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「まもなく軽井沢です。しなの鉄道をご利用の方は御乗換えです」
アナウンスがあると、僕の後ろに座っていたポニーテールの女性はリュックを背負ってデッキの方へと向かった。
良く見ればはるちゃんよりもだいぶ年上で背格好も全く違う。
僕より数センチ低いだけのはるちゃんに比べ女性は僕と10センチ以上も低いように見えた。
(はるちゃんは今頃何をやっているのだろうか)
今の自分は間違いなくはるちゃんと出会わなければ存在していない。
あの出会いは良かったのだろうか。
僕には未だにその答えが出ていなかった。
(やっぱりこっちは降っているんだな)
東京から群馬まではまったく雪は降っていなかったが長野に入ると車窓からは雪景色が広がっていた。
陽はすっかりと落ち、スキー場はライトアップされている。
スキー場の隣にあるアウトレットも、来週はクリスマスということもあってか多くの人で賑わっていた。
雪を見ながら僕は故郷に帰ってきたのだなと改めて感じた。
佐久はこの次だ。
新幹線だと13分程度の距離しかない。
きっと迎えの車は家を出ているだろう。
そう考えるとブルと体が震えた。
頭では望みもしないのに勝手に想像が浮かんでくる。
もう駅のロータリーのところで駐車しているかもしれない。
それとも近くのスーパーで買い物を終えたころかもしれない。
それか今日はパートの仕事が入っているとメッセージで書いてあったので、もしかしたら今頃、パート先の図書館を出たばかりかもしれない。
いろんな様子が次から次に頭の中を駆けまわった。
でもどんな状況のものであっても僕を迎える喜びで微笑んでいた。
それは僕がこんな姿でいることなんか知らないからだ。
本当なら隣には祐美がいるはずだったのだ。
(祐美が来てくれたら・・・)
結局、僕一人で故郷に帰るしかなかった。




