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コート等を一式揃えるのに3万円以上かかってしまい、財布には2万7千円だけになってしまった。

(高い買い物だったけれど、意味のある投資だと思えば安いよな)

コートやカバンが入った大きな袋を肩にかけながら、僕は駅のロッカーへと戻ってきた。

ここには1時間前に借りた二つ以外にも事前に自分の荷物が入っているロッカーもあった。

昨日の晩に借りたロッカーを開け、僕は入っていたバッグの中から茶色の巾着袋を取り出した。

(これさえあれば、問題はないな)

中には白いパットと同色の下着が入っている。

リクルートスーツを着るにあたって股間の膨らみを解消しなければ男だとすぐにばれてしまうが、それを解決させる道具を僕は既に持っていた。


駅と隣接するデパートの女子トイレはそれほど混雑していない。

着替えるだけだったらロッカーの近くにもトイレはあった。

けれどデパートの女子トイレにはパウダールームがあることを知っていたので、敢えてここを選んだ。

(お邪魔します)

未だに自分が招かざる客だという認識は持っている。

僕はコソコソっと一番奥の個室へと入る。

スカートを下ろしパンツを脱ぐと、コンビニで買ったベージュのストッキングを穿き、ロッカーから取り出した下着を身に着ける。

それはただの下着とは異なり、内部に筒状の袋がついていた。

その袋に自分の逸物を通す。

そしてその上にこれもロッカーから持ってきたパットで覆い、ストッキングのウエスト部分でこれらを固定する。

そしてはるちゃんのタイトスカートを履けば、スカートの股間には何の凹凸は生じていない。

(やっぱりコイツを買っておいてよかったな)

女装をする男性向けに女性の股間を作る道具がまさにこれだった。

持っていたが普段はズボンやタイトスカートを履かないため2回しか使ったことはなかった。

(蒸れるから嫌なんだよな。でも今は仕方ないな)


個室を出ると、僕はスッと背筋を伸ばして洗面台に向かって堂々と歩いた。

鏡には綺麗な就活生が映る。

(僕って美人過ぎるよな)

自分の姿なのに股間がニョキッと反応した。

勃起はしてもスカートの股部分には凹凸は全く生じず平らのままだ。

だが下着で押さえつけられているため下腹部にギュッと痛みが走った。

(痛ぇ!)

思わずウッと股を押えてしまった。

鏡に映るその自分の姿が妙に違和感を覚えて恥ずかしくなった。

(女性が股を押えるなんて無いよな)

フーと息を整えもう一度背筋を伸ばして、僕は洗面台の横にあるパウダールームへと進んだ。


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