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閑話 Sクラスのとある女子生徒の告白

 Sクラスのとある女子生徒の告白


 うちのクラスには実はこの国の第3王女様がいる。

 可憐すぎて誰も近づけず遠目に見守っているだけだけど。


 あまりに美しくてみんな話しかけたいけど、私たちのような人間が話しかけたらきっと迷惑になる。そう思ったから私たちは1つ王女様への決まりを作ったの。


「王女様には近づくことなかれ。」


 だから王女様がお一人で朝訓練される時には近づかないし、基本的には私たちは邪魔しない。ただ、一部の害虫が空気を読まずに王女様の朝練の邪魔をしていたから、王女様の下僕が注意しに言ったけどダメだったみたいね。


 まぁ庶民が王女様のお怒りを買ってどうなるかなんて知ったことじゃないから私は放っておくけど。


 私たちのような、たかが貴族風情で王女様に気軽に話かけようものなら、一族取潰しになってもおかしくはない。それだけの権力をお持ちになっているっていう噂よ。なんでも、小さい頃に気に入らない貴族を魔法でボコボコにしたって話もあるから、あながち間違いではないと思うわ。


 ただ、見ているだけなら、もうなんていうか神々しいの。

 私がもし男の子だったら間違いなく告白しているわね。


 まぁうちのクラス男子にはその根性はなさそうだけど。

 いつも遠巻きに

「アスリア様本日も麗しい」

 とか言っているけど正直気持ち悪いだけ。


 でもそんなアスリア様に大変なことが起こったの。

 朝のホームルーム開始直前に来たアスリア様からなんて言ったらばいいの。

 ちょっと表現が難しいんだけど、どぶ川の腐ったゴブリンのような臭いが髪の毛からしてきたの。

 あのいつもきれいで可愛いくて、清楚って言葉を辞書で調べたら学校中の辞書にアスリア様って書かれている王女様がよ!


 しかもこの異変はそれだけじゃ収まらなかったの。

 Bクラスにもちょっと可愛いって噂の女の子がいる。

 身長が小さくて性格も大人しい。

 それに肌も白いから雪の妖精なんて男子は言っていたけど、あれは裏では豹変するタイプね。

 男は本当にバカだから女の本性を見破れないのよねー。

 本当にバカばっか。

 まぁ可愛さで言うなら私よりもちょっと下くらいの子なんだけど。


 だけど、同じ日にこの子からも同じどぶ川の腐ったゴブリンの匂いがするの。

 この学校でも美しいと言われる2人から同じ匂いがするってことは……

 その後、女子の各派閥の代表たちが集まって会議が行われたわ。


 本当はあんな奴らと会議なんて納得いかなかったんだけど、仕方がない。

 アスリア様が絡んでは喧嘩をしているわけにはいかないわ。


 あの2人はよく一緒にご飯を食べているとか、一人の男を取り合っているライバルとか色々な噂がささやかれている。だけどどれも確実なものはなかったわ。


 でも、同じ日に同じ匂いをさせてきたってことは、私たちの中では答えは一つしかなかった。


「「「「「私たちの鼻がおかしい」」」」」


 きっとあのドブゴブリンの匂いは国外からの輸入品じゃないかってこと。

 特に今西側から商品が安く流れてきているって話もあるし。


 えっただ単に王女様が臭いだけじゃないかって?

 あんた馬鹿ね。そんなことあるわけないでしょ。

 いつもいい匂いをさせている王女様が臭い匂いで学校にくるなんて発想がアホらしいわよ。


 仮に王女様が臭かったとしても誰が臭いなんて言えるの?

 私達は王女様につき従うだけ。

 王女様が好んでその匂いをつけているなら私たちがつけない理由はないわ。


 だから、王女様に気に入ってもらおうと探したのがコレ。


「ゴブリンの体臭」


 王女様の髪の匂いにはまだ負けるけど、これも十分臭いわ。

 あなた知ってる?

 臭い匂いも薄めればバラの香りになるのよ。


 きっとこのゴブリンの体臭も薄めればフローラルな香りになるに決まっているわ。

 あの日王女様も分量を間違えただけ。


 そして女子の派閥会議で決定が下された。

 明日からは王女様にならってみんなでこのゴブリンの体臭をつけていくこと。

 王女様が臭いなんてことはありえないの。

 それはあなたの鼻がおかしいだけよ。


 わかった? 


 ★


 翌日、アルフグレド学校では男子生徒から女子が臭いとクレームが入り香水などの使用が一切禁止された。アスリアとマリアの2人は学校の女子たちから異臭がすることに違和感を覚えたが、前日に自分たちも臭かったため何も言えなかった。

 一部の男子と女子ではこの匂いをめぐり、風評被害から王女様を守れと戦う聖戦が行われていたがそれが表舞台で語られることはなかった。


 のちにその聖戦に参加した女子生徒が言っていた。

「私たちは王女様の為に戦っただけ。別に見返りなんていらないの。いずれはあの匂いを王女様が普通に使えるように普及させていくだけよ」

 こうしてこの国では間違った方向へ勝手に進んでいく人が増えていく。

 この街は暴走と勘違いのはざまにある。


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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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