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きれいな王様とお妃さまに会いました。でも王様はお妃さまの右ストレートによって…

「症状としては魔力欠乏ですね。マジックポーション飲んでしばらくゆっくりすれば治りますよ。ただ魔力コントロールを邪魔する呪術がかけられてたので2〜3日は魔法を使わない方がいいでしょう。」

 そう言っているのは恰幅のいい白衣をきた初老の男性だった。胸には王宮お抱えの医師であることがわかるバッチがつけられている。

 アスリアの家で何者かに襲われ不覚にも意識をなくし倒れてしまった。

 魔力切れを起こすなんて最近ではまったくなかったのに。


「アルスさん大丈夫ですか?」

「あぁ心配かけたな。アスリアは大丈夫か?」

「はい。私は大丈夫です。でも……」


 コボルトたちが全員大泣きしながらこっちを見ている。

「マスター俺たちに死んじゃダメって言ったのに。マスターが先に死んじゃダメです」

「マスター僕たちをおいて先にいかないで」

「グスン……絶対にダメです」

「マスターがいないとおやつもらえなくなります」

「わぉーん」

「ピギゥー」

 コボルトたちは俺のまわりを囲んでいる。

 俺がこいつらの親代わりみたいなものだからな。

 なんだかものすごく嬉しいが、お菓子欲しさに俺についてきてると今言われるとちょっと複雑な気分になる。

 それにしても、お風呂にいれてブラッシングしたらばものすごく手触りがいい。高級毛布のようだ。

 これがモフモフの魔力か。一人、一人をなでてやると涙を流しているのに嬉しそうな笑顔になる。

 俺自身も気を付けないとダメだな。

 涙を流させるような男になっちゃダメだ。


 クラウドが俺の頬に顔をすりよせ心配そうにこっちを見てくる。

「悪かったな心配かけた。もう大丈夫だ」


「アルスさんこの度は申し訳ありません。城の中でこのようなことになってしまって」

「いや大丈夫。でも、一体何が目的だったんだ」 

「それがよくわからないんです。警備にあたってた者たちが言うにはいつのまにか城の中に侵入していて、私たちを襲ったあとはすぐにどこかに消えてしまったそうです。今兵士が追ってはいますが、今のところ何も手がかりはないようです」


 王の住む城なのに大丈夫なのか。警備が甘すぎる。

 これならば王の暗殺でさえ簡単にできてしまいそうだ。

 正直こんな無駄なことに命をかける意味がわからない。

 それに俺に刺さった矢は毒かと思ったものは魔力を乱すだけの呪術?なぜだ?こんな嫌がらせをするためにわざわざリスクをおかしてまで王宮に忍び込むメリットがあるのだろうか。犯人はいったい何がしたかったんだ?何か王宮にはいらなければいけない理由があったのだろうか。それとも……


「アスリアそろそろ私たちを紹介してくれないかね?」

 そう言って声をかけてきたのはアスリアによく似た美男美女の2人だった。今まで遠目でしか見たことがなかったがこの2人は。

「ごめんなさい。お父様、お母様」

「こちらが何度も助けて頂いたアルスさんです。同じ学校の同級生でいつも助けてもらっています。アルスさんこっちが私の父のリドルドと母のメルナです」


「自己紹介が遅れまして……」

 そう言って俺がベットから立とうとすると、

「アルス君怪我してるんだからしばらく横になってなさい。君のことは娘からよく聞いているから大丈夫だよ。いつも娘を助けてくれてありがとう」

 昔遠目に見たリドルド王はまさに王の中の王といった感じの威厳があり迫力がある印象だった。ただ、今の王は娘を心配する父親の顔になっている。リドルド王は俺の手をしっかりと握り声をかけてくれた。


「君がいなかったら娘は本当に危ないとこだった。今後は王宮の警備を強化して娘には護衛の数を増やすつもりだ。本当にありがとう」

「アルスさん本当にありがとうございます。この子はいつも私たちに心配ばかりかけるので困ってしまうんですよ。7歳の時も……」

「ちょっとお母様本当にやめてください!恥ずかしいです」

 アスリアが顔を赤くしながらメルナを必死にとめている。

 とても微笑ましい。


「あらいいじゃない。学校でいつもお弁当デートしているのはアルスさんでしょ?それにダンジョンも一緒にもぐるんだし。あなたのこと良く知ってもらうチャンスじゃない」


 その言葉に反応したのはリドルド王だった。

「なに!?お弁当デートだと。私なんて妻と出会うまでろくに女子と話すこともできなくて、ボッチで悲しい学生生活を送ったのに!ずるいぞアルス君!君だけが女性にモテるなんて!少しイケメンだからと言って娘をそう簡単にやるわけにはいかん。少しは私を見習って学園ボッチを経験するがいい」


 リドルド王をアスリアとメルナがジト目で見ている。

 リドルドは二人の視線にまったく気づかずさらに続けていく。


「エルガドフは10代、20代で恋愛しない奴は30代でまともに恋愛できないとか偉そうに言っていたが私のようにコネと権力さえあれば恋愛なんてしてこなくてもメルナのように美人で気立てのいい女性を妻にすることだってできるんだ。だからあんな奴の学校にいれるのは反対だったんだ。よしそれなら俺も対抗してリア充ばくは……」


 リドルド王の横に立っていたメルナの手が一瞬王の顎にヒットする。

 高速の右ストレート。 

 王は一瞬よろけるも、周りにいた護衛たちがすぐに支える。

 かっ……完全に慣れている動きだ。

 コボルトたちには何が起こったのかわからないようで急に静かになった王様に、


「王様大丈夫ですか?」


 と心配そうに声をかけている。

 きっと君たちも大人になればわかるよ。

 これが大人の事情ってやつだ。


「アルスさんごめんなさいね。もう少しゆっくりお話していたかったんだけど、どうやらリドルド王ちょっと具合が悪いみたいなの。これ以上話して王様の馬鹿がばれると国の根幹にかかわるので、今日はこれで失礼しますね。どうぞゆっくりしていってください。それとアスリアお詫びの品をアルスさんたちにお渡ししてあげて。それでは」

 メルナたちが部屋からでていく。王様は屈強な兵士に両脇を抱えられている。完全に自分の足では歩いていないように見えるが、きっと気のせいだ。今王妃様、王様のこと馬鹿って言っていたような気がするがそれもきっと気のせいだろう。世の中には知らなかった方がいいこともある。


 とりあえずわかったことはアスリアの右ストレートは母譲りのようだ。


「アルス君うちの両親がごめんなさい」

 アスリアはどこか遠いところを見つめている。

 うん。友達に両親紹介する時ってちょっと恥ずかしいよね。 

 その気持ちわかるよ。


 ただ、俺の中で娘を心配する王からリア充を爆発させようとする王へと認識が変わった。

 ここへ来るまでの緊張を返して欲しい。


 アスリアは何もなかったかのように、

「アルス君それで、こないだのお礼とお詫びを兼ねてお渡ししたいものがあるの。コボルトくんたちは武器と装備一式、アルスくんにはコレを」

 そういって出されたのは茶色い皮でできた肩がけの鞄だった。

 見た目はどこにでもありそうだが。


「これマジックボックスって言って中に色々な物がはいる鞄なの。これがあればこれからダンジョン潜るときも楽になるかなって思って」


 マジックボックス!

 今まで噂では聞いたことがあった。

 でも見るのは初めてだった。

 商人や長距離を移動する冒険者はのどから手が出るほど欲しいと言われる超貴重アイテムだ。

 世の中にでまわることも少ないためいったい、いくらするのかも想像がつかない。


「アスリアさん、さすがにこんな高価なもの頂けません」

「大丈夫ですよ。沢山あるわけではありませんがまだありますので。それに、ダンジョンに入る時にはアルスさんにいっぱい荷物もってもらいますので」

 アスリアがちょっといたずらっぽく笑う。

 そう言われてしまうと断ることはできない。


「わかった。ありがとう。大切に使わせてもらいます」

 その後はクラウドは奇跡の指輪というキレイな赤い宝石のついた指輪をもらった。効果としては鑑定の結果としては特にないらしい。ただ、これを持って来た魔術師が言うには本人が心の底から願った願いを一度だけ叶えてくれるらしい。


 アスリアが

「クラウドちゃんは男の子っぽい名前を誰かさんにつけられちゃったけど、女の子だもんね。少しくらいおしゃれしないと」

「ピギゥーピギゥー」

 クラウドがそうだ!そうだ!と言っているように聞こえる


「俺が悪かったよ。」

「ピギゥー」

 クラウドが俺の頬っぺたを執拗に叩いてくる。俺の負け。反省します。

 クラウドの指にはつけられないので首輪がわりに首につけてもらった。重さも軽く邪魔にならないようでクラウドも喜んでいた。


 王宮で食事を頂き、帰りにコボルトたちは武器と装備一式を受け取って解散となった。

 そういえばレノバが来てなかったが用事でもできてしまったのだろうか。

 最近なぜかトラブルメーカーのように問題が立て続けに起きている。

 このまま何も起こらなければいいが……

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小説書籍化しています。 ぜひ手に取ってもらえればと思います。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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