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ロータリーにはギッシリと迎えの車で埋まっていた。

街灯が少ないせいで薄暗く全体を見渡すことは出来ない。

近くの車から一台一台、僕は確認して歩くことにした。

(違う。これも違う)

止まっている車の車種とそして運転席をチェックする。

(あっ!)

前方に一台の赤い車を見つけると僕は思わずパッと体を反転させた。

(あれだ!あの車だ!)

歩いていた位置とまだかなりの距離もあったことも幸いして運転席は見えなかった。

でも僕にはその車だと確信していた。

その赤いコンパクトカーは見覚えがあった。

僕が高校を卒業する三か月前に買い替えたばかりなのを覚えていた。

それが3年前だったのでまだその車を乗っているということは事前に予想していた。

(やっぱり無理だ!僕には出来ない)

そう決心して駅の方に引き返そうとした時だった。

「祐美」

その声に反応してしまった僕は振り向いてしまった。

僕の目の前にはノリコおばさんが立っていた。

違うんです!

僕は祐美じゃないんです!

僕は孝之です!

ノリコおばさんの甥っ子の孝之です!

ごめんなさい!

ごめんなさい!

ごめんなさい!

ごめんなさい!

ごめんなさい!

土下座をして頭を地面に擦り付けて何度も何度も謝罪をする。

本当はそうするべきだった。

でも僕はそうはしなかった。

「お母さん」

ノリコおばさんのことを僕はそう呼んだ。

あの日からずっと僕は練習をしてきたのだ。

何度も何度も練習をした。

僕を迎えに来るノリコおばさんを何十回、何百回も想像した。

想像で浮かぶノリコおばさんに向かって僕は「お母さん」と言い続けた。


実際のノリコおばさんは僕の想像より幾分も穏やかで優しい表情をしていた。

「お帰り」

そう僕に微笑んだ。

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