24 赤いからといって3倍という訳ではない
十二月。
年の瀬と言えば、日本人にとってはイベント目白押しな時期である。
歌○師匠だって走り回る。 走らないか。
そういえば……こっちの世界には、クリスマス的なものはあるのだろうか?
煙突がバリバリの現役だと思われる世界だ、出っ歯なサンタクロースとしては働きやすい環境だと思うのだが。 人工衛星に追跡される心配もないし。
てか、そもそもキリストがいないか。
……まさか、○ッダと一緒に転生してきて、下町で庶民な生活とか送ってないよな!?
俺自身が転生してるだけに、絶対ないとも言い切れないんだが……。
本当にいたら五体投地するぞ?
――てな事を考えながら、俺はセーレたんと一緒に、暖かい床で五体投地している最中だったりする。
ころんと寝返りを打つ姿が可愛らしい。
そんな妹のあられもない寝姿を堪能していると、速いノックとほぼ同時に部屋のドアが開いた。
「はぁーー~~~っ♪ この部屋もあったかーーーーーい♪♪」
赤いセーターとショートパンツに、黒いマフラーと厚手のニーハイタイツを身につけた、先端をカールさせた赤茶なロングヘヤーの女の子。
手には黒いコートを持っている。
……その色の組み合わせと絶対領域に、何かこだわりでもあるのだろうか?
パート乳母さんことアナさんの娘さんである、エルネスタちゃんだ。 推定六、七歳。
彼女は入口で靴を脱ぎ、大股でのっしのっしと部屋に入ってくると、外したマフラーコートをソファーに放り投げ、俺達の横に大の字で寝転んだ。 見事な五体投地である。
しばらくじーーっと彼女の顔を見ていると、彼女もこっちを向いてニカッと笑った。
「えへへっ♪ ……もう少ししたら学校に行く時間だからさ、ママのお迎えついでに遊びに来たんだよー」
こっちが何も言わずとも答えてくれるエレネちゃん。
相変わらず、俺の思っている事を察してくれる良い娘である。
「それにしても、やっぱりこのお家はあったかいねー! うらやましいよ~~」
うーんと伸びをしながら喋り続ける彼女。
少し広がった絶対領域に無意識に目が行く。
……いやいやだから! それはアブナイってーの!!
慌てて視線を逸らす俺。
まだまだお子様なクセして、妙に大人っぽいというか……色気があるんだよなー、この娘。
決して俺がロリコンなのではない!
向こうの世界だったら、カリスマ読者モデルとかになっていそうだ。
「――――でね? 同じクラスにいつも変にカッコつけたヤツがいるんだけど……」
で、彼女は眠っている妹様に毛布を掛けてくれると、うつ伏せで両肘を立てて両手に自分の顔を乗せた状態で、正面に座っている俺にガンガン話しかけてくる。 足をバタバタさせながら。
文字通りのマシンガントークだ。
「――でさあ、あんまりおバカなこと言うもんだから、あたし電気アンマ食らわせて撃退してやったのよ!
そしたらさー? ソイツ、泣きながら『せくしゃるばいおれんすだー』とか言うの!
あははっ、意味分かんないよねー」
「……なんれやねん」
いやいや、君こそ何やってんの!?
告白しに来た男の子を返り討ちにするとか、そっちの方が意味分かんないから!
まさしく、バイオレンスナンバーワンだよ!! うまい事言ったなぁーそいつ!
「えぇー? だってソイツ、他にあと三人も―――――。
――――……え゛?
い、今、『なんでやねん!』って……ツッコまなかった??」
……。
…………。
――――!!
しまったぁーーーーーー!!??
思わずツッコんでしまった!
そんなゼロ歳児、いる訳ねぇーーーー!!
「んーーんーーんーーっ!!!」
ぶんぶんぶんぶん! と、首が取れんばかりに振って必死に否定する俺。
「――――そ、そうよねー! そんなハズないわよねーー♪
あははははは……。
……い、いたら怖いわよ……」
ほっ、何とか誤魔化せたか。
せっかく喋れるようになってきたから、どこか良いタイミングで喋って皆を驚かすつもりだったのに。
これじゃあ、サプライズを通り越して最早戦慄レベルだ。
――今の全力の否定が更に墓穴を掘っている事に今気づいたが、本人が気付いてないならそのまま流せっ!!
コンコン。
ガチャ。
「エルネー? そろそろ帰るわよー!」
よ、よっしゃーーーー!!
試合終了のホイッスルである。
「あっと、もうそんな時間なんだ!?
じゃ、また遊びに来るねーー♪」
ブンブンと勢いよく手を振って、母親と共に出て行くエルネちゃん。
「ふ~~~~ぅ……」
弱々しく振っていた手を下ろし、一気に脱力する俺。
そのままひっくり返る。
あ、危なかったぁ……。
赤ん坊が初めて人前で喋った言葉が『なんでやねん』とか、嫌すぎるっての。




