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そだ☆シス  作者: Mie
まだ乳児編
16/744

13 娑婆(シャバ)だば~

挿絵(By みてみん)





 時折、涼しさを感じるようになってきた早朝。


 コツ、コツ。


 いくつかの不規則な靴音がなり、俺達の身体がリズミカルに縦に揺れる。

 聞き慣れた少女達の声に重なるのは、普段よりも近い小鳥達の歌い声。

 朝の日差しを浴びながら、心地良い振動に身を委ねる。

 涼しい風がふと頬を撫で、微かな朝餉(あさげ)の匂いを運んできた。




*********



 王都の朝は早い。

 女性達は〈日の出の鐘〉の音と共に動き始めます。

 まずは、窓を開けて空気の入れ換えから。

 一日の営みの準備に臨むべく、二度三度深呼吸して眠気を払い。

 水汲み、お食事の用意、旦那様の送り出し、お子様のお世話、洗濯、買い物――。

 きっと今日も仕事が盛り沢山でしょう。


 商人達は更に早いです。

 まだ空も暗い内から店に集まり、従業員全員で仕込みや掃除などの開店準備。

 店主の方はその上、従業員の仕事を見たり店内を確認したりしているのでしょう。

 まるで戦争のような準備作業が終わるとようやく開店、そこから本当の仕事が始まるのです。




 ――そんな朝の活気の気配を遠くに、我がオリオール家のある〈二等貴人区〉は比較的静寂に包まれています。


 生活の音はほとんど聞こえてきません。 ごく微かに朝食の匂いが鼻をくすぐる程度。

 ……思わず献立を予想してしまいます。

 時々道を行き来するのは、各家の仕事着に身を包んだ顔馴染みの使用人達だけ。

 旦那様やご子息様を乗せた馬車が行き交うようになるのは、三時の鐘――所謂(いわゆる)〈仕事始めの鐘〉が鳴ってからの事でしょう。


 すれ違う同業達(みなさん)に会釈を返しながら、私達は奥様と並んでお散歩です。

 たまにお散歩をする私達ですけど……今日は、三人だけではないのです!

 奥様のお許しが出て、ジャス様とセーレ様もご一緒です♪

 私がジャス様を、チャロちゃんがセーレ様を……二人でお抱きする時は、だいたいこれが定番です。



「すぅ~~~~~っ、はぁ~~~~~~~っ……少しずつ涼しくなってきたわね~♪」


「まだまだ暑い日の方が多いですけどねー」


「チャロも、そろそろ毛布を掛けて寝るようにしなさいね?

 ……奥様、そろそろ衣替えの準備を致しましょうか? もうすぐ十月になりますし」


「ええ、そうね~。 ジャスちゃんとセーレちゃんの新しい服も買わないとね~♪」


「はーーーいっ! ……わたしも今度、新しい秋物見に行こーーっと!」



「……おぉーーう~~~ぁう?」


 話をしながら歩いていると、興味深そうにあちこち見ていたジャス様が、こてんと首を傾げながら声をお上げになりました。

 微妙に語尾を上げられたので、まるで私達の会話に加わられているかのように聞こえますね。

 すごく可愛らしいですっ♪


 ……そんなことはあり得ないとは、私も孤児院でたくさんの子供を見てよく知っていますけど……。

 ジャス様に限っては、『本当にお分かりになっているのかも?』と思ってしまいます。

 チャロの腕の中で、きょとーーんとしたお顔で固まっていらっしゃる、セーレ様のようなご反応が普通ですから。

 あ、奥様が頭を撫でられたらニッコリされました! 可愛いですねー。



「はいっ、これから少しずつ寒くなってきますからね……。

 今の内に服を出して、着られなくなっていないか確認したり、洗ったりしておくんですよー」


「……ぉおーーー♪」


 私もジャス様のお背中をぽんぽんしながら話しかけてみると、嬉しそうなお声でお応えをいただけました!




 ――――そろそろ、貴人街の端が見えてきました。


 あまり長い間外に居られると、お身体に触りますね。

 奥様が立ち止まられて仰います。


「じゃあ、(うち)に帰ってご飯にしましょうか~~~~」



「はーーーーーいっ♪」

「はいっ、奥様」




 私達の一日は、これからです。





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