35 ご飲食中の方はお控え下さい
途中で吹き出す恐れがありますので、ご飲食中の方はPC(キーボード含む)や携帯を透明のビニール袋で覆うか、お食事を終えて片付けた後にお読み下さい。
※ご注意:今回も下ネタを含みます。
たぶん大丈夫かと思いますけど、万一の際は二回目のタイトル画像が出てくる(挿絵非表示の場合は「★★★★」の)所までスキップして下さい。
「……」
ごくっ。
春の日差しが暖かい部屋の中で、四角い物体を目に固唾を飲む男が一人。
って、俺なんだけどね。
この部屋には、多くの本が置いてある。
元々本棚があって色々な本が入っていたんだが、俺が早く情報が欲しいので、本を読んでもらった時にちょっとオーバー気味のリアクションを取るようにしていたら少しずつ増えて、ご近所さんからのお祝い? の時にとうとう新しい本棚が追加された。
しかし、残念ながらというか当然ながら、幼児や子供向けの本がほとんどのため、本当に俺が求めているようなこの世界に関する詳しい本はない。
なので、絵本の物語などからかろうじて勉強している状態だ。
ただ……ここで嬉しい誤算というか、犬も歩けば、というか。
「地雷」でお馴染みの『チャロちゃんコレクション』である。
必ずブックカバーがついている、あまりにもランダム……というより、フリーダムと形容すべきなこのラインナップのおかげで、これだっ! という異世界情報が時々手に入る。 文字通りの地雷率も高いが。
そのため、俺としては分かっていても手に取らざるを得ないのである。
例えるなら、ダンジョンに入った冒険者一行が、行き止まりで『押すな!』と書かれているボタンを見つけて、
『……明らかに怪しいよな』
『押すなよ! 本当に押すなよ!?』
『でもでも、押すなって言われたら無性に押したくなるよねー♪』
『いやだから押すなっての!!』
『そうです、そんなの罠に決まってます!』
『そのボタン以外、本当に何もない部屋みたいだね』
『仕方ない、一旦引き返して――――』
『あ、ゴメン。 押しちゃった♪』
『だから押すなってあれほど……わああああああああっ!!??』
『『『あーーーーーーれーーーーーーーー』』』
――とかいう、お決まりのコントを繰り広げるアレと同じような心境なのである。
「しゃて。 ……びしゃもんてんにょかごじょあゆ!」
どこかの武将みたいなセリフを叫んで覚悟を完了させ、目の前にある厚めの本を開く。
「えーーーっと、たいとりゅは……」
『肥溜めに落ちた先は異世界でした』
「っておいっ!?」
異世界トリップもの!!?
こっちにもあるのか、そのジャンル!? つーか肥溜めって!
ある日、突然う○こ塗れで見知らぬ異世界とか、最悪なトリップだな……。 逆にちょっと興味出てきたぞ。
読んでみるか。
『ある日、私、アリサは畑の肥料をもらいに肥溜めに行きました』
主役、女の子なのっ!? それで肥溜めって……。
『私が持ってきた桶に肥料(う○こ)をすくっていると、後ろから声がしました』
『「うわーーー! 誰か! その馬車を止めてくれーーーー!」』
おいおい、これってもしかして。
『私が、えっ? と振り返ったその瞬間――』
『私は暴走馬車にはねられてその衝撃で身体中の骨が折れ、その上飛ばされて肥溜めに落ちてしまったのです』
やっぱりかーーーっ!?
しかも、全身骨折でう○こ塗れって!
当初に予想してた最悪の、更に斜め上を行く最悪っぷりだな……。
これならいっそ、轢かれ死んで異世界転生した方が良くね?
『――私が目を覚ますと、そこは知らない天井でした』
おおっと、俺さえ言ってなかったテンプレが来たよ?
『「――やあ、目を覚ましたようだね」』
『聞き覚えのない低い声が聞こえて、私が部屋の扉の方へ目を向けると扉が開かれ、そこから背の高い、黒い髪と黒い瞳に白衣姿の精悍そうな男性が――』
おおっと、これもアレか? お約束の展開か?
『鼻を摘みながら入ってきましたw』
「ぶふーーーーーっ!!!!???」
う○こ臭かったのか!?
いや、臭かったんだろうけど!!
でもちょっと酷いだろそれ!
つーか主人公も「w」とか、笑ってんじゃねぇよ!!?
『「えっと、あなたは」』
『「ふがふが」』
摘むのやめい!
『「おっと失礼。 僕はしがない、一介の天才科学者かぶれさ。 ところで身体は大丈夫かい、えんが……ちゃん?」』
おいなんだ、その「えんが」ちゃんって呼び名は?
……まさか、「えん○ちょ」って言いかけて、咄嗟に変えたんじゃないだろうな?
こいつの肩書きもツッコミ所満載だが、まずそれが気になった!
『「あ、あれ? そう言えば。 私、全身ポッキンチョだったのに」』
ポッキンチョって。
『「ああ、身体の方は適当に治しておいたよ。 違和感はないかな?」』
もう、「適当」程度のフレーズじゃ、ツッコむ気にもならんよ。
『「ええ、多分大丈夫だと……ああっ!」』
『下半身にかすかな違和感を感じた私が、急いで毛布に潜って確認してみると、なんと――』
ま、まさか、このパターンはT……。
『ふた○りになっていましたwww』
「おおおーーーーーーーーーいっ!!!??」
性転換じゃないんかっ!? 増築かっ! 改築じゃなくて!
まさか、さっきの「適当」って、こいつの伏線だったのか!!?
しかも主人公! お前、何笑ってんだよっ!!? 草ボーボーだし!!!
本当に良いのかそれでっ!!!!??
『「どうだい、それ……大きいだろ? はぁ、はぁ」』
しかもBLキターーーーーーーーーッ!!!!!!?
★★★★★★★★★★
はあっ、はあっ、はあっ、はあっ……。
も、も、も、もうダメだっ! 耐えられない!!
こ、こここれ以上読んでしまったら、俺はもう後戻りできないレベルで汚染されてしまうッ!
な、何て濃ゆい小説なんだ……。
元日本人の俺にとってはアレなタイトルだったが、『ひょっとしたら、こっちではそうでもないのか?』と思って少し期待してみたのに、まさか俺の頭で考え得る最悪を軽くブッ千切って来るとは。
主人公じゃなくて読者をトリップさせる小説だな、コレは。
ダメだコイツ、早く何とかしないと。
「……ふぅ」
触手を使って、例の危険物を本棚の上の奥の方へ、見えないようにして置く。
これで大丈夫だろう……。
万が一にもセーレたんが手に取ってしまう可能性を極力排除し、大仕事を終えた俺は……もうライフはゼロに近かったが、気力を振り絞って再度本棚と対峙する。
なんかもう、本棚がパンドラの箱に見えてきた……。
しかも、たったひと欠片ならまだしも、俺にとっては割と希望に満ちているだけに始末に負えない。
セーレたんの為の地雷処理というか、毒味的な役割も必要だし。
こ、これが孔明の罠だったとしたら、本当に恐ろしい策士だぞ。
さ、さあ、次に手に取ってみたのは、かなり薄めの本である。
これはこれで罠の可能性を相当孕んでいるが、今の俺のHPではこれが限界だ。
すぐに本を閉じれば、死にはすまいッ!
「――――ごくっ。
しゃ、しゃあ、たいとりゅは……」
『週刊 かいわれを育てよう 第二号』
二号来たあああああーーーーーっ!!?
あったんだ二号!? まさかあるとは!
恐るべし、異世界版ディア○ス○ィーニ。
だが、さっき読んだアレに比べれば全然大した事がないので、割と安心して読むことにする。
まずは目次から。
『美味しいかいわれレシピ十選』
『意外な落とし穴! かいわれがうまく育たないワケ』
う、うん? 意外に普通だな。
『エッセイ特集:「かいわれと私」 人気エッセイスト三人登場!』
『緊急対談:カリスマかいわりゃーが熱く語る八時!「かいわれの曲線に見るエロティズム」』
『連載小説:「かいわれ伝説殺人事件(1)」 あの大御所作家、渾身の最新作!』
「……」
な、なんというか……。
むしろ、こんな企画をいくつも思いついた出版社の人を褒めてあげたい。
……これ、順番にツッコんでいかないとダメなのかな?
まずエッセイ。
なんか、爽やかそうな感じがして意外に悪くないかも知れないと思う。
ただ、書かされた三人の作家さんにはご苦労様、と。
次に対談。
「かいわりゃー」って何だ? なんか名○屋っぽいな……て言ったら向こうの人に失礼か。
しかもエロって。 どこにカリスマ性があるのか知らんが、単なる怪しいマニアにしか見えんぞ。
そんな人の話を八時――って、十時で一日だから、ほとんど丸一日かよ!?
恐らく寝ないで聞かされ続けたのであろう社員の人が可哀相だ……。
最後の小説。
伝説って何だ、伝説って。 しかもそれで殺されるって、被害者哀れ過ぎるだろ。
そして何より、書いてるのが大御所作家って……。
斜陽なのか? そんなに崖っぷちなのか? 仕事ないのか?
最低限は仕事選べよ!
――――はぁ。
すっごく疲れた。 燃え尽きたよ。
外もすっかり斜陽だし、今日はこれくらいにしておこう。
ところで。
「きゃ~~っ♪ きゃああ~~んっ! おにぃ~~~っ♪♪」ぱちぱち!
俺が本を読みながら七転八倒する姿。
見てて、楽しかったかい?
「あい~~~~~♪」
そ、そうか……。




