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そして解決へ……

「それじゃまずどこから話すかの」


 先王が話だしたのはこの国の隠された物語だった。

 この世界では未だに神と人間たちの距離が近く、影ながら神の意思代行を王が行ってきていたという。

 その為、この国の王には代々女神から特別な力が与えられていた。

 その名も、


『女神からの啓示』


 この力は女神から直接世界の危機や大きな問題がおきそうな時に女神からの啓示をうける。

 それを受けた王は全力でそれの解決を目指すと言うものだった。

 女神が直接この世界に関与することは女神の上の神によって認められていない。

 ただ、女神の意思に反するように一部でこの世界を壊そうとしている悪魔と呼ばれる種族がいるそうだ。

 彼らの目的がなんなのか未だにわかっていない。


 ただ、彼らが絡むことによって今までも大きな災害が引き起こされてきた。


 先王はその女神からの啓示とは別で特別なスキルを授かっていた。


『先見の光』


 こちらは女神の啓示が国規模での災害を予見する能力なら、こちらは個人レベルでの未来を予知し、そして回避するための道を1つ示す能力だった。

 そしてこの力はかつて魔王が持っていたものと同じ能力だった。


 魔王が魔王になった理由は、この先見の光のせいだった。

 魔王は別に世界を手に入れようとしたわけではない。ただ、素材の為に狩られていくまわりの魔物を助けようと能力を使っていった結果、人間たちとの戦争へ繋がっていってしまう。


 この先見の光というのは使う人にとって、もろ刃の剣だった。


 確定された未来を覆すことができる素晴らしい力であると同時に、未来を覆すための道は一つしか示されることはなかった。しかも魔王が仲間を助けようとした結果、泥沼の戦争になったように、小さな未来を変えることが後々いい未来へと繋がっているわけではないのである。


 だけど、

「もし目の前で笑っている人間が近い将来死ぬとわかっていたらどうする?」

 その結果が休みなしの訓練やアルスへの襲撃が必要だとしたら。


 この示される未来は人の常識の枠を超えていく。

 そこに善悪や倫理などはすべて超越された未来が提示されるのだ。

 そのため、先王も助ける方法がわかっていても助けられないということもあった。


 決断はいつも苦渋の決断ばかりだった。

 誰かを傷つけ、苦痛を与え、それでも死ぬよりまだいい。

 そのギャップの中で行動が正しいことばかりだとは本人たちも思っていない。


 でも、その結果誰かが助かるなら先王が異常だと言われても行動するしかなかった。

 手に届く人たちを守るために。

 それが自分たちを犠牲にする未来だとしても。


 先王たちがこの能力を大っぴらにしなかったのにはそこに理由がある。

 確定した未来を変えるためにはそれなりのリスクが伴うのである。


 その示された未来を無視してもまっとうな方法で未来を変えようと何度も挑戦したが、結果は変わることはなかった。


 そして、変えてしまった未来を誰かに説明しても誰も信じてはくれなかった。

 先王が異常行動をして誰かの命を救ってもそれを証明する手段がない。


 説明しても先王の発言もおかしくなったと言われて終わりになってしまう。

 ただその中で無条件に先王を信じてくれたのが先王の妻だった。


 先王の妻は、

「あなた一人がみんなに嫌われる役をやる必要はないわ。私があなたと一緒にみんなに嫌われてあげる。世界中が敵になったとしても私が味方でいてあげる。だから一緒にあなたが正しいと思うことをやりましょ。そしてこの国の人たちを救いましょう」


 そう言って一緒に未来を変える行動をとってくれた。

 ただ一人、先王の妻が愛していてくれるだけで心折れずにいることができた。


 助けた人から感謝されることもなく、影では脳筋と馬鹿にされ、誰にも知られることがないたった二人だけの戦い。


 それは茨の道。


 他国との関係も悪化する原因になったり、息子が本当の馬鹿に育ったり、色々な弊害がでることになる。

 魔王も過去に同じような道をたどっていく。


 変えた未来は一時的には幸せな未来へと繋がっていく。

 ただ大きな流れで見た時にその変えた未来が幸せな未来へと繋がるとは限らなかった。

 その結果、魔王は配下から裏切られ、勇者に売られる。


 魔王が言った、蘇るという有名なセリフは、勇者語録から引用したものを後世に伝える時に面白おかしくするために後から付け加えられたそうだ。


 国に残っている正式なものでは実は部下たちの身の安全を勇者に交渉したというのが残っている。

 自分一人の命で他の魔物たちの安全がはかれるならと、魔王は自分の命を勇者に捧げた。

 その後魔王のおかげで急速に亜人との平和が作られていく。

 ただ、この情報は徐々に魔王が悪者だったと人づてに伝わる中で書き換えられていく。


 そして、先王の時代。

 亜人との関係はまた微妙になっていた。

 小さな部族同士で衝突が増え、暗殺未遂などの表にはでない事件が増える。

 そこで先王は一人でも多く助けるためにと暗部を作った。


 暗部の主な役割は基本戦闘能力の向上と、影でスパイ活動による情報収集だった。

 暗殺や都合の悪い人間を消すようなものではなく主に専守防衛型の暗部として育てていく。

 これは先王が誰かを殺すことで解決をはかりたくないという信念があったからだ。


 キイロとの出会いはそんな暗部の中で活動中に出会った。

 この国で表では語られることのない亜人たちとの戦い。


 キイロの母親は亜人たちの反戦争のリーダーだった。

 狐族の王妃、キクス。

 最後まで戦争を回避しようと人と亜人との仲介をしていた。


 ただ、キイロの母親は一部の好戦的な亜人たちの手によって殺されてしまう。

 その時、先王に託されたのがキイロだった。

「亜人たちとの平和のために王都でこの子を育ててあげてください」

 それがキクスの最後の願いだった。


 これをきっかけに亜人たちとの戦いは一時休戦になっていく。


 人間の王が亜人を育てる。


 そこには今まで人間と亜人たちの間にあった壁を取り除いていく一つのきっかけになっていった。


 先王たちはキイロを自分たちの孫のように可愛がった。

 ただ、将来を見据え、力のない王では誰もついてこないと暗部にいれ常に訓練をさせた。

 それが将来この子の役に立つことを願いながら。


 キイロには戦闘の才能があった。

 ただ、王妃によって暗部でも危険な任務へは回されず、先王たちのまわりで世話係などととして働かせていた。


 そして、今回の事件へと繋がっていく。

 今回は西の国の王子のただの逆恨みが原因だった。


 先王に決闘を挑みボコボコにされ、アスリアには無視をされ大衆の前で恥じをかかされたからという理由で今回の襲撃を思い立った。


 最初は本人も少しだけ脅してやるつもりだったのだろう。

 それがことごとく計画を潰され、ひくにひけないところまでいってしまった。


 ただ、これも結局悪魔が戦争をさせるために仕組んだことだった。

 理由なんてなんでも良かった。

 悪魔はほんの少しの悪意を増幅させることができる。


 汚い言葉を使っている人間を悪魔は好む。

 そしてその汚い言葉がどんどん似合うような人生になっていくように成長させるのだ。

 汚い言葉を使えば使うほど、まわりに残っていくのは汚い言葉を使う人間が残っていく。

 そうなれば、行動に歯止めがきかなくなっていく。


 学園のダンジョンの情報をどうやって入手したのかというと、アスリアの執事バルサが王子たちに情報を流していた。

 ただ、それには理由があり家族を人質に取られていたからだった。

 そっちは今王妃が救い出しに行き、先ほど無事に解決したということだ。


 先王はそこまで話をするとゆっくりと深く息を吐き、

「結局ワシたちはできることをがむしゃらにやってきただけなんだよ。もちろんやり方にいい悪いはあっただろうけど、それでもこの国の人間を一人でも助けるためにそうしただけじゃからな」


 こうして俺たちの初めてのダンジョンアタックが終了した。


 余談だが、一角タイガーや王子たちはクラウドの回復魔法で回復していた。

 王子たちは本国に強制送還されそこで裁かれるそうだ。

 どのような裁きになるのかは俺たちには正直わからない。

 ただ、戦争になりかけたという事実がある以上かなり重い罰がくだされるだろう。


 一角タイガーは先王がペットとして飼いたいといいだしたので任せることにする。

 一角タイガーの魔力は額から伸びている角に集中しているため先王はそれを折り、俺に素材としてくれた。

 これが折れていれば無駄に魔物を呼ぶなどはできなくなるなるそうだ。


 そして俺たちはまた日常へと戻っていく。

 いろいろな危険に巻き込まれたが学生ができることには限界がある。

 ぜひともこれからは平和な学園生活を送りたいものだ。

これで第1章が終わりです。

みなさんからの色々なご指導ありがとうございました。

感想は時間を見て返信させて頂きます。

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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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