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未来は自分の手で……

 激しい頭痛がする。

 目を開けるとレノバの顔のアップがあった。

 思わず苦笑したが、そのままレノバを抱きしめる。


「アルス……様? えっ⁉ こんなところでダメですよ?」

「大丈夫。もう同じ失敗はしないから」

「はいっ? 本当に大丈夫ですか? 体調悪いなら言ってくださいよ」

「あぁ」


 まだ頭痛がするが問題ない。

 クラウドがぺチぺチと頭を叩いてくる。

 クラウド本当に可愛いな。


 レノバの目から涙がこぼれているので涙を拭いてやる。

 大丈夫。もう危険なことはおきないから。

 確かこのあと……。


「アルス様!!」

「わかってるよ。大丈夫」


 そこにはフードを被った亜人と人間たちがいた。

 あれほど自分たちで亜人排斥を訴えていたのに、自分たちも亜人を使ってこうやって行動をしているなんて本当に舐められたものだ。


 「これが本当に探していた人物なのか?」


 「あぁ俺の鼻は誤魔化せない」

 男たちが会話しているのを聞きながら男たちを確認する。

 こいつらなら問題ない。


「間違ったところで2人この国から消えるだけで問題はない」


「それもそうか」


「お前ら、隠蔽する俺らのことも少しは考えろ」


 こんな奴らにレノバは殺されたのか。

 身体の奥から怒りがこみあげてくる。


 遠巻きに見ていた刺客から小さな手裏剣のようなものが投げつけられる。


「ピギュ」


 クラウドが魔力障壁をはり防ぐ。

 

「雑魚にしては少しはやるようだな」


「雑魚は雑魚だよ」




 男たちはゆっくりと距離をつめてくる。


「ねぇあんたたちの狙いは私なんでしょ? 大人しく私が投降したらアルス様だけは助けてくれない?」


「あぁいいぞ。俺たちの目的はお前だけだからな。それにお前を捕まえるのにこちらもかなりの数を犠牲にする覚悟できたからな。雑魚」


「約束よ。でもあなたたち勘違いしてるわね。私よりアルス様の方が100倍強いんだからね」


 レノバが俺の肩に乗っていたクラウドを空高く投げる。


 何度この時のことを後悔したことか。

 レノバが俺の顎に向かって蹴りをいれてくる。

 これで前回はやられてしまったが、もう二度とあんな後悔はしない。

 俺はそれを受け止める。


「レノバの蹴りは本当に危険だから、こんなことしちゃダメだよ」


「アッアルス様なんで……」


 レノバの目には涙がいっぱいたまっている。

 本当に辛い選択をさせてしまったのだろう。

 レノバを優しく抱きしめる。


「大丈夫だよ。レノバ一緒に戦おうか」


「ダメですよ。アルス様だけでも逃げてくれなきゃ。だって……」


「そんなに俺頼りないか? まぁ見ててくれよ。俺には仲間がいるからな。コボルト!」


「マスターお呼びでしょうか?」

 どこからともなくコボルトがあらわれる。


「こいつらを全員生け捕りにしたい」


「仰せのままに、通常時の対応ではなく緊急時対応をさせて頂きます」

 コボルトが一瞬俺の影に消えるとその陰の中からコボルト十勇士があらわれる。

 

「どうぞマスターのお望み通りご命令ください。必ずや期待に添えてみせましょう」

 こんな時なのにコボルトたちは俺に片膝をつき敵に背を向けている。

 だが、コボルトたちは敵に背を向けているのにもかかわらずまったく油断していない。


「コボルトたち道を作ってくれ」

「承知しました。マスターの望むがままに」


 男たちはコボルトたちが影からでてきたことでざわめいている。


「なんだあのコボルトは? 影の中を移動するコボルトなんて聞いたことないぞ」


「何からでてきたとしてもコボルトはコボルトだ」

 そう言ったのは虎の獣人のようだ。

 フードは被っているが黄色と黒の毛皮が見えている。

 

 いつもどこでも、コボルトの姿というのは非常にいい。

 相手が勝手に油断してくれ、過小評価してくれる。

 だが彼らがコボルトの実力を知る時にはもう終わってしまう。


「あぁやだね。躾のなっていない猫ちゃんは口が悪くて」

「なんだと! コボルト風情がなめた口ききやがって。俺の……んがっ」


 レオンが虎の獣人の足を払いレオンの前にうつ伏せにさせ首筋をなでる。

「よしよし。いい子だな。ほら猫はここが気持ちいいんだろ」

「てめぇふざけやがって。俺をにゃめる……にゃ」

 

 レオンが首筋をなでていると虎の獣人はそのまま意識を失ったのかピクリとも動かなくなった。殺してはいないようだが、もう気絶してしまっている。


「レオン。今日は依頼の日じゃないのか?」

「依頼はありましたがマスターからの緊急呼び出しはもちろん別です。それにこんな奴らならそんなに時間はかからないので」

「ありがとう。頼んだよ」

「まかせてください」


 レオンと俺が話しているとフードを被っていた狼の亜人が叫んでいる。

「コボルトが上位種族の俺たちに勝てるわけないだろ」

「まったく犬の躾は飼い主の仕事だっていうのに躾がなっていない犬が多くて困る」

「私たちのようにマスターに従順になるように躾てやるしかないわね」


 レオンは軽く跳躍し狼の亜人を蹴りあげる。

 本当に強くなったものだ。

「なっなぜだ。コボルトがそんな動きをできるわけがない」

「お前の狭い常識で俺たちを語るんじゃないよ」


 亜人たちはレオンの動きに完全についていけていない。


「アルス様コボルトたち異常に強くなっていません? 前はもっと可愛げがあったのに」

「ちょっとしたツテで鍛えてもらっているからな」

 

 もはや彼らをコボルトと同じで考えることはできない。

 ピートは吹き矢で相手を痺れさせたり、連携をとりながら邪魔者を排除していく。

 俺はこの中で相手のリーダーを探す。


 コボルトたちの対応で別々に動いているように見えるが、一人だけ守られるようにいる男がいた。こいつがすべての元凶か。


 このチームは強い者がまとめているのではないようだ。

 なにか権力を持っているのか。


 俺はその男に標準をあわせると、コボルトたちは俺の進むべき道から邪魔者たちを排除してくれる。


「アルス様! 危ない!」


 遠巻きに何かを投げつけてきた奴がいるが、それらはすべてクラウドがはじく。


 こんな奴らにレノバは殺され、戦争に巻き込まれのか。

 きっちり借りは返さなければいけない。


「なんなんだこの化け物たちは」

「聞いてないぞ。こんな国に喧嘩を売って勝てるわけがない」

「おいっ暴れ姫を殺すだけじゃなかったのかよ」


 少しは腕は立つようだが無駄口が多いな。

 1歩1歩なんの障害もなくリーダーの男へと歩いていく。


「なんなんだお前らは、今そいつを渡せば命だけは助けてやるぞ」

 

 大丈夫かコイツ? 

 まわりが全然見えていないじゃないか?


 こんなんでは戦争で生き残ることなんてできない。

 コイツの仲間はどんどんコボルトたちによって無力化されていっている。


「なぜこんなことをする? お前は誰の指示で動いているんだ?」

「言うわけがないだろ。俺を誰だと思っているんだ」

「そんなの知らん」


 正直こいつがどこの誰だろうと関係ない。

 とにかくあんなくそみたいな理由の戦争を回避させなければいけない。


「アルス様、この人バルモノ国の防衛大臣の側近リロコ・パトリックですよ」

「なっ……知らん。誰だそんな奴は」

「お前の目的はレノバの殺害だろ? それは国をあげての命令か?」

「なんだ? 知らない。俺は知らない」


 どうするか。

 今はレノバは結果的に殺害されていない。

 だから、こいつを突き出しても罪にとえない。

 ちょっと襲われただけだが、これだけではすぐに解放されてしまうだけだろう。

 だがここで逃がしたらまたレノバが襲われる危険がある。

 なんとしてもここで決着をつけるしかない。


「知らないのなら仕方がない。こいつを連れてバルモノ国へ乗り込むか」

「アルス様……実は私……アルス様が探していたバルモノ国の王女なんです」

「そうか。教えてくれてありがとう。お前のことは俺が守るつもりだけど……一緒に行くか?」

「一緒に行きます。行かせてください」


 コボルトが最後の一人を気絶させる。

 二度と戦争になんてしてたまるか。

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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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[一言] 夢オチってどこでだ?
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