第八十三話 第二回イベント エピローグ
第二回イベント、七日目最終話です。
次回掲示板回を挟んで、第二回イベント編は終了になります。
それでは引き続きほん作品をお楽しみください。
それからも宴会は続いた。
酒を飲んで、美味しいご飯を食べて。
時には腕に自信のあるプレイヤーたちがPvPをしたり。
《料理》スキル持ちのプレイヤーたちが限られた食材でどれだけ美味しい料理を作れるか料理対決をしたり。
そうそう、採掘に行ったプレイヤーたちも最終的には宴会に参加している。
彼らはホクホク顔で帰ってきた。どうやら翼竜たちの姿は見えなかったらしく、色んな鉱石素材を発掘できたそうだ。
そんな彼らもビールを飲み、美味しい料理に舌鼓を打っている。
そして時はあっという間に過ぎ去って、第二回イベントの七日目が終わった。
瞬間、私たちの足元に魔法陣のようなものが浮かび上がる。
転移ポータルを使った時と同じく、その魔法陣が光り輝いたと思った時には、私たちは既に別の場所に転移していた。
『わぁ』
「ふむ、これは……」
「綺麗ですね……」
私たちが連れてこられたのは、全周囲に星々が瞬く宇宙空間みたいな場所だ。
そこに半透明の円形の足場みたいなのがあって、私たちは全員その足場の上に立っているようだった。
宇宙空間みたいな、って言ったのは、どうやら重力は普通にあるみたいで、変に浮き上がったりはしなかったから。
ふと周りを見れば、私たちの他にも半透明の足場に乗ったプレイヤーたちがいる。
どうやらそれぞれのイベントサーバーに振り分けられたプレイヤーたちが集められているようだ。その証拠に、今も空間が光り輝いて新たなプレイヤーを連れてきている。
足場の数は、四十は超えているだろうか。なにもない空間を中心に、円を描くように私たちは集められた。
「お待たせいたしました。イベント参加の全プレイヤーが揃いましたので、これより第二回イベントの結果発表に移りたいと思います」
空間全体に響くように声が聞こえてきたと思ったら、そのなにもない中心の空間に二人の男女が現れた。
そのうち、男の方が口を開く。
「まずは、自己紹介から。今回のイベントの運営に関わらせてもらった大竹だ。七日間に渡るプレイヤーたちの頑張りを、余すところなく見させてもらった」
「私は運営一号……ンンっ、ではなく、水沢です。まず、全体のサーバーランキングの発表からしていきたいと思います。お疲れのところ申し訳ありませんが、ぜひお付き合いください」
なんだろう。うちのサーバーのプレイヤーたちの水沢さんを見る目が妙に生暖かい。もしかしてどこかで面識でもあったんだろうか? んー、分からん。
そして発表された全体のサーバーランキング。
四十位からの発表らしく、水沢さんにサーバーを呼ばれる度に悲壮感溢れる声が聞こえてきた。
私たちのサーバーは確か、第十一サーバーだったね。
その後も次々にサーバーが呼ばれていくも、私たちのサーバーは呼ばれていない。
あれだけみんなで頑張ったんだ。それなりの順位にはなってほしいけど。
どうやらそう思ったのは私だけじゃなかったみたいで、第十一サーバーのみんながソワソワし始める。あのヴィーンですらも他のサーバーの名前が呼ばれる度に安堵の息を漏らしているくらいだ。
そして、最終的に残ったのは五つのサーバー。
「ここからは、各サーバーのランキング一位の方を紹介しながら進行したいと思います。それでは、第五位!」
大竹さんがそう言うと、どこからかドラムロールの効果音が聞こえてきた。そう、あのドゥルルルルルってやつ。
ごくり、と誰かが唾を飲み込む。
そして、デン! という大きな音と共に宙に浮かぶ巨大なモニターみたいなものにプレイヤーのドアップ映像が流れた。
『うぉ、俺か!?』
そこに映ったのは見覚えのない男性プレイヤー。そしてありがたいことに声も届けてくれるみたいだ。
まぁ、私たちのところは多分みんなをまとめたカンナヅキさんだろうから特に気にすることもないか。まさか、ね。
「第五位は第八サーバー! サーバー内イベントポイント一位は、サリエルさんです!」
『うぉぉぉぉ! やったぜ!』
サリエルという男性プレイヤーは全身で喜びを表しているようで、周囲のプレイヤーからも喜びの声が聞こえてくる。
「なお、サーバーランキング五位から特別なアイテムを贈呈いたしますので、通常フィールドに戻った際にご確認ください」
『やったぜーーーーーーー!』
サリエルさんはその言葉を聞いて飛び跳ねるように喜んでいる。周りのプレイヤーもサリエルさんを持ち上げてバンザーイと胴上げを始めてしまった。
イベント入賞だし、そうなるよね。
それに、私としてはその特別なアイテムとやらがとても気になる。
「続いて第四位!」
再びのドラムロール。そしてサリエルさんの中継が終わったのか途端に静まり返る空間。
デン! とそのモニターに映し出されたのは、私もよく知るプレイヤー、ナインさんだった。
『おや、私が四位ですか』
「第四位は第二十三サーバー! サーバー内イベントポイント一位は、ナインさんです!」
『どうも、どうも』
ナインさんはサリエルさんほど喜んではいなさそうだけど、あれは内心でかなり喜んでるね。
ナインさんはあまり感情が表に出てくることが少ないんだけど、今めっちゃ笑顔だもん。満面の笑みって感じ。
「続いて第三位!」
もはや定番になったドラムロール。
そしてみんなが固唾を飲んで見守る中、デン! という音と共にモニターに表示されたのは、見間違うはずもない、漆黒の機体。
『よもや、我か?』
「第三位は第三十九サーバー! サーバー内イベントポイント一位は、えっと、これでいいんです? †漆黒の叛逆者†、ダリベさんです!」
『ふむ。三位とは光栄だ』
『ダーリべ! ダーリべ! ダーリべ!』
『光栄だが、これは我だけの功績ではない。これは、我々全員で掴み取った勝利だ!』
『おおおおおおおおおお!』
モニターから顔を背けるように首を動かすダリベさん。
そんな彼の周りにいるプレイヤーからはダリベコールが止まらないようだった。
なんかもう、ダリベさん自身がダリべって呼ばれることに抵抗なくなってきてるよね。最初に言い出したの私だけどさ。
というより、なんかすごい人気者になってない? 一体第三十九サーバーでなにがあったんだろう……気になる。
「続いて第二位!」
そうだ。残るサーバーは二つ。
一つは私たち第十一サーバー。そしてもう一つが、第十二サーバーだ。
恐らく、というより十中八九、その第十二サーバーのトップはユージン兄さんだろう。あのユージン兄さんが、そこら辺のプレイヤーに負けるとも思えない。伊達に攻略組はやってないはず。
私たちか、兄さんたちか。
勝つのは、どっちだ?
「第二位は第十二サーバー! サーバー内イベントポイント一位はユージンさん! そして、栄えある第一位は、第十一サーバー! サーバー内イベントポイント一位はミオンさんです!」
『負けたか……』
『うぇぁっ、私ぃっ!?』
デン! と巨大モニターに表示される二人のプレイヤー。まさか私が映るとは思わず変な声を出してしまった。
……嘘、ホントに? ホントに一位? っていうか待って待って、ホントに第十一サーバーのイベントポイント一位って私なの!?
てっきり、カンナヅキさんたちかと思ってたのに……私、そんなにイベントで貢献したかな?
『二位という惜しい結果だが、彼女に負けたのなら悔いはないさ。俺たちは全力を出した。それで負けたんだ。ここはひとつ、彼女に拍手を送りたいと思う』
ユージン兄さんがそう言いながら拍手をすると、兄さんの率いる第十二サーバーの人たちが手を鳴らし始め、徐々に徐々に拍手の音は大きくなっていった。
ちょ、兄さん! なんで私に注目が集まるような真似を!?
ああもう、モニターも既に兄さんじゃなくてわたしだけを映してるし!
『あ、え、えっと……ご紹介にあずかりましたミオンです。私自身、なんでサーバー内一位なのかよく分かってないんですけど……これも偏に、皆さんのおかげだと思っています。皆さん。七日間の間、本当にありがとうございました!』
そう言って、頭を下げる。
すると、空間全体に割れんばかりの歓声と、拍手の音が鳴り響く。
うん、そうだ。これは私一人で掴んだものじゃない。みんなで、みんなと頑張ったから掴めたものだよね。
「みんな、お疲れ様だ。これにて、結果発表は終了とさせていただく」
「今回獲得したイベントポイントは、そのままイベント特別交換リストのアイテムと交換できるので、通常フィールドに戻った際に確認してくださいね!」
「なお、このイベントポイントの交換期限は今日からリアル時間で一ヶ月となっているので、交換忘れのないようにお願いする。それでは、また次のイベントで会おう」
「まったねー!」
そう言って光の柱となって消えていく大竹さんと水沢さん。プレイヤーたちは拍手と歓声で彼らを送り出した。
そして、どうやら私たちも通常フィールドに戻されるみたいだ。
いやぁ、濃い七日間だったな。これが現実ではほんの二、三時間程度の時間しか経ってないっていうのが驚きだ。うんうん、いっぱいゲームができてなによりだね。
どうせなら、次のイベントもこういう加速フィールドでやってほしい。どんなイベント形態になるか分からないけどね。
順々に、プレイヤーたちが足場ごと消えていく。
そして私たちも、終わっていくイベントの余韻を感じながら、通常フィールドに戻っていくのだった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
続きもどうぞお楽しみください。




