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待ち合わせの場所となった横浜のファミレスに先に到着していたのは祐美の方だった。

店内を見回すと、祐美は窓際の席に座っていた。

高校生の頃に長髪だった髪はショートボブに変わっており、ボーダー柄のカッソーにジーンズというラフな格好だった。

化粧も薄い感じだったが、既に祐美は大人の女性としての色気があった。

祐美の方はただ呆然と肘を机につき顎を手に乗せて窓の外を眺めていた。

テーブルに向かうまでの間、祐美は僕に気がつくことはなかった。

そして僕は祐美の前に立った。


僕の姿を見たときの祐美の顔を僕は死ぬまで忘れることはないだろう。

祐美は恐怖で真っ青になっていた。

「気持ち悪い」

「馬鹿」

「最低」

「どういう神経をしているの」

「悪いと思っていないの」

「クズ」

「アホ」

そのような言葉を何度も使って祐美は1時間もの間、僕を罵った。

そして罵った後の1時間はずっと鳴きっぱなしだった。

最後には「もう二度と会いたくない」と言い残し、怒ったまま店から出て行ってしまった。

僕は祐美の怒りをただ黙って受け止めることしか出来なかった。


祐美の説得に失敗した僕は一人で実家に帰ろうと決心した。

もしかしたら既に祐美からノリコおばさんに、そしてノリコおばさんからうちの母親に僕のことは伝わっているかもしれないとも思ったが、そこは祐美との最初の電話で僕が他言無用だと念を押したことと、それを承諾した祐美を僕は信じることにした。

帰るのは来月にしよう。

11月の半ばに帰ることを決めると僕はどう親を説得しようか頭を悩ませた。

(突然、会って話すより事前に話していた方が心の準備が出来るかもしれない)

そう考えたが、融通の利かない父親にはそんな小細工が通じないことは明らかだった。

(だとしたらやっぱり母さんしかいないだろうな)

地元の信用金庫に勤める父は頭でっかちで融通の利かない人だったが、それに比べ母親はかなり大雑把な性格をしていた。

家族旅行の際に、父親が事前に2日前には準備を終えてしまうのに対して、母親は前日まで何もしないという人間だった。

ただ、ズボラな性格というわけでもない。

細かいことが嫌いなのだ。

それでいて大胆な行動がすぐに出来る人だった。

東京に進学することを母親だけは賛成してくれた。

最終的に東京に出ることが出来たのは母親が父親を説得してくれたおかげだった。

もしかしたら今回も母親は僕の味方になってくれるのではないだろうか。

そんなことを悶々と自宅に籠ったまま考え続けていた。

スマホがブルブルと震えたのは、僕が祐美と会ってからちょうど2週間が過ぎた日のことだった。

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