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とある小屋の中で

 王都の中にある貧民街の奥、そこには長年使われていない忘れ去られた墓地があった。

 今はくる人もおらずひっそりとしている。

 その敷地の一角には墓地を管理していた小さな小屋があった。

 昔はそれなりに沢山の人がきていたのか古びてなお良き時代の頃の面影があった。

 

 その小屋の中には男達が5人集まっていた。

 

 1人の男が椅子に座り、残りの者がその男に頭を下げている。

 1人座った男は整った顔立ちではあるがその顔にはどこか疲れが見える。

 残りの4人は男と目をあわせないまま男からの質問に答えていた。


「おいお前、ゴブリンたちをけしかけて街を襲わせる計画はどうなった?」


「はい。計画までは上手くいきゴブリンたちを街の近くまで集めることまで成功しました」


「今街の中を歩いてきたがじゃあなんで、街が滅びてない?」


「予定は未定といいますか、ゴブリンが何者かに全員倒されたといいますか」


「は?ふざけているのか?なんだ予定は未定って。あいつらを誘導するのにこちらがどれだけ犠牲を払ったと思っているのだ。倒されましたですむ話ではないだろ! 王女の方はどうだ?そっちはまさか無事にさらったのだろ?」


「はい。王女はさらいました」


「クククいいな。それで王女を一生嫁に行けない身体にしてやったのか?どうだ詳しく話せ」


「はい。連れ去ったのは連れ去ったんですが、襲う前に取り返されました」


「お前らバカなのか? どうやったら連れ去った女をすぐに取り返されるっていうんだよ」


「それがアルフグレド学校の生徒に邪魔されまして」


「そんなにたくさん学生が導入されたのか?」


「いえ、1人です」


「そうか」

 しばしの沈黙が流れる。


「おっお待ちください。次こそは、次の作戦こそ今回最大のメインプロジェクトです。」


「なんだ話してみろ」


「はい。実は王女の通っている学園には……そこで今度こそ決着をつけます」


「そんなのは知っている。それで具体的には?」


「そこになんとか忍び込んで王女を抹殺します」


「そのなんとか忍び込むっていうのはなんだ。しかもそのフンワリとした抹殺しますって」


「はい。なんとかです。きっと行って見ればわかるかと」


「まだ行ってないのか」


「あっえっと行ってきましたが、入口の警備員に止められまして」


「それ入れてないよな?」


「いえなんとかします。努力は裏切りませんから」


「違うんだよ。結果だよ結果。途中経過じゃないでしょ。結果をださなきゃ経過なんてどうでもいいの」


「そうです。結果です。もちろん大丈夫です。1回目は失敗、2回目は途中まで成功、3回目はほら成功しかありません」


「いまほらっていったか?」


「いえ、誰がご主人様に向かってそんなことを」


「いや、やっぱいい私がなんとかする。魔王復活の方はどうだ」


「はい。こっちはばっちり噂を流せてます」


「なんだその噂というのは?」


「えっ魔王復活の噂を流して人々を混乱させるわけじゃないんですか」


「誰がそんなことを言った。魔王を復活させるんだよ」


「あの魔王って復活するんですか?」


「そこをなんとかするのがお前らの仕事だろ?」


「そうですよね。そういうと思いまして奥の手を準備してました。」


「そうだよ。そういうのを先に見せるんだよ。それでどうやって魔王を復活させるんだ」


「これです。魔王復活キット! しかも特売で1つなんと100ミノモ」


「バカにしてるのか?そんなもの効果あるわけないだろ」


「ちょっと待ってください。もちろんです。私もバカではありません。任せてください。1枚じゃ足りないと思ったのであるだけ買ってきました。全部で10000ミノモ」


「えっと、ということは100枚ってことか?」


「さすが計算が早い」


「いやそれ程でもないがな」


「いやさすが、天才! よ!未来の国王!」


「って違うだろ。そうじゃないんだよ! こんなの100枚もあってどうするんだよ。しかもこれ良く読んでみろ!『なお、この召喚キットは効用、効果を保証するものではありません。人によって感じ方が違います』って書いてあるだろ」


「なるほど。いろいろな魔王を召喚できるってことですね」


「わぉ! ポジティブ! どうやったらそんな風に考えられるの? じゃあそこまで言うなら1枚使って召喚してみろ」


「いいんですか? 私やるときはやっちゃいますよ? この国滅ぼしちゃいますからね」


「いいから早くやれよ」


「あれ?ご主人これ魔王じゃなくて魔物召喚キットでした」


「あん?もういいから魔物でも干物でもいいから召喚してみろ」


「わかりました!あれ……召喚にこれだけじゃ足らないみたいです」


「これって経費になりますか?」


「ならないよ。返してきなさい」


「それが翌日行ったらその店なくなってまして」


「それ子供がひっかかるようなやつ。もういい俺がなんとかする」


「ありがとうございます。経費扱いにしてくれるだなんて」


「そっちじゃない!オイ先日捕まえたアレを本国から至急輸送してこい」


「いやあれは国家間での移動が禁止されていますし。何より凶暴で手に負えないんじゃ」


「いいんだよ。どうせ暴れさせるだけなんだから。俺をバカにしたことを後悔させてやる」


「あの…」

 その男はフードを深くかぶり顔がわからないようにマスクまでしている。


「なんだじじい」


「私の家族は返してもらえるんですか」


「あぁだからあの時も助けてやっただろ。大丈夫だよ。俺は約束は守る男だ。これが終わればお前の家族は解放してやる。ただし、裏切ったらばお前がつけているポイズンブレスレットがお前の命を奪い、家族は皆殺しだ。それよりもさっきの日にちを調べて至急俺たちに連絡しろ」


「はい。わかりました……」


 その小屋を正反対の位置から見つめる2つの影。

 お互いに相手のことを認識はしているが今は接触の時期ではないのかそのまま闇の中に消えていった。

 

 大きな時代の流れの中でそれぞれが思惑を抱え進んで行く。

 まもなく来る時代の転換期。

 分水嶺はもうすぐ……

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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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