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本日採れたて新鮮!産地直送ホワイトプラント液

 おじいさんの『影』がダンスを踊るかのように揺らめきだす。


 感じる威圧感が数段階パワーアップする。

 ちょっと待て、これだけの魔力を放ったら王都が破壊されるレベルだぞ。


「クラウド先にこっちから行くぞ」


 相手のスピードを超えるためにギアを2段階あげる。

 クラウドはキイロを警戒しながら氷魔法で2人が連携しようとするのを上手く遮断してくれる。


「こないだは炎を吐いていたのに今日は氷魔法とはずいぶん優秀な従魔を手に入れたんですね。ただそれも今日で終わってしまうと思うと悲しい限りです。でも、その時は私がそのドラゴンをもらってあげますから安心してくださいね」


 キイロはしゃべりながらクラウドの攻撃を余裕で避けていく。

 ただ、クラウドはキイロとの戦いの中で少しずつ学んでいる。

 直撃こそしていないが、攻撃のずらし方やタイミングの取り方が明らかに最初と変わってきているのだ。


 まずはキイロの動きを封じよう。

 俺はマジックボックスから本日、朝どれの新鮮産地直送ホワイトプラントの液を取り出し、瓶ごと投げつけてやる。

 瓶ははるかキイロの頭上を通り過ぎるコースだ。


「どこに投げているんですか?そんな無駄なことするなら戦いに集中した方がいいですよ」


 キイロの上空に瓶が行った時、クラウドが風魔法で瓶を切りつける。

 キイロの全身に白い液がかかる。

 さっきから何かと上から目線で言ってきているのにちょっとムカついたのでただの意趣返しだ。


「くっ……なんですかこの液体は!?」


 キイロがつけていた仮面がとれ、そこから頭の上に黄色いピンと立った2つの可愛い耳が見える。

 この辺りでは珍しい狐の亜人だ。


 白い液体のかかった服が徐々に溶けていくと、

「ふにゃ~」

 とか予想外の声をだしている。


 こうなれば後はクラウドだけで大丈夫だろう。

 こんなところで負けるわけにはいかない。


 キイロへの対処をクラウドに任せ俺はおじいさんに集中する。

 魔法での攻撃は埒があかない。


 どんなに相手の動きを予想して攻撃してもその上をいく動きで俺を翻弄してくる。

「おじいさんの癖にどれだけ早いんだよ」

「人は見た目で判断しちゃいけないって習わなかったか」


 段々とスピードが離されていく。

 いや、違う俺の魔力がなくなってきているのだ。


「どれ、悪いが次はアスリアのところに行かなくちゃ行けないんでの。このあたりで終わりにさせてくれんかの」

 もの静かな言い方とは裏腹におじいさんの手には魔力のこもった黒い球が浮かんでいる。

 直観的にわかる。あれはまずい。

 今まであんなまがまがしい魔力を放つものを見たことがない。


「暗黒球」


 おじいさんが呟くと同時に黒い球が放たれる。


「くそっ!」

 ここで俺が負けたらば、アスリアまで死ぬ。

 それどころか避けたらば間違いなく王都に壊滅的な被害がでる。


 残りの魔力が少ない状態で身体に鞭を打ち、自分の限界まで力を使って魔法障壁をはる。

 クラウドも一緒になってやってくれるが、ジリジリと削られていく。

 何かないのか。


 頭の中で最後の1秒まで考える。色々な発想が高速回転で処理されていく。

 どうすれば勝てるのか。

 激しい頭痛と鼻から出血してくるがここで諦めたらば終わりだ。


 だが、無情にも少しずつ魔法障壁は削られていく。

 どれだけ俺が力をこめようとこの圧倒的な差は埋まらずどんどん離されていく。

 1秒が無限のように引き伸ばされる中ででてしまった結論。

 このままでは誰も救えない。


 発想を変えるしか残された方法はなかった。

 すべてを手に入れようなんて甘い考えではダメだ。

 いるものといらないものをきちんとわけるしかない。


 今俺が一番大切にしているもの、クラウド、コボルト、アスリア、マリア、レノバ

 えっレノバも?まぁいい。そして家族に王都の街が大好きだ。

 こうなってしまったらば、できることは一つ。


 俺の生き残る道はないが、なんとかクラウドと王都は守れる方法がある。

 魔力がないならば作りだせばいい。

 俺の残りの生命を削って魔力に変えてやる。

 その変わり、高齢者だとかなんだとか甘いことを言うのはもうなしだ。


 攻撃を防ぎながら同時多発的に魔力障壁をはっていく。

 他に魔力を使った分削られるスピードがあがる。

 動けないコボルトたち、王都、そしてクラウドのまわりに魔法障壁をはり肩から引き離す。


「ピギゥー!ピギゥー!ピギゥー!」


 クラウドはこれがどういう意味なのかわかっているようだ。

 そんな悲しい顔で見ないでくれよ。

 別れが辛くなるじゃないか。


 ごめんなクラウド。お前ならばまたいいご主人に巡り合うことができるよ。

「ただしあんたらは別だ全員地獄まで付き合ってもらうからな」


 体内に流れている生命エネルギーと魔力のスイッチを切り替える。

 全生命エネルギーを解放し魔力へと流し込む。

 これで……


 その瞬間目の前に青い剣が振り下ろされ、衝撃と共におじいさんの放った黒い球が消失する。

 それと同時に俺の魔力が体内へと戻っていく。

 誰だ?もう立っている気力もない。

 俺は膝から崩れ落ちそうになるところを誰かに支えられる。

 いったい何がどうしたというのだろうか。

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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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