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そだ☆シス  作者: Mie
プロローグ
4/744

3 拳を天に突き出し

挿絵(By みてみん)





 やったぜ!

 遂に俺の名前が判明した。

 お袋やメイドちゃんズが頻繁に話しかけてくれたおかげで、ようやく聞き取れたのである。

 残念ながら、まだお袋達の名前は判らないんだが……。


 俺の名前は「ジャス」。


 どこぞの農林規格に似ているような気もしなくもないが、悪くない語感だ。

 例えばジャスティスとか……中学二年生な名前でなくて良かったと思う。

 全国のジャスティスさん、ごめんなさい。


 ちなみに、名字は不明。 どうも貴族っぽいから多分あるだろう。

 なので、今のところは「ジャス・ナニガーシ(仮)」とでも名乗ろうか!

 ……いや、なにがしは当然冗談だが。

 というか、ジャスという名前も実は愛称だったりするか? かも知れん。



 まあこの際、俺の事はどうでも良いんだ。

 今日の本題は……今の俺の食っちゃ寝の生活の全てを共にする、俺の人生のパートナー、我が阪s……じゃない、半身とも言える相棒である。

 よし、今日から俺は水谷氏を目指すぞ!

 ……とまあ、こんなアホ丸出しな事を考えながら右の拳を天に向かって突き出している俺の横で大人しくしている、もう一人の赤ん坊が今回の主役なのである。

 俺の左手をぎゅっ♪ と握りながらすやすやとお休みの彼女。


 その名を「セーレ」という。


 この娘も愛称かも知れないが、取り敢えずは「セーレ・ホニャーララ(仮)」と……! スマン、このネタはもう良いな。

 ところで。

 何故、生まれたばかりで、まだ見た目では性別が分かりにくいハズなのに「彼女」だと知っているのかというと――――。




 ――――「見た」からですよ。


 家政婦(メイドちゃん)と一緒にミタ! あらいやだ♪


 ……こらこら、石を投げるな!

 まさに外道!! とか言うなぁ!


 いやいや……仕方なかったんだって!! なにしろ、自分自身の性別にも自信なかったんだから!

 生まれた直後は正直それどころじゃなかったので、布に巻かれた後で――


『俺、まさかTS(せいてんかん)転生じゃないだろうね!?』


――という可能性に気づいて、戦々恐々としてたんだよ。

 まぁその疑問の答えは、意図しない切っ掛けからすぐ後で解決した訳だが。

 えっ、その切っ掛けって何、だって?



 赤ん坊が、その身体に巻く布を取り替えないといけなくなる生理現象ですよ。

 それ以上言わすな。


 仕方ないと頭じゃ解っていても、精神年齢約二十歳(ハタチ)にはトラウマ級の羞恥プレイなんだから。

 今後も当分続くかと思うと鬱だ……。



 ま、まあ……そんな話は横に置いと・い・てー。

 ともかく、彼女は。


 俺と同じ日に、同じ星の下で、同じ母親から生まれた、正真正銘の双子の妹である。

 いや、ひょっとしたら姉かも知れないが……。

 でもやっぱり、そこは譲れない願いなのだ。



 ――――俺の妹は、ひいき目を抜きにしても可愛らしい。

 淡い金色の髪は絹のよう。 まだ短いが、将来伸ばせば、さぞ綺麗なことだろう。

 天使の輪っか(サ・○ーン)を授かる事(クォリティ)間違いなし、である。

 蒼く、くりっとした瞳は、見ていると吸い込まれそうだ。

 高く澄んだ可愛らしい声は、何時までも聞いていたくなる。

 こんな声で何か歌でも唄ってくれた日には……たとえ全銀河系を巻き込んだ宇宙戦争であろうと、あっという間に終結してしまうだろう。

 今も俺の手を握って離さない小さい手は愛らしく、何時までも離さないでいて欲しいと願ってしまう……。


 彼女はまさに!

 聖母より生を受け! 地上に舞い降りた最後の天使!! まさしくマイスイートエンジェル!!

 その瞳は一〇〇万ボルト、効果は抜群である。

 まだ足腰が立たないので、ズギュュュュゥンンン!!!と、○ョジョみたく背中を仰け反らせるようなポーズができないのが悔やまれる。


 なんか、三の倍数に関係なくとことんアホになっていて、兄として非常に申し訳ないのだが……。

 俺の妹がこんなに可愛いのは疑いもないのだから、愛さえあれば関係ないよねっ♪

 ……もう俺は、我が娘を見てだらしなくニヤケる世間の親父達をバカにできないよ。 既にバカになってるもん。

 身をもって知りました。


 だってさ……あの美形チート、あの聖母様の娘さんだよ!? 同じ髪と目の色だよ?

 どう客観的に考えても、将来美人確定じゃないですか!!

 かつて上場したての頃のN○T株も真っ青…値上がりどころか、連日ストップ高確実な超有望株ですよ。

 遠くない将来、光り輝く俺の天使に群がってくる(ヤロー)共の様子が目に浮かぶ……。

 見ろ、人がゴミのようだ!

 コンチクショウ!! 貴様らなんぞに俺の娘はやらんぞーーーーっ!!!

 薙ぎ払ってくれる!!!!


 さすがに『セーレたんは俺の嫁!』とまでは言わんが―― ネタならともかくリアルでそれは犯罪だ、それは重々承知している―― 彼女には必ず幸せになってもらいたい。

 決してドス黒い誘惑に惑わされることのない、清く正しく美しい女の子に育って欲しいものである。



 ――否!


 何を他人事のように考えているっ!!

『育てばいいなぁ♪』ではないっ、俺が育てるのだっ!!!

 俺が俺自身の手で、妹をそのように育て上げればいいんだっっ!!!!


 ……いやだから、ローラースケートのアイドルグループ的な事は考えてないってばよ。

 それはマジデ。



 俺はただ。


 今も俺の手を握って離さない、幸せそうに眠っているこの女の子に。


 これからもずっと、ずっと、幸せでいて欲しい。


 たった、それだけなんですよ。



 ――――うん、俺も真面目にやろう。

 彼女に相応しい兄貴にならないとな。 俺が転生チートなら、彼女もそうだという可能性もあるんだし……。

 だったら尚更だ。



 ところで。


 妹が握っている左腕が痺れて、もう感覚がなくなってきたんだが……何とかなんねぇかなぁ。





 メイドちゃんズは、今日も仲の良い様子の兄妹に目を細め、そっとドアを閉めるのであった。





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