主人公も知らないクラプスを倒した○○な方法とは? みたいなタイトル詐欺ってよくありますよね
急に天候が変わり空に厚い雲が覆ったかと思ったら急に雨が降りだしてきた。
「なんだ……こんな広域に……そんなことができる人間がいるわけがない! いや……まさか?」
クラプスが急に慌てながら空に向かって叫び出す。
雨に打たれていたゾンビたちは地面へと崩れ、タイタスの動きは先ほどよりも鈍くなっている。これま魔法……聖属性の広範囲魔法のようだ。
「アルス様、こんな魔法を使えるのは……?」
「わからないが敵ではないようだ。少なくとも俺たちに被害がないからな」
降っているのは城のまわりだけではなく、街全体に雨が降っている。
俺たちを助けるために放たれたのか、それともこの街全体を狙ったのかはわからないが、チャンスには変わりない。
ありがたくこの好機を使わせてもらう。
「レノバ、聖魔法で弱っているうちに、彼らにはお帰り願おう」
「そうですわね」
「クラウド!」
「ピギュ!」
クラウドの火炎球がタイタスを包みこみ一気に燃やし尽くしていく。
聖なる雨で崩れてきたところに、クラウドの火炎球は効果抜群だった。
聖魔法のおかげでで耐魔法のレベルも下がっているようだ。先ほどよりもクラウドの魔法の効きがよくなっている。
「クラプス……残念だったな。わざわざ隣の国にまでやってきたというのに、なんの成果もだせなくて」
「そう簡単に行くと思っているのか? 私はこの世界を統一する者だ。お前らのような雑魚とは違うんだよ」
前の時に名前もわからない手下がやられていたが……今回もあっさりといきそうだ。
「こんなところで……私の夢が……雑魚が調子乗ってるんじゃねぇぞ!」
クラプスの態度が豹変すると急にクラプスを覆う魔力の質がドロリとした嫌なものに変わる。
「レノバ、クラウド! 一度距離をとるんだ」
クラプスの表情が変わり、無言で手を振るうと一瞬でタイタスが回復していきゾンビ騎士が召喚される。雨は相変わらず降っているが、弱める力よりも回復する力の方が多いようだ。
「私としたことが、こんな雑魚のせいで気が散ってしまいました。当初の予定通りこの国は私がもらいます。なに大丈夫ですよ。あなた方は道にある小石。私が相手をするまでもありません」
クラプスのまわりから何かぞわっとする力が溢れだす。
「さぁ終わりを始めましょうか」
クラプスがカッコつけながらセリフを言い終わるとほぼ同時に空より、大量のスコールがクラプスたちに襲いかかった。
目を開けておくこともできない。
「レノバいったん避難するぞ」
俺たちが距離をとり屋根の下までくると、クラプスが一生懸命唱えていた魔法が崩れ去っていくのとほぼ同時だった。雨が強くなったことで、闇魔法であるタイタスの魔法を維持できなくなったようだ。
終わりを始めるとは……?
なんか不憫な奴だな……悪いことをしてるわけだから同情の余地はないんだけど。
屋根のある場所からクラプスたちを見ていると、最初に骸骨剣士が雨によって溶かされ、タイタスは土の塊に戻ってしまった。
あれでは復活することはできないだろう。
「ピギュ―」
クラウドが空気を読んでか、タイタスの土の塊に火炎球を打ち込み爆散させると、跡形まもなく消え去ってしまった。
「クラプスまだ戦うのか?」
「…………!!」
何か言っているが雨音がうるさくてよく聞こえない。
「なんだって?」
「…………!!」
さらに声をかけるが、クラプスは諦めたかのように空へと舞い上がって逃げようとする。
「逃げるのか! この卑怯者め!」
「アルス様、任せてください」
「ピギュ!」
レノバは近くにあったがれきを思いっきり投げつけ、クラウドも火炎球を吐きだした。
俺たちの方を見下しながら、そんなものに当たるかといった感じで挑発してきた。
その瞬間、空に雷が走りクラプスに直撃した。
とことんついていないようだ。
「逃がすか!」
「アルス様、もう大丈夫です。本当は捕まえて最後までやってやりたいですが、今は逃げるクラプスよりも生きている人たちの救出の方が先ですので」
「そうか……わかった」
クラプスはぷかぷかと浮いていたが、力なく俺たちの国とは別の方向へ飛んでいく。
クラウドが何発か火炎球をぶつけていたが、それでも落下してこないので、そう簡単には倒せないようだ。取り逃がしてしまったが……今はレノバの国の人たちを救出する方が先だ。
「それにしてもこの聖魔法の雨はいったい誰がやったんだ?」
「わかりませんが……なによりこの魔法には助かりました。これだけの広域魔法を使える人間は少なくともこの国にはいなかったと思います」
「どうする? これを使っている人を探すのか?」
「探したいところではありますが……まずはお父様の容態を確認しにいきます」
「そうだな」
いろいろなことが起こったがとりあえず敵は撃退できた。
それにしてもこの広域魔法は……謎が深まるが今は他にやることをやろう。




