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そだ☆シス  作者: Mie
園児編
66/744

57 元気があれば、なんだって

挿絵(By みてみん)




 明るく、広い室内。

 俺の妹が、知らない男の前で恥ずかしそうに服を脱いでいる。

 部屋には他にも人は複数いるが、誰もそれを止めようとはしない。

 男は笑みを浮かべ、白い肌をさらけ出した妹の胸元へ、ゆっくりと手を伸ばしてゆく。

 ぎゅっと目を(つむ)る妹、更に伸ばされる手。 そして、遂に――。


「ひゃん!」


 ぴくりと跳ねる妹。 しかし、男の行為は止まることなく、なおも続けられていく。

 それでも……それでも俺は、このまま見続ける事しかできないんだ!!


「――――はい、とっても健康ですよ。 お嬢ちゃん、おりこうだったねぇ」


「ひゃぅ~」


「……」



 まぁ要するに、健康診断な訳である。



「はいセーレちゃん、おつかれさま~。 今度は服を着ましょうね~♪」


 セーレたんの後ろで脱いだ服を持っていたお袋が、頭からすっぽりとかぶせて服を着せている。

 ちなみに下は着たままだ。 当ったり前じゃん!

 手(ぐし)で軽く髪を整えられた妹様は、イスからぴょんと降りて俺の元にやってきた。


「おにぃ~♪」


「よくがんばったー!」


 そして、いつものように抱き締めてなでなでしてあげる。



「あっはっは、とても仲がよろしいですねぇ」

「ほんと、可愛いですねー♪」


 白衣を羽織った先生とナースさんが俺達を見て微笑んでいる。

 先生の白衣は前世とあまり変わらないが、ナースさんの服は、残念な事にポケットの多いブラウスとキュロットという白い上下である。 ナースというより、まるで女性海上自衛官(WAVE)みたいな制服だ。

 しかも、頭もナースキャップではなく同じく白のバンダナ……いや、三角巾で髪を包んでいる。

 この世界に、白衣の天使はいなかった!

 ……まあ、これはこれで「カッコかわいい」、という感じで悪くないとは思うが。 「(笑)(カッコわらい)」じゃないぞ?



 さて、ここがどこかというと、いつもの幼児園である。

 今日と明日は休園になっていて、代わりに地域の三歳の子供が集まって健康診断をやっているのだ。

 外に立て掛けてあった看板を見ると、どうも役所が実施しているようで。

 実は、二歳の誕生日の少し後にも受けたんだが―― その時は往診だったから、お袋が大事を取ったんだろうけど―― ムチャクチャ制度整ってないか? 日本でも戦後からだよね?

 魔法のある世界だし、てっきり病気とかしたら教会から神父さんでも呼んできて……あ、教会ないんだっけ。


「はい、次はお兄ちゃんですねー」


 おおっと、ナースさんがお呼びだ。


「いってくるおー」


 抱き合ったままのセーレたんとアイコンタクトを交わしてから離れて、更に後ろで順番待ちのエミーちゃんに声をかけて先生の所へ。

 ちなみに今日は、アナさんが休みの日なので幼児園前で直接待ち合わせて、俺達兄妹はお袋と三人で来た。 エルネちゃんは学校、メイドちゃんズは家でお仕事である。

 ちょっと格好を付けて、歩きながら上の服を脱いで右手でマントを剥ぎ取るように真横に振ると、そのままお袋に手渡す。


「きゃはぁあ♪」

「おーう!」


 後ろから美幼女達の感嘆の声が聞こえてくるが、俺はそのままイスに座る。 振り返らない事さ!


「おねがいしまーふ」


「はい、お願いしますね」

「ふふふっ、さすがお兄ちゃんね」


 礼儀正しく先生に一礼して、ナースさんにも一礼。 こっちの世界にも通じる、これぞニッポン人の心!

 けっこう優しそうな、金髪なんだけど滝廉○郎っぽいメガネの先生は、耳から伸びた聴診器を片手に持って俺の胸へ。


 ――ぴとっ。


「あっはぁ~ん♪」



「ぶっ」

「ぶぶぶぶりぶりっ! ……っっく!!!」

「……ぷっ」

「ふふふっ」

「んぅ?」「んー?」


 くっくっく! ウケた♪ ……今の声、かなり色っぽかったでしょ?

 先生は、身体をビクンと震わせてずれたメガネを直し、ナースさんは堪えるのに失敗したらしく、唇の間からトンデモない音を出してしまい、両手で口を押さえながら後ろを向いてぷるぷる震えている。 ナイス自爆!

 そしてアナさんも一瞬吹き出したが、残念ながらお袋は余裕である。

 幼女コンビには、さすがに通じなかった。


「ごめんなさーい」


「ふぅ……。 はい、それでは改めて」

「く……っ……ひっく……!」


 俺が先制でごめんなさいしたので、先生は何も言えずそのまま再開。

 ナースさんは壁に手を付き、下を向いて震えている。 しばらく復帰は無理そうだ。


「……っく、ひっひっひっひっ……!」


「……」

「……」


 俺のギャグよりも、たぶん「自爆した事そのもの」の方がツボに入ったんだろう。

 大人の女性として、それはちょっとどうなの? というアレな笑い声が響く中、淡々と診察は続く。


「いひひひひひひひ……!」


「――はい、終了です。 元気すぎるくらいですねぇ」


 今度は自分の笑い声がツボったかな? と思われる、笑いのスパイラルに堕ちたらしいナースさんは放置されたまんま、診察は終了。


「せんせー、ごめんなさーい。

 おねーさんも、ごめんなさーい」


「うっひっひっひっひ……っっ」


 念のため二人に再度謝り、イスから降りる。

 先生は苦笑いを浮かべて頷き、お姉さんは向こうを向いたまま、首だけ何度か縦に大きく振って許してくれた。


「はい、ジャスちゃ~ん」


「はーい」


 服を返してもらって、すぐに着てセーレたんの所へ。


「おにぃ~」


「ただいまー。 ……エミーたん、つぎだおー」


「はうー」


 妹様はすっかり定位置となった左側にくっつき、エミーちゃんは返事をすると先生の所へ走って行った。

 続いてアナさんも「うーん、なかなか『ハイ』って言ってくれないわねぇ~」と呟きながら、お袋と入れ替わりに行く。


「……ひ、ひぃ、お、おな、お腹がぁ……」


 そして、とうとう膝から崩れ落ちたナースさんに心の中でもう一度謝りながら、俺はお袋達と部屋を出た。

 お、お大事にー。




 外に出て、玄関近くの邪魔にならない所でアナさんとエミーちゃんを待つ俺達。

 幼児園の中には入口に近い方から年少・年中・年長と三つの大きな部屋があるのだが、今日はそれぞれ受付・待合室・診察室になっているので終わった後はどこも使えない。

 まあ、外は四月の陽気でぽかぽかしているので、待っていても全然苦にはならない。

 俺とセーレたんが向かい合って両手を取り合い「おー」「にゅ~」と謎の交信を―― これさ、ずーっとやってると、妙に楽しくなってくるんだよ―― していると、しばらくして二人が出てきた。


「お待たせー」

「おー」


「いえいえ、待ってないわよ~」

「いえー」

「わ~」


 雑談し始めたお袋達と、何故かハイタッチを始める俺達三人。 これも特に意味はない!

 そして、納得がいくタッチができるまでパッチンパッチンやっていると、お袋から声がかかった。


「さあ~、もうすぐお昼の鐘が鳴ると思うから、どこかのお店でおやつにしましょう~♪」


「はーい、おやつー!」

「はぃ~♪」

「ハイー!!」

「あ、『ハイ』って言ったわ、この子」



 こうして俺達は、喫茶店でティーブレイクとおやつを楽しんで帰りましたとさ。





「はぁ、はぁ……。

 あぁ、やっと、落ち着きました~」


「……お疲れ様」





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