表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/75

甲冑をきた男達との戦い

 一角タイガーの首には『隷属の首輪』がつけられていた。

 この首輪はつけた魔物を強制的に従わせることができる。

 ただ、テイマーのように相手と絆を深めて戦うものではないため、魔物本来の実力を半分も発揮できない。


 魔物をこのまま操られたらまずい。

 一瞬で距離をつめ仮面の男を殴りとばす。


 仮面の男は派手にふっ飛ぶが、笛は手に持たれたままだ。

 あの笛をなんとかしなければ。


「なんてことをするんだ! 俺を殴りつけるなんて。この1発は必ず後悔させてやるからな。おいお前ら! ここまで手伝ってやったんだから早くこいつ等を殺せ」


 そこには銀色の甲冑を来た屈強な男3人と貴族風の服を着て腹の出ている男が1人いた。

 貴族風の男は気取った口調で話しかけてきた。


「お久しぶりです。アスリアさん」


「あなたは西国サラバリアの王子……!?」


「覚えて頂いて光栄です」


「こんなことをしたら、国際問題ですよ。今すぐ私たちを解放しなさい」

 アスリアと王子と言われた男は知り合いのようだが男はアスリアを見ながら薄ら笑いを浮かべている。


「解放? あなたが悪いんですよ。あなたが私を無視するから。ただあなたが私の言うことを聞くというなら残りの奴は助けてあげてもいいですよ」


「アスリアさん。いいから逃げろ! キイロ!2人を連れて行け!」


「今さら逃がすわけがないだろ」


 男は笑みを浮かべながら入口を土魔法で閉じる。

 その手前には魔物たちが行く手を阻むようにやってきた。

 王子の口元は常に笑っているが目に憎悪が宿りアスリアをずっと見つめている。


「マリア先生たちに連絡を」

 ここに入る前に持たされた魔道具『遠話』を使って連絡を試みる。


「アルス!ダメ繋がらない」

 マリアの手が小刻みに震え顔からは恐怖の表情が見える。

 このままじゃまずい。


「さぁアスリアさんどうしますか?そこの女性も震えているようだし、このまま行けばあなた達は全滅ですよ。あなたが大人しくこちらにくるなら他の人は助けてあげます」


「アルスくん……みんな、こんなことに巻き込んでごめんね」


 アスリアが1歩前に踏み出す。

 しかしアスリアが進むのを拒むように、手を握ったのはアルスだった。


「ダメだよ。まだ何もしていないのに諦めるなんてアスリアさんらしくない。大丈夫。ここには俺もキイロもいるから。魔物がいくらでてきても俺たちで守るから」


「アルスさん……」


「クラウド! アスリアさんとマリアを魔法障壁で守ってやってくれ。キイロはできるだけ二人を守りながら近づく魔物を排除。」


「ピギゥー」


「プハッハハ! カッコイイですね。でも、その威勢がいつまで続くか見ものですね。この人数を相手に一人で戦うなんて。あなたみたいな人を世間では『バカ』って言うんですよ。魔物たちよ殺せ!」


 先ほどの仮面の男が笛の音を聞いた途端魔物たちが動き出す。

 氷魔法で魔物たちを牽制しつつ攻撃していくが、ここの部屋の狭さと相手の数に徐々に追い込まれていく。


 1匹1匹の強さはそうでもないのに、せめてもう少し手数がいれば。


「アルスさん背中は任せてください」

 気が付くとアスリアとキイロが俺の背中を守るように魔物へと攻撃していた。


「アスリアさん相手はあなたが目的なんですよ」


「わかっています。でも、私守られるだけの女性だなんて嫌なんです。それに私も私の従魔もそんなに弱くありませんから。行くわよヒメ!」


「ガルッ」


 アスリアのクイーンウルフは一声鳴くとアスリアを守るようにアスリアへ飛びかかってくる魔物を牙で切り裂いていく。さすが上位魔獣である。普通の魔物相手ならば子供とは言えまだ遅れをとることはなさそうだ。


「アルス私だって戦う。強い魔物は無理でも弱い魔物くらいなら私もペガも戦える」

 クラウドに守られながらマリアが叫ぶ。


「わかった。でもみんな無理はするなよ。クラウドそのままみんなを守りながら戦ってくれ。俺は一角タイガーを倒しにいく」


 先ほどから、俺が魔物を倒しても倒しても一角タイガーが新しい魔物を召喚している。

 いや、どちらかというと召喚させられていると言った方が正しい。

 不気味な兎の仮面をかぶった男が笛を吹くたびに魔物の数が増えていく。


「やめろ!」

 仮面の男に切りかかるも男はひらりとかわし距離をとる。


「何度もやられるわけがないだろ。それよりもお前ら仕事をしろ。その男をさっさと倒せ」


「わかりましたよ。俺たちもいつまでも遊んでいられるほど暇じゃないんでね」


「あぁさっさと終わりにしよう」


 王子の側にいた男3人が剣を抜きこちらへゆっくり間合いをつめてくる。

 こんなところへ派遣されるだけあって、なかなかの使い手だ。


 命を奪わなければいけないと頭の中でわかっていても人間相手にはどうしても抵抗がある。

 まずは『睡眠魔法』を放ち様子を見る。


 3人のうち1人の男が一瞬眠りそうになるが、自分の手にナイフを突き立てレジストする。

「なかなか面白い魔法使うじゃねぇか。ただそう簡単に俺たちもやられるわけにはいかないんでね。行くぞ!」


 一人が切りかかってくる。

 くっ……剣速が早いっ!

 避けられないことはない。それでも3人相手で殺さずにというのはかなりきつい。

 アスリアの方を見るとまだ大丈夫だが、従魔の方は少しずつ体力が削られているのか最初の頃の精彩にかける。このままでは長くはもたない。


「この世界では相手が命を奪うつもりならば、こちらも命を奪う覚悟を持たないといけない」


 過去に教わって教えが頭の中を駆け巡る。

 ただ、殺したくないから人よりも力をつけることにした。


 相手を殺す。

 魔物を殺すように簡単に割り切れるものではなかった。


 ただ、殺すつもりでなければ勝てないかも知れない。

 それに時間をかければかけるほど状況は悪化していく。


 悩めば悩むほどこちらの攻撃に迷いがでる。

 何とか拘束して戦わずに仮面の男のところへ。


「鬼人の拘束」

 男達の元に魔法陣が浮かびあがり彼らを拘束する。


「マジックキャンセル」

 仮面の男がそう唱えた途端、部屋中の魔法がキャンセルされる。


「拘束して終わりなんてつまらないことさせませんよ」


 早くなんとかしなければ。

 頭の中で慌てれば慌てるほど正しい判断ができなくなっていく。

 ダメだ。アスリアを守らなければいけない。マリアも。


 冷静になれ。冷静に。

 そう思えば思うほど甲冑を着た男たちの剣が少しずつ当たるようになっていく。

 かすり傷だが、痛みがある度に落ち着こうという考えとは裏腹に焦りがでる。


 こんなはずじゃない。俺にはもっとできるはずだ。

 こんなところで負けるわけにはいかない。


 いっそのことこいつらを殺してしまうか。

 ……そうだ。殺してしまおう。

 悩む必要はない。

 こいつ等全員皆殺しに。


 集中力が高まりまわりの景色が段々とスローになっていく。

 殺して楽にしてしまえばいい。


「キャン!」

 アスリアの従魔が魔物から殴られ壁にぶつかる。

 あっダメだ。俺が余計なことで悩んでいたから。


「ペガ! 逃げて!」

 マリアの従魔が飛んで回避しようとしたところを足を持たれ、地面に叩き付けられる。


 貴族風の男はニタニタと笑いながら、

「どんな気分だい?今まで何でもできると思っていたんだろ?」


「うるさい! 俺が……みんなを……」


「キャー」


 マリアが魔物に囲まれて見えなくなる。

 えっ……嘘だろ?


「マリア!」


 誰か嘘だって言ってくれ。

 クラウドはマリアを守りながら戦っていた。だが、少しずつ相手の数に押され離されてしまった。

 キイロはアスリアを守りながら戦っている。


 嘘だ、嘘だ、嘘だ。


「雑魚が調子にのってアスリアのまわりをうろつくからこうなるんだよ」


 マリアを助けに行けなきゃいけないのに身体が上手く動かない。

 なんて俺は無力なんだ。


 その時、

「マリア様のことはお任せください」

 そう声が聞こえてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ