第八十四話 報酬
今回から新しい章に入ります。
またインフレが起こりそうな気配ですが……これからもミオンの物語にお付き合い下さい。
そして、いつも本作品を読んでくれてありがとうございます!
これからも、本作品をよろしくお願いします!
第二回目のイベントが終わり、私たちイベントに参加したプレイヤーはそれぞれイベント開始時に転移した町へと戻っていた。
さすがに現実世界では時間が経っていないとはいえ、それなりにイベントで疲れたこともあって、そこでヴィーンたちと別れた私は一足先にゲームからログアウトして仮眠を取る。
夕方くらいに起きた私は、軽く水分補給をして再びゲームにログイン。
私のアバターが、ログアウトした第二の浮遊大陸西の港町、ホワイトハーバーの広場に出現した。
ゲーム内時間だとまだ日は高そうで、ホワイトハーバーの町はプレイヤー、NPC合わせて活気に溢れている。
『あそこが空いてそうだね』
私は邪魔になるであろう背部パーツを装備から外し、広場に等間隔で置いてあるベンチに座った。
メニュー画面を開き、そこに強調して表示されているメールボックス……ではなく、新たに表示されている[イベント交換リスト]のタブをタッチする。
すると、様々なアイテム名が書かれたリストが目の前に出現した。
ヘッダーの部分には私の名前と、所持イベントポイント、そして、イベントポイント詳細という文字が表示されているみたいだ。
えっと、私の所持イベントポイントは……36575ptだね。
ん、んー? なんか多くない?
私、そんなにポイントを得るような行動をした記憶が……っと、そう言えばヘッダーのイベントポイント詳細を見ればなにがどれくらいのポイントになったかわかるかな。
交換アイテムを見るより先に、そっちを見ちゃおう。
『なになに……一番高いのが、空の頂きに隠された上位種族を見つけたこと、8000pt……これってクリムちゃんのことだよねぇ』
イベントの途中で、高度の高い場所で見つけた謎の洞窟。
その奥で出会った不思議な少女、それがクリムちゃんだ。
まぁ、その正体は紅蒼翼竜と呼ばれる、翼竜の上位種族だったわけだけど。
あ、クリムちゃんにまた同じ場所に来てほしいって言われてたっけ。
でも、イベントフィールドだった場所にどうやって行けばいいんだろう?
……ま、それは一旦置いとこう。今はポイントの確認ってね。
そのままポイントの詳細を確認していくと、意外なことに魔機人の新しいパーツを作ったこともポイントに反映されていた。しかもそれなりの高得点だ。
あとは戦闘での貢献度や、イベント全体での出来事がある程度のポイント化されてるみたい。あ、PKの撃退にもポイントが入ってるね。
気になるポイント詳細の確認を終えたところで、本日の大本命、ポイント交換リストの確認に移る。
私の予想が正しければ、あれは絶対にこのリストに入ってるはずだけど。
リストを表示させた私は、必要ポイント数が多い順にソートして確認していく。
『ログハウス、30000pt……って、これ私たちが使ってたログハウスだ。間取りとかも全部一緒。さすがにホームなだけあってポイント数もかかるもんだね』
まあ、別にホームには困ってないからわざわざログハウスに30000ptも使う必要はないね。次に行こう。
えっと、次は……液晶モニターとキーボード、15000pt。
ああ、設計図を表示させた時のあれだね。
なるほど、ホームに飾ることのできるホームアイテムか。
それでもべつに要らないかな……いや、本音を言えば結構欲しくはあるんだけど、これに15000Ptも突っ込むのはどうなの? って気分にはなるよね。
というわけでこれも飛ばして次っと……これは!
『キタキタキター!』
待ってました!
私の一番欲しかったアレ!
コクーン! これさえあればとりあえず試作魔機装は作れるはず!
ちなみに、試作魔機装だけは通常フィールドに持ち帰ることができませんでした。ぐすん。
というわけで、これは交換確定。ガレージにでも置けば問題ないからね。
一応何個も交換できるみたいだけど、個人で使う分なら一つで十分かな。
ギルドのためにもう一個くらいは確保しておきたさもあるけど、なんとなく親方やアルたちは交換してそうな気がするんだよね。
というわけで一つは確保するとして、残りのポイントをなにに使おうか。
ざっとリストを見てみるけど、余りそそられるものは見えてこない。
いや、高い付与効果の付いた武器とか高ポイントで交換できるんだけどさ。私、魔機人だから必要ないんだよねぇ……。
残り26575ptをなにに使うか……おや?
今は必要ポイントが高い順にソートしてるから、そろそろ三桁くらいの交換アイテムになってきたわけなんだけど。
『ブラックミスリル・インゴット、あるやんけ……』
そう、イベント中に宝箱を見つけてゲットした一点物のインゴット、ブラックミスリル・インゴット。それが一つ1000ptで交換できるみたいだ。
えっと、残りのポイントで交換できる数は、ブラックミスリル・インゴット二十六個か……それだけあれば、パーツ作成にも足りそうな気はするけど。
なんでこのインゴットが交換リストに……あ、もしかしてイベント中に触ったり、入手したことのあるアイテムはここで大体交換できちゃったりするのかな?
リストの他のアイテムを見てみる限り、その可能性が高そうだ。つまり、少なくともこのブラックミスリル・インゴットは私だけが持っているか、他に持っていたとしても少人数。
《鍛冶》スキルで、インゴットを加工するための必要レベルが高かったことを考えると、これは通常プレイでは余り手に入らないアイテムと言っていい。
そして、このブラックミスリルなら、失われしかつての姿を取り戻せる可能性がある。
可能性があるだけで、絶対ってわけじゃないけど……分の悪い賭けは嫌いじゃない、だよね。
そうと決まれば早速これも交換だ。
そして残ったのが575pt。うーん、半端だ。
端数でも交換できるアイテムがあればいいけど……ソシャゲだと大体端数はやっすいゲーム内通貨とかと交換できたりするんだけど、フリファンだとどうかな?
リストを流し見していてふと、私の目に止まったのは一つのアイテム。
質のいい紙×100枚。これが、100pt。
そうだな。私はこれから《製図》スキルを取ってレベル上げをしていかなきゃいけない。となると、書くものが必要になってくるわけで。
500ptで500枚の質のいい紙を手に入れられるなら、それでいいんじゃないかな? 他に欲しいアイテムもないわけだし。
というわけで早速交換。
残りの75ptで何度でも使えるペンと何度でも使える綺麗に消せる消しゴムを交換して、残りポイント数は0。つまりはすっからかんだ。
ま、イベントポイント交換の方はこれでいいかな。
次は、サーバーランキング報酬だね。これは、どうやらメールボックスに直接届いてるみたい。
メールボックスを開くと、サーバーランキング一位おめでとうの文字と共に、様々なアイテムが入っていた。
私の種族が魔機人だからか、ポーションや武装以外の武器など、魔機人に使えないものは入っていない。
代わりに入っていたのは、これまた興味をそそられるアイテムだった。
[ホーム・アイテム]インゴット複製ボックス レア度:EX
ホームに設置することで使えるようになる。
このボックスの中に入れた「インゴット」という名前を含むアイテムを、リアル時間で一日一回複製する。
その際の品質などは、ボックスの中に入れたインゴットに準拠する。
[ホーム・アイテム]石複製ボックス レア度:EX
ホームに設置することで使えるようになる。
このBOXの中に入れた「石」という名前を含むアイテムを、リアル時間で一日一回複製する。
その際の品質などは、ボックスの中に入れた石に準拠する。
いやね。運営さんもとんでもないものを渡してくれたなって思いますよ。
上のインゴット複製ボックスは、まあ便利かなーくらいのアイテムなんだけど、下の石複製ボックスはやばい。
なにがやばいって、「石」という名前を含むアイテムって、魔導石も含まれてるってことなんだよね。
一日一個とはいえ、一番貴重な魔導石を増やすことできる手段ができたことは嬉しい。
あ、インゴット複製ボックスの方も、ブラックミスリル・インゴットを入れておけば貴重なインゴットが一日一個ゲットできるね。これは嬉しい。
あとはそこそこの額のお金と、トロフィーか。トロフィーの方は黄昏の戦乙女の自室にでも飾っておこうかな。
さ、まずは我が家に……黄昏の戦乙女に帰るとしますかね。
そこで諸々のアイテムを設置したら、早速錆び朽ちたパーツの修復作業に入るとしようか。
私はホワイトハーバーのギルドハウスから転移ポータルで、黄昏の戦乙女のポータルへと飛ぶ。
そこから格納庫へと移動した私はそこでガレージを展開し、中へと入っていく。
すぐさまハウジングメニューを操作して、先ほど手に入れたコクーンや複製ボックスなんかを使いやすいように配置していった。
……うん、いいね。なんか、私の城! って感じがするよ。もしくは研究室?
デデン、と鎮座するコクーンたちを眺めながら、私はしばし感慨に耽けるのだった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
続きもどうぞ、お楽しみください。




