第八十五話 錆び朽ちたパーツ、修復完了?
魔機人が不遇種属と呼ばれる所以である錆び朽ちたパーツシリーズが、ついにかつての姿を取り戻すときが来た……のか?
それでは、引き続き本作品をお楽しみください。
インゴット複製ボックスと石複製ボックスにそれぞれのアイテムを設置した私は、コクーンで試作魔機装のパーツを作りながら《パーツクリエイト》を弄っていた。
目的はもちろん、錆び朽ちたパーツシリーズを復活させること。
今でこそブラッドラインっていう黒を基調として紅と金で装飾されたパーツを使ってるけど、最初にアバターを作成した時は白を基調として蒼と紫で装飾してたんだよね。
で、仮に錆び朽ちたパーツたちが元に戻るとして、どっちの色になるのかな。
まぁ、十中八九アバター作成時のカラーリングにはなると思うけどね。そうなったら別に名前を考えないといけない。
それもこれも、まずは錆び朽ちたパーツを修復してからだね。
というわけでこちらに取り出したる材料たち。
まずは言わずもがなの改良型八九式魔導石。他の魔導石と同じくいい感じに削ることで性能が上がるみたいなので、削って改良型八九式魔導石・極にしてある。これによって本来の魔力量が10000のところ15000にまで増やすことができた。
ちなみに、削り方をミスって一個ダメにしてしまったのはご愛嬌だ。
次はイベント中の宝箱と、報酬で手に入れたブラックミスリル・インゴットたち。
これは今の《鍛冶》スキルのレベルじゃあまともに扱えないので、直接で弄ることにした。
そして通常のミスリル・インゴット。こちらも用意してある。
そして、手に入れたはいいもののすっかりと存在を忘れていたこの二種類の鉱石。
そう、リングのナーフ時にお詫びで貰った素材詰め合わせセットに入っていたマギアタイト鉱石とヌルタイト鉱石の二種類だ。
ちなみに、存在自体を忘れてたから錆び朽ちたパーツに使えるかどうかはまだ試していない。でもこの二種類の鉱石も、現在の《鍛冶》スキルじゃインゴットにはできてもその先に行けないことが分かっているので、期待はできるはず。
というわけでまずはこの二つの鉱石をそれぞれ複数のインゴットにしちゃおう。
そしてできあがったのがマギアタイト・インゴットとヌルタイト・インゴット。
マギアタイト・インゴットはメインの装甲材として優秀で、ヌルタイト・インゴットは様々なインゴットと合わせることができるため無限の可能性を秘めている。
本来であれば合金になりえない素材同士でも、ヌルタイト・インゴットを間に挟むことで強力なインゴットにすることができるのだ。これは是非とも増やしたいインゴットだね。
マギアタイト・インゴットとヌルタイト・インゴットを一つずつインベントリにしまい、最終的な材料が整った。
まずは全部に魔力を染み込ませる所からだね。これを忘れると仕上がりが大変なことになるので、時間をかけてでもこの作業は行う。
数時間かけて全てのインゴットに魔力を浸透させた私は、改めて全ての素材を《パーツクリエイト》に突っ込んでいく。
さて、と。早速作業を始めていこうか。
まずは、錆び朽ちたパーツのフレーム部分に手を加えていく。
このフレーム部分を、ブラックミスリル・インゴットで作っていこう。
そして全体的にフレーム部分を形成し、次に新たな装甲を作っていく。これには、ブラックミスリル・インゴットとマギアタイト・インゴットの合金を使おうと思う。
この二つのインゴットは普通に合わせたんじゃ合金にならないみたいだけど、こちらには秘密兵器ヌルタイト・インゴットがあるからね。
《パーツクリエイト》の画面上でちょちょいと弄れば、それぞれのアイテム名が変わり、魔導黒銀・インゴットというアイテムになった。
[素材・アイテム]魔導黒銀・インゴット レア度:SSR 品質:A−
本来混じり合うはずのない二つのインゴットが合わさったインゴット。
ブラックミスリルとマギアタイトの特徴を併せ持ち、さらにその長所が伸ばされた逸品。
強度も申し分なく、よほどのものと打ち合わない限りは壊れることはないだろう。
うわ、なんか凄いのできた。
えっと、これももしかしてインゴット複製ボックスで増やせたり……するんだ。じゃあこれも一個取っておかないと……というか、これをフレームパーツにするならマギアタイト・インゴットは全部魔導黒銀・インゴットにしちゃった方がよさそうだね。
というわけで取っておいたインゴットも使ってバシバシ魔導黒銀・インゴットを作製していく。
いやぁ、今更だけど《パーツクリエイト》も中々にチートじみてるスキルだよね。私としては助かってるからいいんだけどさ。
一通りのインゴットを魔導黒銀・インゴットに変えた私は、早速錆び朽ちたパーツの装甲部分を入れ替えるようにして魔導黒銀・インゴットで作製していく。
……おお、完成するとダークグレーだったインゴットの色から綺麗な白と蒼、紫のカラーリングに変わっていったね。これは面白い。
と、作業の途中で連続ログイン時間の期限を伝えるアラームが鳴ってしまったので、ひとまずログアウト。
休憩ついでに水を飲みにリビングに行くと、兄さんがちょうど晩ご飯を作ってくれていたみたいで、一緒にご飯を食べた後に再びログインする。
明日は日曜日で学校は休みだし、一日中フリファンをやってられるね。とりあえず、時間の許す限りこの錆び朽ちたパーツたちを修理していこう。
変形機構は元々付けてなかったから、今回はそのまま錆び朽ちたパーツをなおしていくよ。飛行形態で飛びたかったら装備を変えればいいだけの話だしね。
っと、そうだ。胴体のパーツはちょっといじっておかないとね。
背部パーツに魔力結晶炉を増設してるから、ブラックミスリル・インゴットを加工して……っと。これで背部パーツを装備したら自動的に接続されるかな。
ああ、背部パーツも近いうちに作り直さないと。なんて言ったって今修理……というより、もはや改造に近いんじゃないかと思ってるんだけど、まぁそこはいいか。素材の強度的に圧倒的な差があるからね。せめて強度くらいは合わせておきたいよ。
そんなこと言っても、素材がないんだけどね……しばらくはこのままかな。リアル一日で一個複製されるボックスで地道に増やしていくしかない。
そうして装飾からなにからなにまで、アバター製作時の記憶を辿りつつ全く同じに仕上げていく。もちろん細かいところまでしっかりとね。
変形機構がない分しっかりと内部フレームを取り付けられたから、パーツの単体性能としては今までで一番なんじゃないかな?
あ、今回腕の収納ギミックもオミットしたんだよね。
理由としては、わざわざ収納ギミックを付けて性能を落とすよりも、余計なものを削ぎ落として単体性能を上げたかったっていうのがある。
極限まで強さを追い求めたロボットっていうのもいいよね。まぁ、私はそこにロマンや遊び心ってやつを入れたい派の人間なわけだけど。
一番の理由としては、最悪インベントリから直接出せばいいかなって思ったんだ。収納ギミックとかだと、入れられても普通の長剣サイズがやっとだからね。
それに【瞬時換装】のアーツもあるし。イベントで使わなかったのは、そもそも【瞬時換装】は決められた装備と装備を入れ替えるってものだから、イベントに持ち込めなかった装備が登録されてる以上使えなかったってのが正解。
登録し直せよ、って言われちゃそれまでなんだけど、なんとなく面倒くさくてね……まぁ、グレモリー戦ではインベントリの有能さに改めて気づけたってことで。
そんなこんなで、日付が変わり翌日。
寝不足にならないくらいの睡眠を終えた私は朝食にトーストを二枚食べて、再度ログイン。
ガレージに篭った私は、《パーツクリエイト》の中で全体的に調整を施して、ついに錆び朽ちたパーツが生まれ変わる時が来た。
できあがったパーツ一つ一つに魔力を浸透させて、完成となる。
『できた! ……けど、名前どうしよう?』
私は、完成し輝きを放つ錆び朽ちたパーツ……元錆び朽ちたパーツたちをテーブルの上に並べながら、シリーズの名称を必死になって考えるのだった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。
……名前、どうしようかな……。




