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クレープ屋にて

 レノバに連れられてきたのは街の広場だった。

 ここには色々な屋台がでており変わった異世界の食べ物などもある。


「アルス様ここです!」


 そこには異世界名物クレープと書かれた看板が掲げられていた。


「なんでクレープ屋なんだ?」


「それはですね。女性で戦闘能力が高いなんて絶対に頭がおかしい家に決まってます。だからきっと家をでて最初に食べたくなるのはコレ! 甘い物に決まっています」


「そっそうなのか?」

 確かに女性は甘い物が好きなイメージはあるが……。

 やっぱり女性の心がわかるのだろうか。

 少し感心してしまう。


「とりあえず並びましょ。まずは二人で食べてからです」

 クレープ屋は人気のように俺たちの前に何人か並んでいる。


「レノバは食べたことあるのか?」


「いや、食べたかったんですが、この中に並ぶ勇気がなかったんです」


「この中……?」

 まわりを見回すとカップルや女性のグループが多く一人で並んでいる人はいなかった。


「なんだこれ」


「そうなんです。この異世界名物はなぜかカップルや女性の仲のいいグループしか買いにこれない呪縛があるんです。いや、ここまでくると何かの呪いですね。私はいつも遠巻きに見ているしかなかった。そうこれは聖戦です」

 聖戦の意味がわからん。

 それにこれはレノバの私怨じゃ……。

 俺の納得しかけた感心を返して欲しい。


「さぁアルス様一緒にいきますよ」

 レノバさりげなく俺の手を握ってひっぱるのをやめてくれ。

 払いのけるわけにもいかないが……まわりの視線が痛い。


 クレープ屋には結構色々な種類があった。

 異世界での名称をそのまま使っているのかバナナやイチゴ、モモなどもある。


 俺は一番人気のチョコバナナにする。

「レノバは何にするか決まったのか?」


「はい。私はゴブリンの実クレープにしようかと思います」

 ゴブリンの実は毒々しい紫色をしており見た目からしてやばそうな感じがある。


「ゴブリンの実とか大丈夫なのか? 見た目からして絶対に美味しくないと思うんだけど?」


「大丈夫ですよ。クレープは正義です」

 それならいいけど。一応お店の人にも当初の目的の聞き込みをしておく。


「うーん。青い髪の女性はいっぱいいるけどね。それだけじゃね。ただ不審者のような人間なら何度も見たぜ」


「不審者? どんな人ですか」

 店員は俺の横を指差し答える。


「あぁあんたの連れだ。そいつがいつも遠くからずっとこっちを監視してたんだよ」

「そうですね。確かに怪しい奴ですね」

「ちょっと! アルス様それはひどくないですか。私全然怪しくないですよ」


「ちょうど1年前くらいか? よく遠巻きに見てたよな?」

「もしかしてバレてました?」

 レノバくらい顔が濃ければ覚えられていてもいいだろう。


「あぁ遠巻きだったからうちかどうかわからなかったがよくこっちを見てたからな」

「だってどうみてもクレープを食べるのはリア充しかいないじゃないですか」

 レノバは改めてまわりにいる女性やカップルを眺める。


「じゃあ良かったなこの1年で一緒に食べにきてくれる彼氏ができたんだから」


「もうおじさんったら、私たちまだそんな関係じゃないですよ」

 俺の方をチラッチラッと見てくるので話題をそらす。

 それにまだって……。

 今後もそういう関係になるつもりはない。


「たしかにこの中で一人食べにくるのは気まずいかも知れないな」

 レノバに同意をして話をそらす。


「でしょ! だから私はいつも遠巻きに見てるしかなかったの」


「どうだ1年待って食べてみた感想は?」


「やっぱりクレープは正義でした。ゴブリンの実と言うからとんでもない味を想像しましたがすごく甘いです」


「これはゴブリンが好き好んで食べるからそう言われているだけで非常に甘いんだよ。」

 見た目に反してゴブリンの実は非常に美味しいらしい。

 レノバは美味しそうにクレープを食べている。


「ところで、これって結局レノバが来たかったところじゃないのか?」


「そうですよ」

 こいつあっさり認めやがった。


「いやレノバが来たいところじゃなくて人を探して欲しいんだけど」

「私は乙女代表ですよ。私以上に女性の心を理解している人なんていません。ここでダメなら次の場所いきますよ」


 レノバは嬉しそうに俺の前を歩きだす。

 やれやれ。どうせ一人ではわからないんだからもうしばらく付き合うか。

本日無事1巻発売となりました。

本当にありがとうございます。


ぜひお手にとって頂ければと思います。

よろしくお願い致します。

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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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