第八話 完成、ブラッドライン!
今回から似たような説明をカットすることにしました(パーツの部位違いの説明など)。
シャリシャリシャリシャリシャリシャリ――
どうもこんにちは。私は現在一心不乱に魔導石を研磨しています。
というのも魔導石をパーツに組み込もうとしたところ、魔導石が大きすぎてどうしても組み込むことができないことが判明してしまったのです!
幸いと言っていいのか、ある程度削って小さくしても魔力保有量は変わらなかったので、必要な分だけ研磨しているってわけ。ま、磨けば見た目も綺麗になるしね!
そして、限界まで磨き上げた魔導石がこれだ。
[素材・アイテム]活性八八式魔導石・極 レア度:UR- 魔力保有量:2500/2500
エネルギーに変換された魔力が刺激し、活性状態となった魔導石が極限にまで磨かれた姿。周囲の魔力を吸収し、自身の魔力を回復させる特徴を持つ。
また魔力の属性も自由に変化させられるようになり、これを使用してパーツや武装を作ればエネルギーの変換効率が上昇する。
丁寧に削り、魔力を込めて磨き上げられため、魔力保有量が上がっている。
極ですってよ極。しかも、魔力保有量も上がってるんです!
まあ、これ一個削り出すのにゲーム内で三時間ほどかかっているので……必要数用意するのはとても大変だった。研磨失敗で評価が落ちたものも含めると、大体一週間くらいはこれを研磨してた気がする。
しかし、これでようやく次のステージへ行けるようになった。パーツ自体の加工はほぼ終わっており、後は研磨した魔導石をはめ込んで終了というところまできている。パーツ作成にもかなりの時間がかかっていて、魔導石の研磨と併せて大体リアルで二週間ほどかかった。
そうです。私、VRMMOで約二週間も一人で引きこもって作業していました。はい。すみませんでした。
ヴィーンにはその間生産活動をしたり、掲示板で情報を集めたり、一人で行動してもらっていた。そう、私はとうとうヴィーンとタメ語で話せるようになったのだ!
しかもヴィーンは一人でも〈散華の森・中層〉を歩けるくらいには鍛えたらしく、そこに出現するモンスターの素材も譲ってくれた。
特に、ポイズンスネークの進化系だと思われるアシッドスネーク、パラライズスネーク、ストーンスネークの皮が手に入ったのは大きい。これらの皮で魔導ケーブルを作れれば、ポイズンスネークの皮製のものよりも強度と魔力の伝導率のいい魔導ケーブルを作れるからだ。
そして作ったのがこのケーブルになる。
[素材・アイテム]合成蛇皮の魔導ケーブル レア度:R 品質:B 魔力伝導率:B-
引きこもってる私の代わりにヴィーンが調べてくれた情報によると、このゲームが始まってリアル時間でちょうど一ヶ月経つ日に大規模なイベントがあるらしい。あと約一週間後だね。
公式の情報すらも確認せずに作業に没頭していた私です。はい。
内容についてはまだ告知されてないものの、色んなプレイヤーがスキルやレベルを鍛えているという話だ。PvP(プレイヤー同士が戦うこと)イベントやレイド戦(大規模なPTを組んでモンスターを倒すこと)イベントが行われるのではないかというプレイヤーや、イベント限定のフィールドが開放されるのではないかというプレイヤー、その他にも様々な予想が飛び交っているらしい。
ちなみに兄さんはPvPイベント派だった。とても腕を上げているらしく、フリファン最強プレイヤーの一人として名が上がるほどらしい。いつかPvPでもしてみたいね。
「イベントか……」
『んー、参加したいなぁ』
「ミオンならそう言うと思ったよ。パーツの方は順調かい?」
『うん。今日中には完成かな。あとは、イベントのために武装も整えないとね』
「ふむ。たしかに、あの錆び朽ちた武装では貧弱がすぎるか……なにを作るつもりだい?」
『考えてるのはビームサーベルもどきとビームライフルもどき。ライフルの方はマグナムになるかも』
「あの光る刃がシュイン、と伸びるあれだね。それと遠距離武装か。そもそもそれらの武器は作れるのかい?」
『魔機人なんてロマン種族を作るような開発だからね。絶対ロマン武器は作れる。それだけは確信を持って言えるね』
私、信じてるよ?
「そ、そうか……こほん。たしかに、遠距離武装は必要だろうね。魔機人は魔法が使えないから」
『うん。相手に遠距離攻撃手段があってこっちにないなんて状況を作りたくないからね。できるだけやってみるつもり』
「素材は足りるのか?」
『サーベルの方ならなんとか。ただ、マグナムを作るにはちょっと鉱石のランクが低いかな……威力に耐えられなさそう』
「ふむ。中層には鉱石の取れる場所が見当たらなかったから下層か……少なくとも、ビームの剣ができるまでは動けないね」
『ほんとごめん! でも、かけた時間に見合うだけの威力を見せるから!』
「ふふ、謝らなくていいよ。ミオンならできるさ……さて、私も武器の強化をしなくてはね」
そう言うとヴィーンはガレージの外へと出て行く。
一人になったガレージの中で、私は《パーツクリエイト》を弄る。
研磨した活性八八式魔導石・極を全て素材庫へと移動させて、形を整えたフレームやパーツ、それらを繋ぎ合わせる魔導ケーブルを取り出す。細かいパーツ一つ一つにコーティングするように魔力を込めていく。処理の終わったものから順に素材庫へと戻し、取り出してはそれぞれのパーツを組み上げる。
研磨魔導石をENタンクとして各部に組み込み、外れないように噛み合わせを確認しながら加工していく。
一つのパーツを作り上げるのに、ゲーム内で約一時間半。組み上がったパーツに色を付けて、ダメ押しの魔力コーティング。
リアル精神力とENの全てをつぎ込んで現状で作れる最高のパーツを完成させた。
逸る気持ちを抑えて、装備を全て換装する。
アバター決定時の色とは大きく違い、メインの機体色は黒。ところどころに紅のラインが引かれ、ENを通すとその部分が導線のように淡く光る。細かい装飾は金で施され、さながら神話の果てを目指すどこぞの罪を背負っていそうなロボットのような色合いだ。
色は変わったが見た目はほとんど変わっておらず、違う点としては背部パーツを新しく作成したところ。
大型のスラスターを二点、小型のスラスターを四点新調し、大型それぞれに研磨魔導石を二個ずつ、小型のスラスターに一個ずつ組み込み、自分のENを使わなくともスラスターを使えるようにした。短時間であれば飛行も可能だが、あまりおすすめはできない。消費ENがバカみたいに高いからね。
黒の機体色に紅のラインがまるで、血のように脈動しているように見えることから、このパーツの名前は〈ブラッドライン〉シリーズに決めた。ふふん、なかなかかっこいいでしょ?
もちろん、性能の方も凄いものだ。
[パーツ・頭部]ブラッドライン-H -レア度:EX魔力伝導率:A 魔力保有量:2500/2500 耐久値:10000/10000
DEF△△△ MDEF△△△
スキル:《魔力自動吸収》《属性変更》
異界の技法をふんだんに使用した全く新しい形の魔機人の頭部パーツ。
技法による耐久値の低下を魔力によるミルフィーユ・コーティングを施すことにより緩和し、魔力の伝導率を上昇させた。
とても丁寧に作られており、作者の想いが込められている。
《魔力自動吸収》:組み込まれた魔導石の力により周囲の魔力を自動で吸収し、自身の魔力保有量を回復させる。
《属性変更》:魔力の属性を好きに変更できる。
[パーツ・胴部]ブラッドライン-B- レア度:EX 魔力伝導率:A 魔力保有量:2500/2500 耐久値:10000/10000
DEF△△△ MDEF△△△
スキル:《魔力自動吸収》《属性変更》
[パーツ・腕部]ブラッドライン-RA-(-LA-) レア度:EX キャパシティ:0/5(0/5) 魔力伝導率:A 魔力保有量:2500/2500(2500/2500) 耐久値:10000/10000(10000/10000)
ATK△△△ DEF△△△ MDEF△△△
スキル:《魔力自動吸収》《属性変更》
[パーツ・腰部]ブラッドライン-Bo- レア度:EX 魔力伝導率:A 魔力保有量 2500/2500 耐久値:10000/10000
DEF△△△ MDEF△△△ AGI△△△
スキル:《魔力自動吸収》《属性変更》
[パーツ・脚部]ブラッドライン-RL-(-LL-) レア度:EX 魔力伝導率:A 魔力保有量:2500/2500(2500/2500) 耐久値:10000/10000(10000/10000)
DEF△△△ MDEF△△△ AGI△△△
スキル:《魔力自動吸収》《属性変更》
[パーツ・背部]ブラッドライン-Ba- レア度:EX 魔力伝導率:A 魔力保有量:15000/15000 耐久値:10000/10000
DEF△△△ MDEF△△△ AGI△△△
スキル:《魔力自動吸収》《属性変更》
うん、この性能ならとりあえずは満足ね。色合いがかっこよくて美しい。錆び朽ちた見た目とはこれでおさらばよ!
ちなみに、色んなプレイヤーから耐久値が分かりにくいってことでここ二週間の間に小さなアップデートが入ったらしく、耐久値が数値として表示されている。まあ、この耐久値が活躍するのは結構後になりそうだけどね。
しかし武器がまだ錆び朽ちたソードとブレードなので、次はそれをなんとかしなくちゃいけない。
ビームサーベル……ここの運営、もとい開発なら絶対に似たようなものを実装しているはず。出力確保のため魔導石は必須として、あとは鉱石とチューブ用の皮かしらね。ヴィーンから貰った中層の皮で作ってみよう!
私が新しい武装を作ろうと素材に魔力を込めようとすると、その腕を綺麗な手が掴む。その先を見ると、笑顔のヴィーンが私を見ていた。
『あのぅ、ヴィーンさん?』
「ミオン。熱中するのはいい事だけど、時間も気にした方がいいね」
チラリと時間を確認すると、私がいつもログアウトしてる時間を少し過ぎていた。い、いつのまにこんなに時間が……。
「さ、今日はここまでだよ。全く、そろそろ夏休みも終わるっていうのに……」
『あはは……って、夏休み?』
「ん、いや、こちらの話だよ。私は先に落ちるからね。また明日だ」
『うん、また明日ね!』
本人にしか見えないメニューを操作し、光に包まれるヴィーン。光が収まる数秒後には私一人になっていた。
このまま続けてもいいけど、それで遅れたら明日怒られるな……ここは大人しくログアウトしますか。
私もメニュー画面を操作し、ログアウトを選択。あっという間に現実世界に戻ってきた私は食事やお風呂などのもろもろの雑事を済ませ、ベッドにダイブするのだった。
ちなみに晩ご飯は兄さんが作って置いといてくれました。ありがとう兄さん! 持つべきものは理解のある家族!
[所持スキル]
《魔機人》Lv.33(2up↑)《武装》Lv.29《パーツクリエイト》Lv.--《自動修復》Lv22《自動供給》Lv.28(5up↑)《刀剣》Lv.30(MAX)《鑑定》Lv.-- 《感知》Lv.14《直感》Lv.25《敏捷強化》Lv.27《採掘》Lv.21《鍛冶》Lv.37(12up↑)《裁縫》Lv.17(5up↑)
残りSP52
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
続きもお楽しみください。




