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キイロの試験

 アルスがリドルド王の両親と戦った2日後、晴れた日の朝。

 アルフグレイド学校の校門前に立つキイロとアスリアの姿があった。


「お嬢様色々ありがとうございました」


「いいのよ。キイロ試験頑張ってね」


 メルナ王妃の一声でキイロの書類は準備されすぐに試験の申し込みがされた。

 アルフグレイド学校の方でもメルナ王妃からの要請とあってか、早急に対応してくれたおかげでこのスピードの編入試験となった。試験結果も本日受験終了後に発表となる。


「お嬢様護衛として一緒にいられるようにしっかり試験を受けてきます」


 キイロは気合十分といった感じだ。


「フフフ。本当はアルスさんと一緒にいたいんでしょ?」


 そういたずらっぽく笑いながら言うアスリアにキイロもタジタジになっている。


「あっいえ、そんなことは……ないですよ? 一族の習慣はもちろん大切ですけど、でも今は今できることをもっと楽しもうと思っているんです」


 そう言いながらもキイロのシッポはブンブン左右に動き耳はピコピコ動いている。

 言葉とは裏腹にシッポと耳はいつも正直だ。


「あっキイロさん今日試験ですか?」


「アルスさんおはようございます。そうなんです!私も一緒に通えるように頑張ります! それにしてもアルスさん学校来るの早いんですね」


 学校の授業が始まるまでにはまだ1時間以上もある。

 アルスはところどころに変な白いシミをつけた変なコートを着てアスリアたちの方へ近寄ってきた。


「ホワイトプラントの世話と掃除をね。これから使用する(授業で使う)機会が多いからね」


「えっ……アルスさん。ホワイトプラントってこないだ私に使ったアレですよね?いつもあんなの(女性の服を溶かして)してるんですか?」


「最近始めたばかりかな。アスリアとも(こないだから掃除を一緒に)」


「お嬢様もですか!?」

 キイロはビックリしてフリーズしている。

 なんてことだ。お嬢様までアルスさんの……!?


(私のお嫁さんとかの話よりも、まずは卒業までお嬢様をお守りしなくては)

 キイロの勘違いの始まりだった。


 そこへマリアがやってきた。今日も外見だけは美しい。

「おはようアルス、アスリアさん」


「おはようマリア」


「アルスなんの話をしてたの?あれこちらの人は?」

 朝からにこやかな笑顔でお嬢様とはまた違った可愛い子がアルスの横にやってきた。

 同性から見てもすごく可愛い。

 なんていうか嫌味じゃない可愛さだ。

 きっと男女共に人気があるだろう。


「初めまして、本日ここの転入試験を受けるキイロと言います。受かれば同級生になります。よろしくお願いします」


「初めましてアルスの幼馴染のマリアって言います」


 なんだこの天使の笑顔は同性なのにちょっとドキッとしてしまう。


「今ホワイトプラントの話をしてたんだ」

 アルスの発言を聞いてマリアの顔が崩れる。

 マリアは嫌悪感たっぷりに。


「アルス? 朝からセクハラ?また私にあんなこと(掃除)させたいの?」


「えっマリア一緒にやらないの?(掃除)」


「好きじゃないけど、アルスがそこまで言うならやってあげてもいいけど(掃除)」

 マリアが少し顔を赤めながら言う。


(もしかして朝からアルスさんたちは……これ以上は精神衛生上よくない。考えるのをやめよう)

 この誤解はキイロが学校に通って再度ホワイトプラントの液まみれになるまで続いた。


「あっアルスさんこれ父から剣を渡してくれるように頼まれました。あとこちらが手紙です」


 そこにはリドルド王からアルスへのプレゼントと手紙があった。

 手紙の内容は、リドルド王から簡単なお礼とそれと剣についてかかれていた。

 この剣の名前は


「妖精の剣」


 この剣はダンジョンから発見された剣で、数百年前に一度この剣を使っていた冒険者がこの剣には妖精が宿っていると言っていたそうだ。


 ただ、その後妖精をみた人は誰もいない。


 ただこの剣の刃こぼれは自動で回復する。

 理由はわかっていないが誰も見ていない時気がつくと直ってしまう。


 ただ、切れ味は普通の鉄の剣よりはいいくらいらしい。

 昔は石でも切れたという話が残っているが伝説は大きく語られることがあるのでそんなものだろう。


 ただ、リドルド王はこの妖精の剣には本当に妖精がいると信じているようで最後に、


「ぜひ妖精を見つけたらば一緒にお茶をしよう。妖精は甘いお菓子が好きらしいから沢山用意して待っている」


 そう書かれていた。


 アルスはアスリアから剣を受け取るとものすごい突風が吹き抜ける。

 その時、一瞬こぶし大の羽の生えた妖精の姿が見えた。

 その妖精はこちらを見て笑顔で手を振っていた。


「えっ……」


 だが次の瞬間にはもう見えなくなっていた。

 目をこすってみたがそこには何もいなかった。

 剣もごく普通の剣に見える。


「アスリアありがとう。王様にお礼を伝えておいてください」


「いいのよ。アルスさんにはご迷惑おかけしてしまいましたから」


「後で、一緒にどこかで試し切りでもしてみましょ」


「それじゃあみなさん私は編入試験の方を受けに行ってきます」

 そういうとキイロは笑顔であいさつしてくる。


「頑張ってね」

「落ちついて受ければ大丈夫だから」

「編入試験の合格率は高いから大丈夫だよ」


「ありがとうございます。行ってきます」


 そういうとキイロは校舎の中に入っていった。




 編入試験自体はスムーズに進んだ。


 まず最初は魔法の試験だったが、キイロはどれも卒なくこなすため先生たちも驚いて

「さすが王妃様が推薦するだけはある」

「亜人なのにすごいな」


 筆記試験はもちろんどれも完璧にこなされ、面接試験はあってないようなものだった。

 試験はもちろん合格だった。


「キイロさん合格おめでとうございます。それではこの卵の中から一つ選んでください」


 キイロは白の卵の中から選ぶ。

 その中でも何か特別な感じのする卵を選ぶ。


「本来ならば3日間の休みとなるんですが、今回は編入のため明日から学校にこれそうですか?」


「大丈夫です」


「それでは、キイロさんは明日からEクラスへ編入となります。ただ明日1年生はさっそくダンジョンへ潜りますが……王女様のグループに?」


「あっえっ聞いてみます」


 それからその日は簡単に学校の説明を受けアルスたちにダンジョンパーティーに入れてもらうことになった。

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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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