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そだ☆シス  作者: Mie
幼児編つづき
46/744

39 いーこへんなこふつーのこ

挿絵(By みてみん)




 既に暑いくらいの陽気の中、時折爽やかな風が吹き抜けて庭の緑を揺らす朝。

 俺達の部屋の中では、少々重い空気が流れていた。

 向き合っているのは二人と二人。

 いや、それぞれがもう一人にしがみ付いているから、一対一と言っても良いか。


 一方は、皆さんお馴染み「触手マスター」こと俺。 ……そんな称号いらんわ!

 しがみ付いてるのは勿論、マイスイートハニーのセーレたん。

 そしてもう一方は、ちょくちょく遊びにくるヨ! で有名なミス絶対領域ことエルネちゃん。

 じゃあ、その彼女にしがみ付いてるもう一人は一体誰なんだ、というと――


「せーれたん、こあくないよー」

「……ぅ~」こそーり。


「ゴメンねージャスちゃん? この子、人見知り激しくってー。

 って、ジャスちゃんもこの子と同じ年だよね?

 しかも、こっちの方が一ヶ月だけど年上だし……」

「……」おどおど。


「ほら、エミー? 大丈夫だからこっちに……!」

「ヤーーー!!」


 この、エルネちゃんの絶対――もとい、脚にしがみ付いて後ろに隠れている子。

 アナさんの二人目の子供、つまりはエルネちゃんの妹である。


「もう、エミーリアったら離れ……っ!」

「ヤー! ヤーーッ!」


 お姉ちゃんと同じ色の、黒い瞳と赤茶色の髪。

 髪は短くて、ちょっと男の子っぽく見えるがそれは仕方ないか。

 背丈は、ひょっとすると俺より少し高いかな?

 お姉ちゃんそっくりの、強気そうな顔立ち。

 しかも、なかなか強靱な腕力をお持ちのようで。

 さすがドイツ人ぽい返事をしているだけある。 それは関係ないか。 しかもイエスの意味だし。


「はぁーーー。 この子ったらもー」


 困った様子で俺をチラチラ見てくるエルネちゃん。

 え? 俺が何とかしろって?

『あのねー君、二歳児相手になんてムチャ振りしてんのよ?』という目で睨んでみる。


「あっはははは……ご、ゴメン、でもお願ぁ~い♪」


 手を合わせてお願いされてしまいました。

『仕方ないなーもう』と彼女へ一(べつ)返すと、俺は左腕にくっついているセーレたんの肩に右手を置いて、声をかける。


「せーれたん、ちょろまっへー」


「……ぅ~」ぎゅっ。


 おや、珍しく聞いてくれない?

 も、もしかして、ジェラシー? ジェラシーだったりする!?


「せーれたん♪ らいじょふー」


 俺はセーレたんに微笑みかけて、肩から離した手をセーレたんのほっぺに添えて、なでなでしてあげる。

 セーレたんは、目を閉じてうっとりしている。


「ひゃうぅ♪ あぃ~」


 しばらくの間、くすぐるようになでてあげると満足してくれたようで、俺の身体から離れてくれた。



「な、なんか、まるで恋人どうしみたいね……。

 あんたら、ほんっっっと~に、エミーと一ヶ月しか変わらないの?

 ウソでしょ……」


 俺の無言の返事に苦笑いを浮かべていた、エルネちゃんの頬が引き攣っているが気にしなーい。

 最後にもうひとなでして、俺はセーレたんから離れると、お姉ちゃんにぎゅっとしがみ付いたままのエミーちゃんを見つめながら、一歩だけ進み出る。


「えみーたん?」


「……っ!」


 呼びかけると目を合わせてくれたが、その目線はどう見てもメンチです。 ありがたくありますん。 つまり微妙。

 しばらく見つめ合ってみるが、なんかもう『ぐるるるる~』って言ってる子犬に向き合ってる心境だよこれ。


「もうエミーの名前覚えてるし……」


『もういいから君は黙ってなさい』と姉を一瞬睨み付けて、すぐに妹ちゃんに向き合う。

「うぐっ……わ、私、もうすぐ七歳なのにぃ~」


「えみーたーん」


「……」


「しくしく~」


 ああもう! 面倒くさい姉妹だなぁー!

 口でしくしく言ってる姉を満面の愛想笑いで黙らせて、妹ちゃんに向かってもう一歩前へ。

 おい姉よ、二歳相手に何マジで照れてんの……。


「えみーたーん♪」


 妹ちゃんにもそのまま満面の愛想笑いを向けて、更に右手を差し出してみる。


「っ! ……ぅー」


 ビクッとしたが、すぐ落ち着いて俺の顔と手を交互に見始める。

 ちょっと脈ありか?


「えみーたん」


 少しずつ、姉にしがみ付いている手が緩んできているように見える。

 もう一歩近づくか。


「えみーたーん」

「ぅ……」


 今一瞬、妹ちゃんの右手がピクンとしたか?

 よし、目の前まで近づこう。 そしてにっこり!


「えみーたーん♪」


「ぁ……ぅーっ」


 おっ、右手を姉ちゃんから離したぞ!

 人差し指を出して、ちょっとずつこっちに伸ばしてきた!

 俺も伸ばすと一瞬引いたが、また伸ばしてくる。


「えみーたん」


「ぁぅ~」


 よし、もうちょっと!

 妹ちゃんと俺の人差し指どうしが、もう少し、もう少し……触れたっ!!


 ……。


 ――なんか、宇宙人とのコンタクトに成功! みたいな()ヅラになってしまった。

 俺、自転車で夜空を飛んだりしないからな?



「よろひくー」


 驚かさないように、そっと彼女の手を掴んでシェイクハンズすると、左手も姉の脚から離しておずおずと出てきた。


「あうー」


「よろひくー」


「まー!」


 ふー、何とか打ち解けられたようだ。

 ミッション完了の旨を笑顔で姉ちゃんに報告すると、姉は膝立ちになって俺達に視線を合わせ、両方の頭を撫でてきた。

 うむ、そのまましゃがみ込まれたら危ない所だった。 アングル的なトライアングルが。


「エミー、エライねー♪

 ……でも、こんなにすんなり行くなんて。 ありがとうねジャスちゃ……あー、いや、もう『(くん)』の方がいいわね……ジャス君。

 ホント、ジャス君ってスゴイよ!」


「ん、んー……」


 なんか、キラキラした目でもの凄い褒められた。 慣れない相手から褒められると、ちと照れるなぁ……。

 目を逸らすついでと言うと何だが、そろそろウチの妹様もお待ちかねなので呼ぶことにする。


「せーれたーん」


「……ぁ♪ おにぃ~~!」


 てててと小走りにやって来て、ひしっと俺に抱き付くセーレたん。 ずっと待っててくれたんだなー!

 そして、すっごいキラキラした目で見つめてくる! テラカワイス!!


「よしよーし♪」

「きゃあ~んやぁ~ん♪」


「……うぅ」


 左手でセーレたんをなでなでしていると、繋いだままの右手がぎゅっと強く握られる。

 おっと、忘れちゃいけないな。 つーか、ちょっと手痛いよ。 握力すげぇな。


「セーレたん、エミーたん。

 エミーたん、セーレたん」


 両手が塞がっているので、首を振って女の子達に互いの名前を紹介する。


「えぅ~?」

「うぅー……!」


 どっちも、あんまり分かっていないような感じだが……まあいいや。

 それに、エミーたんはセーレたんの事をちょっと警戒している様子。 慣らしていかないとな。



「ねーねー。 私はー?」


 なんか拗ねた目つきで俺を見てくるお姉ちゃん。

 君も、急に子供っぽくなったなーって、子供か。


「えるねたーん」


「うわっ!? 私の名前も知ってるんだっ! ありがとぉーーーーーっ♪」


「うぉ!」

「ひゃぅ!?」

「ねー!」



 三人まとめて抱き締められました。





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