表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/25

2


「二つ合わせまして4968円になります」

結局、無難に焼き菓子の詰め合わせを僕は選んだ。

財布から5千円札を取り出して、「はい」と言って若い店員に手渡した。

歳は僕と同じくらいだろうか。

薄化粧で派手さはなく、目は細く丸顔でとても美人とは言えない。

でも彼女と目を合わせると彼女は優しく微笑んだ。

その表情はとても愛くるしいものだった。

「32円のお釣りとレシートになります」

彼女は両手を使って丁寧にお釣りを差し出してきた。

僕がお釣りを財布に仕舞うとすぐにではなく、ほんのちょっと間を置いてから彼女はゆっくりと紙袋を渡してきた。

客を焦らせない、とても丁寧な接客だ。

ガヤガヤとするフロアなのに時が止まったかのように僕はとても穏やかな気持ちになった。

なんだか僕はもっと彼女と話してみたくなって、商品を受け取ると同時にこう尋ねた。

「すみません。ここから一番近いトイレは何所でしょうか?」

彼女は浮かべた笑顔を何一つ崩すことなく「そこの出口を右に曲がって進みますと前方にございます」と答えてくれた。

「ありがとうございます」

私が軽く頭を下げると、彼女は「ありがとうございました」と深々と頭を下げた。

彼女は終始笑顔で接客をしてくれた。


(ヘヘッ、トイレの位置なんて案内板ですぐわかるけどね。)

僕は受け取った紙袋を前後に揺らしながら軽い足取りで前へと進む。

(あそこか。)

彼女に教えてもらった通りにトイレがあった。

(アハハッ)

そのトイレには多機能トイレは設置されてなかった。

(これじゃあ、もう一度戻って彼女に聞いてみたくなっちゃうじゃないかよ。)

「どっちのトイレに入ったらいいの?」って尋ねてやりたい。

そうしたら、あの完璧な接客をしていた彼女はどう反応するのかな。

(まあ、それだけなら最初はあの笑顔は崩さずに「女子トイレはこちらになりますよ」っていうかもね。)

でも僕が次に「僕、男だよ」って言ったらどうなるだろう?

(ククッ、きっと目をパチパチとさせるだろうな。)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ