Chapter.7の章タイトルを変えるか未だに悩んでいます。
それでは、引き続き本作品をお楽しみください。
白き騎士、ブランシュヴァリエと名付けたこのパーツは、生産活動においても優秀だった。
いやだってさ、魔力伝導率がまさかのS−だよ?
ブラッドラインの時よりも強く、早く魔力が浸透していくこの感じ、癖になりそうだね。
というわけで私は、ブランシュヴァリエの性能に対する現実逃避に背部パーツの改造に手を出しています。
ちなみにブラッドラインの時の背部パーツは、まず通常の背中のパーツがあって、そこにウィングパーツを新しく接続するっていう方法を取っていた。
まぁ、その方が作る方も楽だし、寝っ転がる時とか、椅子に座る時とか、翼が邪魔な場合でも翼だけインベントリにしまうとかができるから、機能性も抜群だ。
これが実際に自分の身体を動かさない、昔ながらのコントローラー方式ならこんな方法を取らなくてもいいんだけどね。やっぱり常に翼が付いてるのって不便なわけよ。
というわけで、今回もその作り方で作っていこうと思う。それに、いちいち背部パーツ全体をインベントリにしまって、ブランシュヴァリエ自体のステータスを落とすことは避けたい。
さて、まずは基本となる背部パーツだね。
腰の辺りにスラスターが来るように調整して、形を作っていく。
今回もお世話になるのは《パーツクリエイト》スキルだ。もうこのスキルがないと私はこのゲームを続けられる自信がないね。それだけ依存してる。
問題なのはこの基本となる背部パーツにサーベルの類いを付けるか否かなんだけど……うーん、どうしようか。
よし、腰のリアアーマーにサーベルの柄を収納させるようにしよう。背部パーツにはちょっと長めの柄をセットだ。
腰のサーベルが通常のマギアサーベル(強化型)、背中のマギアサーベルがハイパーマギアサーベルってところかな。
基本的な出力はウィングパーツで行うから、背部パーツのスラスターの量はそこまで多くなくていいかな。それでも、動力炉の近くだからかなりの出力が期待できるね。
あとはウィングパーツを取り付けるためのジョイントを付けて……よしできた。
素材としては、余っていた魔導黒銀・インゴットを少量混ぜて、基本的にはミスリル・インゴットとマギアリウム・インゴットの合金で作ってある。
そう、コクーンで作れる試作魔機装と同じ素材だね。これなら、強度的にも問題はないでしょう。
あ、マギアリウム鉱石とマギアタイト鉱石は違う素材アイテムだからね。似てるかもしれないけど、間違えたらいけないから要注意だ。
そして本題のウィングパーツ作製。まずはフレンズたちを一回全部取り外してっと……よし。
『……フレンズが付いてないと、ちょっとみすぼらしいかな?』
立派なウィングバレルがついているとはいえ、ボリューム不足感は否めない。まぁ、今回は色々と試してみる予定だから、まずは分解からだね。
《パーツクリエイト》で、ウィングパーツに使った素材を分解していく。多少量は少なくなっちゃうけど、素材の再利用ができるのは嬉しいね。
まずは基本となるフレームを魔導黒銀・インゴットで作製。
これに背部パーツと合体させるためのジョイントや、動力炉と繋げるためのケーブルなんかを取り付けていく。
そしてある程度の形ができてきたら、今まで空を飛ぶのに使っていた重力鉱石に、イベントで手に入れたミスリル鉱石、ほんの少しだけ余ったブラックミスリル鉱石をそれぞれインゴットにする。
さらにそれらのインゴットを合金化。重化聖黒銀・インゴットを作製した。
この重化聖黒銀・インゴットを使用することによって、今までの重力鉱石の力とミスリル、ブラックミスリルの魔力伝導率が合わさってかなりの効率で空を飛べるようになる。
重化聖黒銀・インゴットをさらに《パーツクリエイト》で加工し、その外面をミスリル・インゴットとマギアリウム・インゴットの合金で整えて、翼の形を作っていく。
現在のイメージ的には、皮膜のない竜の翼だろうか。折りたたむことが可能で、仮にインベントリにしまえなくてもある程度の自由はききそうだ。
そこに改良型八九式魔導石・極を取り付けていく。
フレームウィングパーツに、均等になるように加工した重化聖黒銀・インゴットと改良型八九式魔導石・極を配置する。
一応はこれで本体は完成……だけど、このままだとフレンズを搭載することができないので、少し弄りたいと思う。
フレンズの方の形を少し弄って、このフレームウィングパーツに装甲のように取り付けれられるようにした。これで、見た目もよくなったかな。
ちなみに、右側の翼にソードフレンズ、左側の翼にライフルフレンズを搭載している。さらに、ほんの少しだけ素材を変えたので、ビームの威力も上がっているはずだ。
まぁ、F・ブラッドラインの時と違って、ウィングバレルはオミットしちゃったんだけどね。このウィングパーツに直接武装を取り付けるのは、今後の課題だ。
というわけで完成したのがこちらになる。
[背部・パーツ]ブランシュヴァリエRe:Frame-Ba- レア度:EX 魔力伝導率:S− 魔力保有量:30000/30000 耐久値:30000/30000
DEF△△△ MDEF△△△ AGI△△△△
スキル:《魔力自動吸収》《魔法障壁》
[武装・兵器]マギユナイトリオン・オーヴァウィング レア度:EX 魔力伝導率:S− 魔力保有量:50000/50000 耐久値:20000:20000
ATK△△△△ AGI△△△△
スキル:《魔力自動吸収》《魔法障壁》《変形》《増幅》《形状変化:翼》
へっへっへ……いや、かっこいいなこれ。
スキルの方も、ディ・アムダトリアなどで見たものが多いね。まぁ、このウィングパーツ自体に戦闘力はないけど、リングの技術とかそこら辺も詰め込んでるからね。リングの《増幅》のスキルで一時的にスラスターの出力を上げたりとか。
というわけで早速装備!
『お、おお……やっぱり魔力結晶炉が二つあると、感じ方も変わってくるなぁ。身体が軽い』
オーヴァウィングの可動等もきちんと動くかどうかを確かめ、問題のないことを確認する。おっと、これも【即時換装】に登録しておかないとね。いざって時に使えなきゃ意味ないし。
時刻を確認すると、私が背部パーツ作りを始めてからゲーム内時間でおよそ六時間ほど経っていることに気がついた。うーん、結構熱中してたみたいだ。
私はブランシュヴァリエの試運転にでも行くかと、ガレージの外に出た。すると、私の姿が変わっていることに気づいたギルドメンバーたちが何事かと集まってくる。
『うわぁ、うわぁ、ギルマスですよね?』
『あのツインテールパーツ、間違いなくギルマスだよ』
『ブラッドラインじゃない……新しい機体!?』
『かっこいいーーー!』
「へぇ、随分と変わったもんだね」
「ふむ。見ただけだと分かりづらいが、ブラッドラインよりもさらに性能が上がっているようだな」
『わわっ、ちょっとみんな落ち着いて!』
私のパーツに群がってくるロボスキーたちを落ち着かせて、ブランシュヴァリエについて説明する。
もちろん、ユニークスキル云々のところは端折ってね。
私の話を聞いたみんなは、あの錆び朽ちたパーツがここまで……となにやら黙り込んでしまった。
そして、数人ずつのグループに別れてそのまま話し合いが始まってしまう。
『やっぱりギルマスは凄いなぁ』
『なに言ってんだよ。ギルマスも頑張ってるし、俺らも頑張らねぇと!』
『貴重な素材を湯水の如く……これはゴールデンマウンテンの奥をもう少し探索してみるか……?』
「もしくは、新しい浮遊大陸を探すか? 運営からのアナウンスでサイレント実装された浮遊大陸も多いみたいだし」
『イベントフィールドだったあの浮遊大陸もどこかに追加されたって話だよね。探してみる価値はあるかも』
「んじゃ、人数分のフロートウィングでも作りますかね……」
どうやら私のブランシュヴァリエがみんなの心に火をつけたみたいだ。これはこのままにしても問題はなさそうだね。
それにしても、運営からのアナウンス? なにかあったかな?
私はメニューを開いて運営からのお知らせを確認する。
するとそこには、サイレントでアップデートしたこと、新たな浮遊大陸やアイテムが追加されたこと、イベントの舞台となった浮遊大陸を追加したことなどが書かれていた。
いや、これをサイレントでやっちゃう運営さすがだね……私、全く気付かなかったよ。
うーん、そうだね。ブランシュヴァリエの性能チェックのついでに、イベントフィールドだった浮遊大陸でも探そうかな。
クリムちゃんに来いって言われてるのもあるけど……もしかしたら、グレモリーにも会えるかもしれないね。
私たちが倒したのは、サーバーの数だけいるグレモリーの一体。
どれだけのサーバーでグレモリーを倒したのかは分からないけど、あの最後の言葉を考えるに、この世界のグレモリーはまだ生きている可能性がある。
まぁ、会ってなにかをしたいわけじゃないんだけど……このアイテムについて聞きたいこともあるしね。
私は、黄昏の戦乙女の転移ポータルでホワイトハーバーにあるギルドハウスに飛ぶと、人目のつかないところで一つのアイテムを取り出す。
[アイテム・大事なもの]グレモリーの書
不完全なグレモリーの書。本人の前に持っていけばなにかが起こる気がする。
本来ならスキルオーブになってるはずの書物アイテムが、何故か大事なもの扱いになってるんだよね。
しかも、不完全扱いときた。これは、本人に会うしかないよねぇ。
私はインベントリにグレモリーの書をしまうと、イベントフィールドだった浮遊大陸を脳裏に浮かべて、澄み渡る大空を見上げるのだった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
続きもどうぞ、お楽しみください。




