双縁の剣
その剣は2本の剣が鞘の部分で1つに繋がれており、借りて抜いてみようと思ったが抜くことはできなかった。
剣には細かい装飾が飾られ、ネコの肉球のような模様が鞘部分に掘られている。
「実は、この剣は猫獣人の双子の鍛冶が作った剣なんです。名工と言われてる分類だと思います。アルス様こちらの柄を持って魔力を込めてください」
俺はレノバに言われるがまま柄の部分を握るが今まで通り鞘から抜けることはなかった。
だが、レノバがもう片方の柄を握ると剣が2本に分離する。
「おっなんだこの剣は?」
「フフフ、アルス様聞いて驚いてください。この剣はお互いのいる方向がわかる剣なんです」
「なんだ呪いの剣か」
レノバのいる方向がわかる剣なんて罰ゲームのようなものだ。
「アルス様呪われてるってどういうことですか! いくら私でも泣きますよ」
レノバがわざと泣きマネのようなことをしてくる。
「アァーワルカッタ。ツギカラキヲツケルヨー」
「アルス様謝罪する気がないやつですね」
「それでこの剣は結局なんなんだ?」
普通の使えない剣を買うなんてことはないだろう。
ふざけるのはほどほどにしてレノバがこの短剣を買った理由を聞いてみる。
レノバは嘘泣きをやめ真剣な顔になり説明をしてくれた。
レノバによると、この剣は二人で持つことでその魔力を剣に登録することができ、離れた場所でもいる方向を示すという。
この剣を作った双子の猫獣人たちは戦乱の時代にこの剣を作ったという。
今でも猫獣人が鍛冶をするのは珍しいが、その当時鍛冶屋で猫獣人というのはかなり珍しく差別も激しかった。
鍛冶と言えばドワーフの仕事とされ、この二人がどこで鍛冶を習ったのかは生涯あかされていない。ただ、この二人が作る作品には多くの不思議な力が宿っているものが多く、この剣もその一本だという。
「アルス様今ならわかると思いますが、この剣をよく見てください」
「……これって……もしかして妖精か?」
自分で抜いた剣をよく見ると、そこには小さな妖精が剣の周りを飛んでいる。
クラウドにも妖精が見えるようで興味深々だ。
クラウドが飛んでいる妖精に触ろうとすると妖精はゆっくりとクラウドの頭の上にとまりクラウドの頭をなでている。
小さいのにクラウドのお姉さん的な感じなのだろう。
この組み合わせは可愛い。
「そうです。この短剣は風妖精の力を借りて相手のおおまかな位置を知ることのできる妖精の短剣なんです」
「それはすごいな! ただの呪われた短剣じゃなかったんだな」
「アルス様まだそれいいます?」
「これ300ミノモなんていう値段で買えるものじゃないだろ?」
「きちんと使い道を理解している人なら10万……もしかしたら100万ミノモだすって人もいるかも知れないですね」
「そんなのを俺に渡していいのか?」
「もちろんです。ほら、アルス様がいる方がわかった方が何かあった時にすぐに助けにいけるじゃないですか」
レノバは満面の笑みで俺の方を見てくる。
もちろんおっさんの満面の笑みは俺の心にはなにも響かなかったが。
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