表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そだ☆シス  作者: Mie
まだ乳児編
26/744

23 題名のない演奏会

挿絵(By みてみん)





 灰色の空から、雪が降っていた。


 はらり、はらりと落ちてくるそれは不規則な軌道を描き、たまに強い風が吹くのか、渦を巻くこともある。

 その度に窓が、カタカタと小さな音を立てる。

 すっかり茶色と黄色に支配されてしまった庭は、しかしまだその色を保っていて、白くなる様子は見られない。


 積もったらいいなー。

 雪が降ると、ダイヤが乱れるから面倒だ――少し前まで(ぜんせで)はそう思っていたハズなのに、今自分が思ったのは、童心に返ったような純粋な気持ち。


 ……まあ、そんな俺も悪くないか。 文字通り子供だしな。

 横で眠る妹の頭を撫でながら、軽く笑った。




 いくらブルジョワなセントラルヒーティングを完備しているとは言っても、現代日本のエアコンのようにはいかない……と思いきや。

 鎧戸と、冬用に替えられた厚手のカーテンによって完全に外界から遮断された室内は、魔導具の明かりと意外にパワフルな暖房のおかげで、前の世界にも負けない快適空間を作り出していた。

 この家をどんな職人さんが建てたのかは知らないが、見事な匠の技である。


 そんな中、お袋はソファーにちょこんと腰掛け、毛糸で編み物をしている。

 たまに俺達に目を向けて、にこにこと微笑んでくれる。

 ……もしもここに戦闘力(いやしパワー)を測る機械があったなら、きっと爆発したに違いない!! 五三万以上は確実である。


 そして、俺達は何をしているかというと……俺は妹と二人で並んで床に座り、同じく二人で座っているメイドちゃんズと対面中。 女の子座りだ。

 珍しい構図のように見えるかもしれないが、俺達が良く動き回るようになってきたので、膝の上から飛び出して遊ぶことも増えているのだ。

 二人はそれぞれ手に違う物を持ち、俺達に話しかけてくる。



「……では、今日は私達で歌を唄いますね」


 マールちゃんが片手に持つ四角い物は、俺の見た限りはハーモニカである。


「ぅあーーー?」

「きゃう~ぁ~~」


 俺も妹様も、興味津々シンノスケである。

 ……意味分からん。


「じゃあ、最初はわたしから行くよー♪

 何しようかなぁ~。 ……じゃ、お姉ちゃん。 最初は――」


 マールちゃんは題名を聞くと、小さな唇をそっとハーモニカに添えた。




 ~♪ ~~~♪ ~~♪♪~~~~♪~~~~~~♪




 意外にも、静かな旋律と歌い出しから入る。

 ゆっくりとしたテンポと、優しい歌声。 たぶん、有名な童謡なのだろう。

 初めて聞くのに、何だか懐かしい感じのする曲だ。


 ……そういや、童謡なんて最後に聴いたの何時だったっけ?

 ふとそんな事を思ったが、目を閉じ、頭の中を空っぽにして歌に音の流れに身を任せることにする。




 ♪~~~~~~――――




 音の余韻が終わり、目を開けるとチャロちゃんと目が合う。

 いつものニッコリ笑顔を見せてくれた。


「おーーぅ♪ わーーー!」

「きゃ~~~~あ! やぁ~~♪」


 スタンディングオベーションしたい所だったが、赤ん坊が急に立ち上がるのもどうかと思ったので、座ったまま音の鳴らない拍手モドキで賞賛する事にする。 ブラボー!

 妹様も手足を動かし、全身で喜びを表している。

 大盛況である。


「えへへへ~♪ お二人とも、ありがとうね~!」


 しっぽをぱたぱたと大きく動かしながら、はにかむチャロちゃん。

 ちょっと照れてるなー?



「ふふっ、私も負けていられませんね。

 ……ではチャロちゃん、私は――」


 題名を聞いたチャロちゃんは、手に持つ……陶器製だろうか? 胃袋のような形の―― ちょっと例えがアレだが―― オカリナを口に添える。




 ♪~~~♪♪~♪♪♪~~~♪♪~♪~♪♪~~~♪~




 これも意外、ちょっと強めでかつハイテンポで吹かれる曲。

 軽快なリズムで歌われる歌詞は……何時かに聞いたことのある物語だった。

 いつもの彼女よりも高く、透き通った歌声で語られる、小さな男の子の冒険譚。

 普段は抑えて低めの声を出してる事は気付いていたけど――予想を遙かに超えた可愛い声と歌唱力に驚きつつ、話の内容を思い出しながら、リズムに合わせて無意識に身体を揺らす。



 最後まで軽快なリズムで歌い終わる。



「おーーーぅ! ぃえーーーーーい♪」

「きゃあ~や~~~や~~~~ぁ♪」


 プロ級と言っても過言ではないと思う素晴らしい歌に、先程に勝るとも劣らない賞賛を二人で送る。


「お二人とも、ありがとうございますっ♪」


 いつもより明るい笑顔のマールちゃん。

 ちょっと頬が赤いですよ?




 その後も何曲か交互に披露してもらい、テンション赤丸急上昇の俺達。

 色んな音を出すそれに興味を持ったらしく、ハイハイでチャロちゃんに近づいて手を伸ばす妹様。


「おっ♪ ……セーレさま、吹いてみますー?」


「あ~~~~い~~♪」


 いつもの膝の上に乗せると、チャロちゃんは妹にオカリナを持たせて教え始めた。


「……ジャス様も、こちらでいかがですか?」


 マールちゃんも、ハーモニカを俺に見せて誘ってくる。



「ぉー♪

 ……お? おおぉぉっっ!!?」


 無邪気に喜んで手を伸ばそうと思った瞬間、トンでもない事に気がついた!!

 こ、これは……!



 ――――これは、伝説の間接チッス!!



 こ、こんな事――!

 こんな事、お、俺には許されるハズ……!!




「ぅわーーーーーーーい♪♪♪♪」



 非常に素直だった。

 赤ん坊だもの!





 その日は一日、とても賑やかで楽しい演奏会でしたとさ。

 まる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ