21 冷たくて、あたたかい夜
『人間は、過ちを繰り返す生き物なのよー!』
どこかの生徒会長か、もしくは宇宙で戦うロボットの中の人みたいな名台詞っぽい事を言ってみる……。
……あー。 頭が回らん……。
隣ではお袋が、マイハニーの鼻をぱっくり咥えて、ずずーっとハナを吸ってあげている。
おお、母親ってスゲー。
いくら我が子でも、何の抵抗もなくできるかと言えば……妹のなら俺もできるか。
いや、マニア的な意味じゃなくて。
チャロちゃんは、濡れたハンカチを絞って俺の顔の汗を拭いてくれてる。
凄く眠そうだな……ごめんよー。
マールちゃんは――――毛布を被ってソファーで仮眠中。
はー。
兄妹そろって風邪を引くとわ……。
理由は明らか。
あれから何戦か交えてたっぷり汗をかいた後、二人共そのまんま床に寝ちゃったからだ。
日が暮れ始めて寒さで目が覚めた時には、もう既に熱が出始めてました。
そういや……今くらいの時期って、母体からもらった免疫が切れて病気しやすいんだっけ?
こんな遅くまで看病してもらって、本当に申し訳……ごほごほ!
……。
…………。
でも、こうして看病してもらうのって、何年振りだろ?
前世でも、あんまりなかったような……気が……する。
なんか、すっごい……安心……す……る…………なぁ――――。
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「……二人とも、眠ったみたいね~」
「そうでふね……ふぁぁ。 ……ご、ごめんなさ~い!」
「ふふっ、いいのよチャロちゃん。
さあ、チャロちゃんも寝ていいわよ~」
「ふゃ……で、でも――」
「私も、もう少し様子を見たら、マールちゃんに代わってもらうから」
「そ、そうでふか……はぃぃ。 じゃあ奥しゃま、おやすみなひゃいまへ~……」
「――ええ、おやすみなさ~い♪」
**********
――――ぱたん。
ドアが閉まって部屋が静寂に包まれる。
彼女は入口側の壁のスイッチを操作して部屋の明かりを落とすと、踵を返し反対側にある窓へ向かった。
閉められたカーテンは夜空の光を受けて全体がぼんやり光っており、薄い布を通り抜けた光が、側に寄る彼女の金の髪を、白い肌を、白いネグリジェを照らし、闇の中にあたかも月の妖精のような姿を浮かび上がらせた。
一匹か二匹か、微かに聞こえる声は秋の虫。
カーテンに手を入れ少し隙間を空けると、ガラス越しにひんやりとした夜の冷気を感じた。
見上げた夜空には、降り注がんばかりの満天の星々。
西の方には、彼女の小さな握り拳にも満たない――ほんのり青みがかった、小さい月が見える。
大きい方の月は既に沈んでしまったらしく、見当たらない。
ガラスを白く曇らせながら、セフィアはしばらくの間、じっと沈んでゆく月を眺めていた。
――――――…………ぉ……ぉ……ぉぉぉおおおおおーーーーー!
バターーーン!!
「うおおおおおおおおっっ!!
ジャースッ! セーレーッ! 死ぬなあーーーーっ!!
死なないでくれぇぇぇええええええええーーーーーーーーーーっっっっ!!!」
ガバッ!「――うひゃあっ!? な、なななな何ですかっ奥様っっ!?!?」
ビクン!「ぅおあっ!?」
びくっ!!「っ!? ふぇ゛…………!!」
「――――あ~~な~~たぁ~~~?」
ゾクゾクッ!!「ぬぉ!? な、なんだ?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!
にっこり♪
「――――死んで、頂けますか~?」
ぎゃぁあああああああああああああああああああアッーーーーーーーーーーー!!!
この日の負傷者。
重傷一名、屋敷内にて帰宅直後の男性。 全身打撲。
軽傷一名、隣の家に侵入しようとしていた泥棒。 驚いて壁から転落。
以上。




